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コラム2022

【視点】12月1日号 「漬物=塩分」を払拭 健康性周知し消費拡大へ

『塩分早わかり 第5版』(女子栄養大学出版部)
 近年、製造技術の進化やコールドチェーンの構築といった漬物メーカーの絶え間ない努力により着実に漬物の低塩化が進んでいる。
 だが一方で、未だ「漬物=塩分」のイメージを払拭しきれていないのが現実だ。医療機関や介護施設などでは、塩分制限を理由に漬物がメニューから外されるケースも多い。
 管理栄養士がメニューを構築する上で基準となるのが「日本食品標準成分表」だ。日常的な食品の可食部100グラム当たりの食品成分の含量などが示されており、漬物では、約50種類の漬物の成分が使用される野菜ごとに記載されている。5年に一度改訂が行われ、2020年には「日本食品標準成分表(八訂)」が発表された。
 だが、「日本食品標準成分表」に記載されているのは、可食部100グラム当たりの食塩相当量であり、実際に食べる量ではない。副菜である漬物は通常、多くても一食あたり食べる量は30g程(大根や胡瓜5切れ)、外食店において一般的なカツ丼と共に提供される沢庵は2切れ(15g程)で、実際に摂取する塩分は他の食品に比べ多いとは言えない。
 食品ごとの塩分を実際に食べる量、使う量で分かりやすく紹介しているのが『塩分早わかり 第5版』(女子栄養大学出版部)。日常的によく食べられる食品約700品について、塩分を始めとした栄養データを写真と共に掲載している。
 「一日にどれだけ塩分をとっているかを理解し、適切な塩分量を守り食事を楽しんでほしい」との思いから1998年に初版が発売され、2022年2月には第5版が発刊されている。
 同書について、一般社団法人全国漬物検査協会会長で東京家政大学大学院客員教授の宮尾茂雄氏も「常食の塩分量が分かりやすく示されているので、より実際に近い。沢庵を5切れ(30g)食べても1gちょっとで、絶対量としての塩分は少ない。インスタントスープ1杯とほぼ同量だし、カップヌードルの3分の1よりも少ないくらいだ。このように漬物からの塩の摂取量は実態として、それほど多くはなく、漬物を悪者にしないための根拠になるのではないか」と話す。
 全日本漬物協同組合連合会(野﨑伸一会長)では、実態に合った「日本食品標準成分表」における塩分相当量の見直しをかねてより自由民主党漬物振興議員連盟に陳情してきた。その成果もあり、「日本食品標準成分表」の見直しが進んでいる。
 「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」では、「梅干し 塩漬」の食塩相当量は「2015年版(七訂)」の22・1gから18・2gへ減少。より現実に沿った形で、改訂が進められている。
 漬物議員連盟においても、総会開催の度、「日本食品標準成分表(食塩相当量)の見直し」が議題として挙がる。2020年の総会では、文部科学省より、成分表に掲載されている約50種類の漬物のうち、11種類で塩分の再調査が行われているとの報告があった。
 全日本漬物協同組合連合会の真野康彦専務理事も「各メーカーが製造する漬物の減塩化は進んできており、併せて、塩と野菜の取得メリットを中心に発酵食としての観点も含めた健康食としての認識を深められるようにしていきたい」と漬物のイメージ改善に取り組んでいく姿勢を示す。
 国立がん研究センターでは、「漬物」など日本食の摂取量が多い人は少ない人より死亡リスクが低下するという多目的コホート研究の結果を公表している。
 同研究内では、漬物の原料である野菜に含まれるカリウムについて言及。「通常、食塩摂取量が多いと血圧を上げることで循環器疾患のリスクとなるが、反対に、カリウムには、食塩のナトリウムを体外に排泄し血圧の上昇を抑える働きがある。そのため、日本食パターンのスコアが高いグループでは、食塩摂取量が多い場合でも、同様にカリウム摂取量も多かったことから、食塩による影響が打ち消された可能性がある」としている。
 「漬物=塩分」から「漬物=健康」へ。官民一体となりイメージの逆転を図ることで、漬物の消費拡大へつなげていきたい。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年12月1日第5113号3面】

【記者の目】1月1日号

我慢はいつまで続く 値上げに踏み切れない日配業界
昨年はガソリン、電気・ガス、サービスをはじめ、食料品も多くの品目で値上げが実施された。この動きは「値上げラッシュ」と呼ばれ、年明け以降も続くと見られている。
食品関連では、食用油、マヨネーズ、小麦粉、パン、パスタ、コーヒー、ハンバーグ、醤油、豆乳、ポテトチップス、麺類、冷凍食品、牛丼など、様々な商品が値上げを公表している。
値上げの主な要因となっているのは原材料価格と物流費の上昇だが、人件費、燃料、電気代、包装資材、添加物など、製造に関するあらゆるコストが上がっており、「企業努力だけで吸収することができない」と説明する企業が大半だ。
元を辿れば新型コロナウイルスが大きなきっかけと考えられるが、人手不足、原油高、穀物の国際相場上昇、コンテナ不足、円安といった影響もあり、一企業はおろか日本だけの問題に留まらない。
「値上げラッシュ」は、製造コストの上昇によるもので、これまでの製品価格では採算割れとなることを示している。それは特定の業態だけではなく、製造に関わる全てのメーカーに当てはまることだ。
客観的に考えても、あらゆる製造コストが上がっている現状で製品価格が維持されている、ということには違和感を覚えるほど、メーカーを取り巻く環境は厳しさを増している。また、HACCP手法に基づいた衛生管理や改正された食品衛生法への対応など、クリアしなければならないハードルは年を追うごとに上がっている。
本紙関連の日配業界の動向を見てみると、原料価格が史上最高値を更新した中国産楽京など、値上げの動きが本格化している品目もあるが、全体から見ればごく一部にすぎない。さらに、値上げの方法も価格改定ではなく、量目調整が主流で、「実質値上げ」や「ステルス値上げ」と呼ばれるものだ。
日配業界が値上げに踏み切れない理由として、「小売店のバイイングパワーが強く、値上げを認めてもらえない」。「売れなくなる」。「競合社に売場を取られる」。「消費者離れにつながる」などが挙げられる。
昨年12月、ある流通大手は2022年3月末までPB商品の価格据え置きを発表し、その他の流通大手もその動きに続いた。これらの対応は小売店グループの過当競争を指摘する向きもある。
昨夏は長雨の影響で白菜と胡瓜の価格が3倍から10倍に暴騰したが、浅漬製品の価格は据え置きで、赤字製造を余儀なくされた。漬物業界では青果市場で行われている変動相場制導入の必要性が叫ばれているが、実現の目途は立っていない。
市場のシュリンクと寡占化は加速度的に進んでいる。原料や人手の確保は今後さらに難しくなるため、商品の安定供給は大きな課題となる。日本は給与水準が過去30年横ばいで、世界基準で見ても物価の上昇率が低い。海外原料については他国に買い負けている事例も起こっており、国産原料はもちろん、これまでのように原料を安く仕入れて安く売る、という商売が成り立つ情勢ではなくなってきている。
寡占化が進むと大手の商品は供給されるが、差別化を図れる地方名産品の衰退につながり、売場の同一化→価格競争の様相となる。メーカーは減少傾向にあり、供給できる企業が限られてくれば、現在の買い手市場から売り手市場に変化していくことも考えられる。
今、値上げができなければいつできるのか。我慢はいつまで続ければいいのか。持続可能な事業になっているのか。企業の思惑や方針は異なるが、取り巻く環境や置かれている状況は同じ。2022年は各企業、各業界にとって未来の行く末を左右する年になるかもしれない。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年1月1日第5080号15面】
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