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塩 インタビュー2022

2022年3月21日号 塩特集

日本特殊製法塩協会
会長 鈴木恵氏

 塩の魅力伝える場所増やす 家庭料理が持つ価値を訴求
「特殊製法塩」及び「塩特定販売業」の各社が集まる、日本特殊製法塩協会。青い海、天塩、伯方塩業、日本精塩、マルニの5社が発起人となり2015年に設立され、現在37社が加盟している。同協会では“塩の正しい知識の発信”を主な目的として取り組んでいる。鈴木恵会長(天塩社長)にコロナ下の塩の動向や今後の方針などについて聞いた。(藤井大碁)
  ◇     ◇
 ‐この一年間を振り返って。
 「昨年の塩の需要は、一昨年とほぼ同じような動きを示した。業務用が引き続き落ち込む中、一昨年のコロナ初期にあった巣ごもり需要が縮小し、家庭用の塩の消費はやや減少した。だが極端に落ち込んでいるわけではなく、一部では伸びている商品もある。弊社でも海洋深層水を使用した平釜塩など競合が少なく付加価値の高い商品については伸長している。コロナをきっかけに、以前より料理素材にこだわる人や健康に気を遣う人が増えていると推測できる。また業務用においても粒形や成分などで差別化を図ることができるオーダーメードの塩のニーズは増えてきている。一方で、単身世帯の増加などにより引き続き大容量製品は厳しい状況だ。今後は国内人口が減少していく中、これまで以上にマーケティングに力を入れて商品開発を行っていきたい」

 ‐様々なコストが上昇する中、食品業界では値上げが続いている。
 「塩業界も製法によっての差はあるがエネルギーコストや物流費の高騰により大きな影響を受けている。今回価格改定を実施するメーカーもあると思うが、弊社では2019年に価格改定を実施しているため現時点では値上げの予定はない。足元では消費者の節約志向が強まっており値上げにより消費者の塩離れを招く恐れもあるため量目調整による値ごろ感の確保など各社が慎重に対応していく必要があるのではないか」

 ‐日本特殊製法塩協会の取組。
 「塩の魅力を伝える場面を作り、塩の正しい知識を消費者に発信していくことを目標に活動している。2020年には特殊製法塩の製造におけるHACCP手引書を作成し会員に配布するなど安全安心な塩づくりのための取組も行っている。今年はコロナ前に実施したサンマ塩焼きと塩サンプルの配布など、コロナの状況を見極めながらPRイベントや食育活動を積極的に実施していきたい。また塩業界全体で足並みを揃えて、こうしたイベントを開催していく必要性も感じている」

 ‐貴社では料理教室や食育イベントを頻繁に開催している。
 「本社併設の天塩スタジオができたことにより積極的にBtoCの取組ができるようになった。梅干や味噌などの料理教室を通して塩の魅力を伝えている。その他にも、マルシェの開催やキッチンカーの展開なども行っている。4月1日には『天塩 塩むすびの日』(4月6日)に合わせて、オンライン食育料理教室を開催する予定で、100組の親子をご招待している。塩について楽しみながら学んで頂ける場になればと考えている」

 ‐今後について。
 「家庭で作る料理の価値を改めて訴求していくことが重要だ。料理に使う塩の需要はコロナ初期に瞬間的に増加したものの、その後は再び減少傾向にある。冷凍食品や惣菜製品など簡便性の高い食べ物の存在もあり、料理を作る人は減少している。このままの状況が続けば、10~20年後に料理ができる人は少なくなってしまうのではないか。簡便性の高い食品は包装資材を多く使用しゴミの増加にもつながる。便利さの追求ばかりに世間の注目が集まりがちだが、健康面や環境面を考えても、家庭で作る料理の価値をもう一度訴求していく時期に来ているのではないか。弊社では、エコ輸送の実施や包装資材の再利用などSDGsを推進しながら、様々な取組を通して料理を作る楽しさや塩の魅力を発信していく」
【2022(令和4)年3月21日第5088号8面】



伯方塩業株式会社 代表取締役社長
石丸一三氏

天日塩の付加価値向上へ エシカルやSDGsにフォーカス
2023年に創業50周年を迎える伯方塩業株式会社(愛媛県松山市)の石丸一三社長にインタビュー。石丸社長は2019年度からの中期経営計画の中で、10年ビジョン「世界で1番有名な塩メーカーになる」を掲げている。その本質は、社員が誇りを持って働ける会社を目指すことであり、その実現のため人事制度改革や売上拡大、そしてSDGsへ取り組んでいることを話した。(小林悟空)
◇   ◇
 ‐10年ビジョン「世界で1番有名な塩メーカー」について。
 「対外的な広告宣伝を拡大して知名度を上げたいということではなく、1番の核は『社員が自らの仕事に誇りを持ちイキイキと働ける会社を目指そう』ということ。このビジョンに向かって取組を進める過程や結果を通して、顧客サービスの向上や地域社会への貢献を達成し、周囲からの評判が上がり、自然と伯方塩業というブランドが認知されるようになっていくことを目指している」

 ‐10年ビジョン実現への取組。
 「5か年の中期経営計画を立て、取り組んでいる。一つが人事制度の改革。イキイキと働き、努力する人が報われる仕組へと変更し、運用が始まっている。一方営業面では、2020年度からコロナにより外食産業が停滞し、売上目標達成に遅れが出ているのが正直なところ。ただ、新規顧客の獲得は進めているので、コロナが落ち着き既存顧客の売上が回復してくれば達成できる見込みとなっている」

 ‐新規顧客の獲得は。
 「塩は美味しいからと言って食べる量を増やせるものではなく、他の業界よりも同業者間の競争はシビア。日経POSセレクション2020年の食塩カテゴリーでは『伯方の塩1kg』が1位、『伯方の塩500g』が2位とコアなファンに選ばれているが、売場を見て決める浮動層もいる。そこを如何に取り込むかが重要。昨年はスタンドパック200gをリニューアルし販促をかけた成果が出た。また中外食へは個包装の『味香塩(あじかおるしお)』が徐々に評価を頂いている」

 ‐既に抜群の知名度を誇る中、今後の発信について。
 「『伯方の塩』はテレビCMをきっかけに知名度が上がったが、最近は若い世代がテレビCMを見なくなっているため、Webでの発信にも力を入れている。属性により配信ターゲットを細かく設定できるWebCMでは、単に『伯方の塩』の宣伝だけでなく塩そのものへの理解、関心を引き出せるよう、今まで以上に戦略的な発信を模索している。そして海外への発信はまだまだなので、同時並行で進めている」

 ‐海外での展開は。
 「海外売上は現在全体の1%程度しかなく、拡大の余地は無限にあり、今後の成長の柱になっていくと考えている。海外では塩の違いが意識されることは少ないように見受けられるが、日本で塩にこだわる人が増えたのは我々が長年発信してきたからだと考えている。日本の塩は異物混入や汚染がなく世界トップクラスの安全性であること、その中でも当社はこだわりを込めて作っていることを発信していけば海外でも結果は付いてくるはずだ」

 ‐塩業界で値上げが相次いでいる。
 「当社の場合、2019年に価格改定を実施していることから、未だその判断はしていない。しかしロシア問題でこれからさらに燃料価格が上がるのは必至で、柔軟に判断していかなければならない」

 ‐脱炭素が課題となっている。
 「自然塩存続運動から生まれた当社にとって、環境保護への取組は重要課題。2019年に大三島工場に新工場を建設した。既存の工場と新工場のボイラーを統合すればボイラーの設置数を減らすことができる。また使用する燃料をA重油からもっとCO2排出を減らせるものに代えることも計画中だ。さらに工場の太陽光発電を増設するなど、様々な観点からCO2排出削減を図り、世界に誇れる塩メーカーを目指す」
【2022(令和4)年3月21日第5088号9面】






ナイカイ商事株式会社
専務取締役 井上仁志氏

異物混入許さぬ製法 国産塩で安全安心を提供
ナイカイ塩業株式会社(野﨑泰彦社長、岡山県倉敷市)は国内製塩大手の一つである。年間20万tもの生産能力を有し、業務筋へ供給するほか塩化カリウムなど海水由来の化成品も広く扱う。グループ企業の日本家庭用塩株式会社(岡山県玉野市)は「瀬戸のほんじお」で著名だ。今回、商社機能を持つグループ企業のナイカイ商事株式会社(東京都港区)の井上仁志専務にインタビュー。井上専務は、石炭価格の高騰に伴い製品の価格改定を実施するが、安全性や物流面といった強みを生かして、食のインフラである塩の安全安心を打ち出す方針を語った。(小林悟空)
◇   ◇
 ‐ナイカイ塩業の塩の特徴。
 第一に、当社の塩は最も安全安心な塩であると自負している。というのも当社の製塩方法では、海洋プラスチックなどの海水中の混入する危険が極めて低い。海水をイオン交換膜に通すことで塩度の高い「かん水」を作り、それを石炭で加熱し水分を飛ばすことで食塩ができる。このイオン交換膜の工程で、異物が除去される。また海外の塩で添加されているヨードの過剰摂取などの心配もいらない。
 また、国内製塩であるため、万一問題が発生しても、原因究明やクレーム対応などすぐに対応できる。さらにこのコロナ禍で、輸入が滞る心配のない国産品の良さが認識された。塩はあらゆる食品に含まれるインフラ的存在であるため、安全安心を提供できることが何より大切だと考えている。

 ‐ナイカイ商事では他社の塩も扱われている。
 用途や価格の要望によっては他社製品の方が適していることも起こりうる。他社製品を扱うことで提案の幅が広がればお客様にメリットがあるのはもちろん、当社にとっては事業領域の拡大が物流面の強化に繋がるなど間接的な恩恵も得られている。近年、物流費が上昇する中、この強みは特に生きている。

 ‐化成品の事業について
 海水から塩をとる技術を応用して始めた事業であり塩化カリウムや炭酸マグネシウムなどを扱っている。主な顧客は食品業界でなく工業系なのだが、物流面の強化や経営の安定など、塩と相乗効果をもたらしてくれている。

 ‐4月から8円/kg以上の価格改定を発表されている。
 井上 塩の原料は海水であるため無限だが、製塩には莫大な費用がかかる。イオン交換膜でかん水を作った後は石炭が必要で、当社の場合、製品原価の約3分の1は石炭代だ。物流費や包装資材などの価格上昇には耐えてきたのだが、今回石炭価格が急上昇し、企業努力で吸収することは不可能な段階に至ったと判断した。
 昨今の環境保全の流れから石炭の供給は今後絞られていく可能性が高い。現状、塩メーカーの大半は最もコストが低い石炭を使っている。脱炭素への対応をどうするか、その場合塩の価格はどうなるのか、業界共通の悩みとなっている。

 ‐今後の方針は。
 減塩政策によって日本人の塩摂取量は減り、連動して国内製塩量も減ってきた。そんな中で、製塩の各工程でコストが上がり価格改定しなければならないことは苦しい判断だった。
 当社としては、イオン交換化膜製法による安全性、国内メーカーの対応力、他事業との相乗効果を引き続き活かして、食のインフラである塩の安定供給を実現し信頼を勝ち取っていきたい。
【2022(令和4)年3月21日第5088号10面】


株式会社ソルト関西 代表取締役社長
山本博氏

燃料代転嫁へ理解求める CO2は収支ゼロを目指す
株式会社ソルト関西(山本博社長、大阪市中央区)は、平成13年に関西域内の卸売会社6社が事業統合して設立された塩の元売企業。山本社長は、全国塩元売協会会長、塩元売協同組合理事長、そして一昨年設立された全国塩業懇話会初代会長の要職を務めており、元売企業と業界団体両方の立場から、塩の価格改定へ理解を求めるとともに、脱炭素実現のアイデアを語った。(小林悟空)
◇   ◇
 ‐塩の出荷状況は。
 「今冬は非常に降雪が多く融雪塩の出荷が増えた。一時は融雪塩が足りなくなる心配をしたほどで、当社としては前年を上回る売上となった。しかし食品用に限って見れば、縮小傾向に歯止めがかからない。減塩化政策と少子高齢化で、塩の出荷はここ十数年右肩下がりに減り続けており、コロナ禍でさらに加速した感覚がある。外国人旅行者が入らなくなり胃袋の総量が減ったこと、そして食の重心が外食から内食へ移ったことでフードロスが大幅に減ったことが背景にある」

 ‐御社の対策。
 「残念ながら塩の一人当たりの消費量を増やすことは難しい。そのため塩以外の調味料や資材関係などの扱いを増やしている。取引先様にとっては、仕入れのスリム化というメリットに繋がっている」
 ‐国内製塩大手4社を中心に価格が改定される。
 「企業、製品により多少の差はあるものの、概ね2割以上の大幅値上げとなった。一番の原因は石炭、LNGなど化石燃料の高騰。国内製塩で主流な海水塩を作るには莫大なエネルギーが必要であり、その燃料費が塩の価格のかなりの部分を占める。もちろん物流という面でも影響している。燃料費高騰を価格転嫁しなければ事業の継続すら難しい状況になっていることをご理解いただきたい」

 ‐燃料費は相場制で、下がることもある。
 「勿論、安値で定着するなら値下げの議論も出ると思うが、今後長期的に見れば上昇傾向となるのは間違いないというのが共通見解。現在の高騰は新型コロナウイルスによる海上輸送費の高騰、さらに脱炭素が世界的課題となっているため、投資の対象から離れた化石燃料価格が逆に高騰したもの。今回の価格改定には折り込んでいないが、昨今のロシア情勢もあり、現在も相場は暴騰を続けている」

 ‐脱炭素実現のアイデアは。
 「製造面で言えば、クリーンエネルギーを使い発生するCO2を減らすには新たな設備が必要で時間も費用もかかる。当面は、発生したCO2を炭酸マグネシウムなど別の物質に変換して活用する、また発生するCO2を相殺する植樹に投資する、など収支をゼロへ近づける方法が現実的と考えている。各企業任せにするのでなく、懇話会を通じて研究機関や塩事業センターから知恵を借りるなど取り組んでいる。また、共同配送等による物流面での改善も検討していきたい」

 ‐塩の情報発信については。
 「塩が身体に必要不可欠であることは『くらしお』運動を通じて少しずつ知られるようになってきたと思う。味や製法の違い等は各社各様に取り組まれているが、塩そのものの重要性をより社会に発信するため業界団体としてどう取り組んでいけるか模索中だ。また少子高齢化への対策として、海外市場の開拓も視野に入れる必要がある。日本の塩は異物混入や汚染がなく、世界トップレベルの品質を持つことを主体的に発信していけるよう議論を進めていく」
【2022(令和4)年3月21日第5088号11面】






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