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「ザ・特集」リード2022

<霞ヶ浦北浦特集>茨城県水産製品品評会 創意工夫で新たな製品

令和4年度水産製品品評会の表彰式
 令和4年度茨城県水産製品品評会の表彰式が9日、水戸プラザホテルで開催された。今年度の品評会には、昨年を上回る計367点(霞ヶ浦北浦部門250点、沿海部門117点)の出品が寄せられた。霞ヶ浦北浦部門では、原田水産(小美玉市高崎)の「白魚黄金釜揚げ」が農林水産大臣賞、コモリ食品(鉾田市中居)の「鯉こく(2人前)」、安部(かすみがうら市牛渡)の「わかさぎ白焼甘露煮」が水産庁長官賞を受賞した。 
 霞ヶ浦北浦では今年も、ワカサギ漁、川エビ漁が不漁となった。水産資源が限られる厳しい環境の中で、品評会では、水揚げの多いシラウオを原料とした製品や、新しい加工技術を用いた製品も見られた。主要魚種の資源減少を反映し、複数の原料を組合わせた製品の開発など、メーカーの創意工夫により新たな製品が生まれている。 
 昨年9月には、霞ヶ浦の帆引き船と帆引き網漁法の保存活動が、地域の文化向上と活性化に貢献した個人や団体に贈呈される「第43回サントリー地域文化賞」を受賞するなど、帆引き船を始めとした霞ヶ浦の文化が改めて脚光を浴びている。特集では、品評会入賞商品を始めとした霞ヶ浦北浦の魅力的な水産加工製品を紹介する。(藤井大碁)【特集2、3面】
【2022(令和4)年12月21日第5115号1面】

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<山陰特集>食のみやこ鳥取・縁結ぶ島根

津田かぶ
 「山陰地方」は、名前から「日陰」を連想させると言われ、実際に日照時間が短く雨や雪が降りやすい地域である。
 しかし近年、鳥取と島根は県のイメージを向上させようと魅力を打ち出している。鳥取は、「星取県」として全国有数の星の見やすさを誇り、「食のみやこ」として松葉がに、日本一の甘柿「花御所柿」、2018年デビューのオリジナル米「星空舞」をPRしている。
 島根は「縁結び」の県として、ブランディングを図っている。「出雲空港」
の愛称が「出雲縁結び空港」となり早10年、3大都市とアクセス可能で、路線が増えたため利用者数も上昇し、ビジネスのご縁も結ばれやすくなった。 
らっきょうの花
 実はロマンチックな両県、鳥取の砂丘らっきょうは風雪に耐えるからこそ身が引き締まり、島根の津田かぶは土壌が重たいことから勾玉状に成長し、縁起物とされる。「日陰」のイメージから脱却し、脚光を浴びている。
(大阪支社・高澤尚揮)
【特集4面】
【2022(令和4)年12月21日第5115号1面】

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<長野特集>「発酵レシピコンテスト」 “野沢菜かき揚げ”がグランプリ

あまーいしょっぱーい!魔の信州かき揚げ!
 令和4年度長野県園芸特産振興展の第66回漬物品評会の審査が10月20日に行われ、浅漬物の部ではやまへい(小諸市)の「匠 野沢菜漬」が、本漬物の部では、キョウショク(北佐久郡御代田町)の「本漬野沢菜漬」が農林水産大臣賞に選出された。
 今年の農林水産大臣賞は浅漬、本漬の両部門ともに野沢菜漬が受賞。長野県の特産漬物としての価値を改めて印象付けた。
 全国トップレベルの長寿県として知られる長野県では、2018年に「発酵・長寿県」を宣言し、県を挙げて、発酵食品の開発支援やPRに取り組んでいる。 今年、県は今までとは違う発酵食品の食べ方を発掘するため「発酵レシピコンテスト」を初開催した。
 応募総数43作品の中からグランプリに輝いたのは筒井久美子さんが考案した「あまーいしょっぱーい!魔の信州かき揚げ!」。甘酒で凍り豆腐を戻し、野沢菜漬を加えてかき揚げにしたレシピで、甘酒の甘さ、凍み豆腐の食感、野沢菜の塩気を新しい形で楽しめる一品として高い評価を得た。準グランプリを受賞した山口華凛さんの「信州たっぷり野沢菜せんべい」も、野沢菜漬を使用したレシピ。ニラの代わりに野沢菜漬を使用し、甘酒で優しい味付けにした。
 おにぎりやおやきの具材として人気の野沢菜漬だが、シャキシャキとした食感や独特の旨みは、様々な料理との相性が良く、食材としてのポテンシャルは高い。チャーハン、餃子、ピザやパスタなど和食以外にも野沢菜の活躍の場は広がっており、今回のコンテスト受賞作品のような新たなレシピ開発が野沢菜の需要を高めていく。
 一方、足元で野沢菜漬メーカーを始めとした長野県の食品事業者を苦しめているのが製造コストの上昇。各事業者では順次値上げを進めているが、コストアップ分を吸収するには至っておらず、早急な対応が求められている。
 また野沢菜農家の減少や高齢化も大きな課題だ。原料の安定確保のため、野沢菜漬メーカーでは、生産者とこれまで以上の信頼関係を構築していくことが求められている。
 今回の特集では、「長野県の伝統食品業界」についてのアンケート調査も実施。課題として、後継者育成や農家の減少などが挙げられた。詳細は食料新聞電子版にて12月28日に公開を予定している。(藤井大碁)
【長野特集5~8面】
【2022(令和4)年12月21日第5115号1面】

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<徳島特集>存在感増す原料産地 気温高く葉物の生育順調

漬物や惣菜に利用される菜の花
 徳島はみぶ菜や野沢菜、菜の花など漬物・惣菜の原料となる野菜生産が盛んだ。農林水産省の令和2年統計によれば、「しろうり」の収穫量が1800tで全国1位、58・4%のシェアを有する。このため多くの奈良漬メーカーが徳島に工場を構えている。
 他にも「つけな」と「なばな」が全国2位、「れんこん」や「にんじん」などが全国3位となっている。県内漬物メーカーはこれらを自社で漬物へ仕上げるだけでなく、塩蔵やカット、冷凍などの一次加工を施し食品メーカーへ出荷している。輸入食材の高騰や、海外でも農業人口の減少が進む中、徳島は国内産地として存在感を強めている。
 今年は暖かい日が続いたため、みぶ菜、野沢菜、菜の花、大根、かぶらなど秋冬野菜の生育は良い。収穫時期を逃さぬよう急ピッチで作業が進められている。観光や外食産業の回復もあり、播付けを増やすケースも多かったようだ。
 ただ、豊作とは言え原料価格の低下には直結していない。農業に必須の肥料や農薬、機械器具、光熱費などあらゆるコストが上昇しているため、多くのメーカーは契約栽培の単価を引き上げた。さらに漬物に加工する塩や、冷蔵庫・冷凍庫のための電気代も急騰しているため、原料卸としても今秋から価格交渉が進められている。
 また徳島においても生産農家の高齢化や離農の問題に直面している。インボイス制度が小規模農家の負担となり、離農が加速するとの不安もある。
 こうした中、漬物業界には付加価値の向上や徳島ブランドの育成と、その価値に見合った適正価格の追求だ。特集で各社の取組を紹介する。(大阪支社・小林悟空)
【2022(令和4)年12月11日第5113号1・4~5面】

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<奈良漬特集>新しい食べ方広がる

18品のブッダボウル
様々な料理のアクセントに奈良漬
 近年、奈良漬の新しい食べ方が広がっている。奈良漬とチーズの相性の良さが話題となり、奈良漬にクリームチーズやカマンベールチーズを乗せて、酒の肴として楽しむ食べ方が定着した。クリーミーなチーズの味わいが奈良漬の香りをまろやかにしてくれる。日本酒と洋酒、どちらと合わせても相性の良いおつまみとして、若い世代からも支持されている。
 奈良漬と相性が良いのはチーズだけではない。その個性ある味わいは、様々な食材の味わいを引き立てる。新六本店(茨城県取手市)では、ホームページ上で多彩なアレンジレシピを紹介。奈良漬と玉子焼きを巻いた手巻き寿司、刻んだ奈良漬を混ぜた納豆など、様々な料理に奈良漬が良いアクセントを加えている。
 最近では、吉岡屋(東京都中央区)の西瓜の奈良漬が「築地本願寺カフェ Tsumugi はなれ 月島店」の人気メニュー「18品のブッダボウル」の1品として採用されている。西瓜の奈良漬は、しっとりとした柔らかい食感が特徴で、ご飯との相性が抜群。ブッダボウルに欠かせない一品として人気を集めている。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年12月1日第5113号1面】

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<愛知特集>伝統とものづくりの技術

8月21日に萱津神社で開催された香の物祭
漬物出荷額はトップクラス
日本における香の物発祥の地とされている愛知県あま市の萱津神社。その歴史は古く、言い伝えによれば、その昔あま市周辺の人々は神前に初なりのウリやナスなどを供えていた。
 当時、萱津神社の辺りは海辺だったので、海水から作った塩も供えるようになり、これらの野菜と塩を一緒にカメに入れて供えたところ、程よい塩漬ができたとされている。
 古墳時代の大和政権成立期のころ、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の帰途に萱津に立ち寄り、村人が献上した漬物を食べて「藪に神物」(やぶにこうのもの)と呼んだことから、漬物が「香の物」と言われるようになったと伝えられている。
 萱津神社には全国で唯一、漬物の神様が祀られており、毎年8月21日には「香の物祭」が開催されている他、業界では毎月21日を「漬物の日」と定めて漬物の普及、消費拡大に努めている。
 愛知県は農水産物の宝庫で、キャベツ、しそ、食用ぎく、ふき、とうがん、しろうり、あさり類、あゆ養殖、くろだい・へだい、うずら卵の産出額は全国1位を誇る。また、昨年8月に公表された経済産業省「工業統計調査」の2019年都道府県別出荷額は159億1000万円の6位で、1事業所当りの出荷額は4億4800万円で7位とトップクラスに位置している。
 伝統やものづくりの技術に加え、生産力も併せ持つ愛知県の魅力を発信する。
【特集4・5面】
【2022(令和4)年11月21日第5112号1面】

<広島特集>広島菜が旬迎え奉納祭

広島漬協が厳島神社で漬物奉納祭を行った
「広島菜漬」旬迎え奉納祭 
昆布やイカ加工盛んな歴史も
 広島は独特な食文化を育んできた地だ。お好み焼きの人口当たり店舗数では2位以下に倍以上の差を付けて断トツの1位。日本三大酒処の一つに数えられる西条を有し、牡蠣やレモンの生産量では日本一、と広島の食と言って思い浮かぶものは数々ある。
 その中でも長い歴史を持つ漬物では「広島菜漬」が特産品だ。広島県漬物製造業協同組合(山本千曲理事長)ではその発信に力を入れ、生産農家と二人三脚でその成長を後押ししてきた。
日本するめ協同組合の入札会
 9日には、第37回目を迎える漬物献上祭を嚴島神社本殿にて執り行った。加盟各社が自社の広島菜漬を奉納するとともに、先人への感謝を捧げ広島菜漬のさらなる発展を祈願した。
 今年は嚴島神社のシンボルである大鳥居が3年半の大改修を終え10月から防護ネットが撤去された。その姿を拝もうと宮島は多くの参拝客で賑わっていた。献上祭が本殿にて、太鼓の音とともに厳かな雰囲気で執り行われると参拝客らは足を止めて見入っており、広島菜漬のPRの役割も果たしていた。
 この日参拝した西村俊一理事は「国内外からの観光客が非常に多く、街全体に活気が出てきた。今年は広島菜も豊作傾向。コスト上昇は厳しいが、販売面では期待が持てそうだ」と話した。
 同じく伝統食品である佃煮や珍味の製造も盛んだ。かつて北海道から昆布やイカを運ぶ北前船が広島で停泊し荷を下ろしていたことから、広島ではその加工が盛んに行われた歴史を持つ。昆布佃煮の製造量は兵庫県に次ぎ、国内第2位を誇る。
 「イカ天」などイカ加工品の生産も多く、日本するめ協同組合(池田正文理事長)では尾道で毎年恒例の入札会を、今年は8月に実施した。(詳報次号)
 今回の広島特集では漬物や佃煮を中心に、広島で進化を続ける食文化を紹介する。(大阪支社・小林悟空)
【特集6・7面】
【2022(令和4)年11月21日第5112号1面】

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<埼玉特集> 地元食材の活用進む

ふかや花園プレミアム・アウトレット
新施設オープンで注目度アップ
 近年、埼玉県の人気が高まっている。県庁所在地であるさいたま市は昨年1年間の人口増加数が約7600人と全国1位となった。
 交通の便が良いことや都内と比べ住宅の値段が安いことに加え、コロナ禍の影響により、リモートワークが進んだことで都内などから移り住む人たちが増えたことが人口増加の要因として挙げられている。
 県内には最新施設も続々オープンし注目を集めている。10月20日には、「ふかや花園プレミアム・アウトレット」がオープンした。同施設は、魅力的なショッピング体験の他、自然豊かな深谷市および埼玉県北西部の魅力を活かした「地域との共生」をテーマとして掲げ、一部飲食店舗で、「深谷ねぎ」などの地元食材を用いた限定メニューの開発や、地元で収穫された新鮮な野菜や果物を使用したメニューの提供を予定している。
 県内の食品メーカーにおいても、地元食材を使用した商品開発が活発化している。「深谷ねぎ」や「秩父きゅうり」といった埼玉県産ブランド野菜を加工、地域性の高い商品として人気を集めている。
 またSDGsの流れの中、地域貢献に取り組む企業も増えている。山本食品工業株式会社(山本正憲社長、埼玉県行田市)では、昨年7月に「埼玉県SDGsパートナー」に登録、地元の社会福祉協議会へらっきょう製品などを継続的に寄贈する取組をスタートしている。
 今回の特集では、「埼玉県の伝統食品業界」についてのアンケート調査も実施。食料新聞電子版にて11月25日に公開を予定している。
【2022(令和4)年11月21日第5112号1面】

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<沢庵ワイド特集> 「米活」の追い風チャンスに

塩漬される大根(写真提供=九州農産)
原料は減収予想の地域も
 市場規模3600億円超の漬物カテゴリーの中で、沢庵・大根漬(青首糖絞り、べったら等含む)は約419億円(2021年、いずれも本紙調べ)と、依然として高いシェア率を誇っている。
 食べ応えのあるボリューム感、パリパリの食感、ぬか漬の発酵熟成した深みのある味わいなど、日本人のソウルフードとしての存在感はこれからも変わることはないはずだ。
 しかし、沢庵を取り巻く環境は年を追うごとに厳しさを増している。今年の6月に佐賀で開催された全漬連の旧干そう沢庵部会で、沢庵の動向について発表が行われた。生沢庵(塩押し)は一昨年に巣ごもり需要で特需となったが、昨年から今年にかけてはその反動減となっていることが報告された。
 干し沢庵は土産物のシュリンクが大打撃となったが、コロナによる規制が解除されたことで地方への旅行気運が高まっており、回復が期待される。
 今季の原料動向については、9月中旬に九州を襲った台風14号による大雨で、鹿児島・宮崎の生沢庵用の大根産地では播き直しを余儀なくされた。例年より2週間から3週間の遅れが出ており、生育不足と作付減で、減収となることは確実と見られる。
 茨城の作柄は、生育に若干の遅れが出ているものの平年作の見通し。新潟の作柄は、作付面積の自然減と早蒔き分の天候不順で、全体の収量は1割程度の減収見込みとなっている。
 沢庵製品は、ご飯のお供としての存在感から一歩脱却し、おつまみや惣菜感覚のメニュー提案も活発だ。しかし、今年はやや様相が変わりつつある。
 ウクライナ情勢や円安傾向から輸入小麦が高騰しており、パンや麺類の平均単価が上昇。総務省家計調査の一世帯当たりの購入平均価格は、コメが昨年からほぼ横ばいなのに対し、パンは108%、生うどん・そばは112%、中華麺は105%と高騰している(関連表3面、8面参照)。
 これを背景として、ごはん食に回帰する「米活(こめかつ)」の機運が高まっている。あらゆる食品が高騰する中、割安感のあるコメの消費が増えれば、沢庵を始めとする漬物には大きなチャンスだ。
 沢庵製品も、他の食品の例に漏れず値上げは不可欠な状況。しかし、付加価値のある商材で適正な価格改定を行えば、「米活」による売上増で農家の持続可能な再生産に寄与できるため、このチャンスを追い風にしたい。
【2022(令和4)年11月11日第5111号1、4~8面】

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東京農業大学(東京都世田谷区) “大根踊り” 勇壮に

 創立131年を迎える東京農業大学(江口文陽学長、東京都世田谷区)では10月28日~30日、大学祭である「収穫祭」を世田谷キャンパスで開催。「全学応援団リーダー公開」では、農大名物の“大根踊り”が披露された。
 同収穫祭はコロナ禍により2年間はオンライン開催となったが、今年は3年ぶりの対面開催となった。来場者は事前予約で受け付け、感染予防対策を講じながら安全安心を第一に考えた上での開催となった。
 農大応援団は、学生・教職員を含めた全ての関係者で構成されるという意味で「全学応援団」と呼称。リーダー公開ではその中心となる吹奏楽部、チアリーダー部、リーダー部がパフォーマンスを披露した。
 リーダー部(矢萩源士第91代団長)の演技披露では縦5m、横5・15m、竿6・5mの大団旗のもと、学歌“常磐の松風”、第二応援歌“緑の精鋭”などの楽曲に合わせた応援パフォーマンスを演舞。そのクライマックスを飾るのが、大根踊りの名称で知られる“青山ほとり”だ。リーダー部とチアリーダー部の団員が大根を持ちながら勇壮に踊る姿に、会場となった百周年記念講堂の客席からは大きな拍手が湧き起こった。
 リーダー公開の運営を担当した収穫祭ステージ企画本部の久保田裕貴さん(3回生)は「入学してからの2年間はオンライン開催だったので、対面開催ができて本当に嬉しい」と初体験に戸惑いながらもしっかりと運営に当たっていた。
【2022(令和4)年11月21日第5112号2面】

東京農業大学 HP

<かぶら漬特集> 冬の売場を彩る個性

飛騨の赤かぶ
 冬の漬物として大きな市場を作っているかぶら漬。その品種は多種多様で、地域の「伝統野菜」に指定されているものも多い。
 その色彩は白・赤・青など彩り豊かで、形も丸形・コマ型・ひょうたん型と個性に溢れている。
 改良品種に押され栽培が途絶えかける伝統野菜を、漬物メーカーが主導して維持・復興を進める事例も多数ある。飛騨の赤かぶ「飛騨紅蕪」、大阪の「天王寺かぶら」、高知の「弘岡かぶ」などは栽培されたもののほぼ全量が漬物メーカーへ出荷されている。企業活動が伝統や食文化の維持継承に貢献している好例と言える。
 製品としても、千枚漬をカップ入にして一口サイズにカットした「切千枚漬」のように現代の即食ニーズに合わせて進化してきたものから、「飛騨の赤かぶら漬」など、今もなお塩だけで漬けた昔ながらの味を守り続けているものまで幅広い。
 原料状況としては、北海道・東北産の大かぶらや飛騨が播種期の長雨でやや生育が遅れるなどの問題はあったものの、台風被害なはなく、安定した作柄が見込まれている。今年は経済活動が徐々に再開されており、各地の土産品としての販売も順調なかぶら漬を紹介する。
【2022(令和)4年11月11日第5111号1、9、10面】

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<愛媛・香川・高知特集> ブランド力ある地元食材

ひろめ市場(高知)
価格より質で魅力伝える 
 愛媛、香川、高知でも昨今の輸送費増で大きなコスト負担が強いられている。今回の取材の中で、「ひと昔前は、関西や関東と比べて情報が入ってくるのが遅いのが不満だった。今は、他地域と比べてより輸送費が掛かるのがネック。地方メーカーは苦労が絶えない」と話す企業がいくつもあった。
 しかし、地元密着のメーカーには、都市から離れているからこそ育まれ、継承されてきたものがある。愛媛の大沢食品のからし菜、守谷漬物の庄大根の漬物は、地元で愛されてきた伝統野菜。既存の農家が高齢化で減少しても、人の繋がりで別の農家が新たに栽培を始めたり、福祉施設が協力するなど、希少な素材を守り続けている。
 他地域にない原料で仕上げた商品は唯一無二で、大手企業でも作り出せない。伝統食を残そうという強い意志と、地域の仲間の協力がなければ、維持、継承することはできない。そうしてできた商品は、都市部のバイヤーから、価格よりも先に質で魅力を感じてもらい、取引が始まる。年末商戦も近づいてきた。
【2022(令和)4年11月11日第5111号1、10、11面】

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讃岐富士と呼ばれる飯野山(香川)
からし菜畑(愛媛)

<梅関連特集> 『梅』にコロナ感染阻害効果

天日干しされる紀州南高梅(田辺市)
「健康機能性」の価値が浸透
 今年の紀州梅産地の作柄は平年作となり、昨年の豊作に続いて良好な環境となっている。
 産地の在庫も潤沢で、増量セールや特売など積極的な販促が行われた効果もあり、売れ行きは前年を上回る数字となっている。今年の夏は期待されたほどの売れ行きにはならなかったものの、記録的な暑さとなったこともあって、まずまずの動きとなった。
 紀州産は上昇する製造コストの全てを吸収することはできないものの、原料価格が落ち着いたことで価格維持の方針を示すメーカーが大半を占めている。一部で値下げの動きもあるが、増量や特売等での対応が主流となる。
 中国産については輸入の完成品、国内製造品ともに円安の影響が大きく、すでに値上げを実施しているメーカーもあるが、10月、11月から本格的な動きとなっている。国産との価格差が縮まってきており、国産製品のニーズがやや高まっている。
 梅干しは漬物の中でもアッパーな価格帯となっているため、昨今の物価高の影響もあり、今後の売れ行きが懸念されている。近年、梅干しは嗜好性の高いものとしての位置付けが明確になりつつあるが、広く認知されている「健康機能性」が価値として浸透してきていることは大きなプラスだ。
 大阪河﨑リハビリテーション大学の宇都宮洋才教授らの研究チームが10月30日、和歌山県みなべ町のみなべ町役場で「梅の医学的効能研究報告会」を開催。「梅干しの新型コロナウイルスへの効果検証」などが発表(詳細13面)されるなど、改めて梅の健康性がPRされた。
 新型コロナの第8波とインフルエンザの同時流行の可能性が指摘される中、感染阻害効果が期待される「梅」への注目度は増すばかり。各社では梅干しのレシピ提案や梅シロップ、梅スイーツなど、食べ方や利用方法の情報を幅広く発信し、梅の魅力を伝えている。
【2022(令和)4年11月11日第5111号1、12・13面】

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<東北特集> 伝統がもたらす多彩な食文化

収穫された山形の温海かぶ
食欲の秋に“陸奥”の特産品
 四季の移ろいや伝統がもたらす多彩な食文化を持つ東北。雪国で育まれた個性豊かな料理や地元の食材をふんだんに使用した特産品は、〝陸奥〟の歴史や文化を感じさせる逸品として愛されて続けている。
 実りの秋、収穫の秋が到来し、山の幸、海の幸に恵まれた東北では、『食欲の秋』にぴったりな特産品や名産品の魅力を発信している。
 政府の全国旅行支援(全国旅行割)がスタートした10月11日以降、東北でも各地の紅葉スポットには県外から観光客が多く訪れ、にぎわいを取り戻している。大きな打撃を受けていた観光業やそれに関連する土産品の動きも回復傾向にあり、大きな期待を寄せられている。
 東北の大きな魅力の一つである『食』。漬物では青森の梅漬、秋田のいぶりがっこ、岩手の金婚漬、宮城の仙台長茄子、山形の青菜や赤かぶ、福島の三五八漬や胡瓜漬など、旬の素材を活かしながら伝統の技法を駆使して作られた地域色溢れる特産品が地域に根付き、近年は県外でも親しまれるようになった。いぶりがっこや赤かぶは今や全国に流通するまでに至っている。
 山形では特産の青菜と赤かぶのシーズンを迎え、各社には良質な原料が連日入荷している。今年の青菜の収穫は例年よりやや遅く、小ぶり傾向となっているが、作柄については平年並みの見通しとなっている。
 もう一つの山形の伝統野菜である「赤かぶ」も収穫のスタートにやや遅れが見られたものの、これからピークを迎えるため青菜と同様、平年作と見られている。
 福島県漬物協同組合(森藤洋一理事長)では、昨年10月より「福島県漬物協同組合推奨品」という共通ブランドを立ち上げ、福島の漬物のブランド化を目指す取組をスタート。また、同県の郷土料理で、組合加盟企業の多くが製造している「いか人参」を新たな特産漬物に育てようと商標登録を申請した。
 青森県漬物組合では小村彰夫氏が新組合長に就任。漬物需要活性化のため組合員7社の漬物を県内スーパーで販売する「青森県漬物まつり」を11月下旬より開催する予定だ。
 秋田県漬物協同組合でも木村吉伸氏が新理事長に就任。「いぶりがっこ」の地理的表示(GI)認証の周知などに取り組んでいく。 また岩手県、宮城県のメーカーでは、菊芋やふかひれなどの特産品を使用した新製品を開発し注目を集めている。
【2022(令和4)年11月1日第5110号1、4~8面】

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<滋賀特集> 千枚漬や日野菜ピークへ

近江伝統野菜の日野菜
 冬の代名詞ともいえるかぶら漬のシーズンがやってきた。千枚漬用の大かぶらに加え、日野菜や万木かぶらなど「近江の伝統野菜」にも認定される様々なかぶらを有する滋賀は、全国でもトップクラスのかぶら生産地だ。
 琵琶湖を水源とした肥沃な土壌があることと、周囲を取り囲む山々から吹き下ろす冷たい颪風。これらの地理的要素が、大きく、締りのあるかぶらを育ててくれている。この豊富なかぶらを用い、漬物文化も育まれてきた。
 今年の生育状況は、気象災害に見舞われることもなく順調。観光も回復しつつある中、原料がしっかり確保され、力強い販売となることに期待がかかる。
 伝統を守り、未来へ繋げていくための取組も盛んに行われている。滋賀県漬物協同組合(林洋一理事長)は「近江つけもの」ブランドの育成を目指し、食育活動や、龍谷大学学生とのコラボレーションを行っている。
 また県においても発酵食文化を発信する「発酵からつながる滋賀」を打ち出している。日本トップクラスの長寿県となった滋賀の食文化にはますます注目が集まっている。
(大阪支社・小林悟空)
【2022(令和4)年11月1日第5110号1、9面】

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<八郎潟特集>「わかさぎ」の名産地

八郎潟のわかさぎ
 わかさぎの佃煮、甘露煮、唐揚げの名産地として知られる秋田県八郎潟では、今年も9月21日より、通称・どっぴき漁と呼ばれる機船船引(きせんふなび)き網漁がスタートした。今年はここまで平年並の漁獲量となっており、連日、新鮮なわかさぎが加工メーカーに運び込まれている。
 全国的に小魚の不漁が深刻化する中、八郎潟のわかさぎは貴重な水産資源だ。2019年に不漁となったのものの、その後は水揚げ量が回復している。各佃煮メーカーでは、唐揚げの新商品を開発するなど活発な活動を展開している。
 8月16日にJR大久保駅前広場で実施された「第54回八郎まつり」では、市内6社の佃煮を食べ比べる〝きき佃煮大会〟が開催された。参加者は佃煮を試食し、どの会社のものかを予想し解答用紙に記入。全問正解者には先着で佃煮詰合せセットがプレゼントされた。
【2022(令和4)年10月26日第5109号10面】

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<おせち特集> おせち需要堅調も供給難

近鉄百貨店オリジナルおせち「三重折」
メーカー苦しめるコスト増 
 2023年元旦に向けたおせち商戦がスタートした。ここまで、百貨店や通販の重詰め予約状況は順調に推移している模様だが、今年はコロナ下の過去2年間とは様相が異なる。
 10月11日より全国旅行支援がスタートするなど人流が活発化、年末年始も昨年以上に帰省や旅行に行く人が増えると見られる。昨年同様、首都圏から地方へ人が移動し、首都圏のスーパーではおせち売上が減少、地方では増加という流れがさらに顕著になることが予想される。
 今年のおせち商戦と切り離せないのが値上げだ。様々な製造コストの上昇により、多くのおせち商材で5~20%程の値上げが実施される予定。物価高で生活防衛意識が高まる中、値上げにより売行きにどれほどの影響が出るのかが、おせち商戦を占う鍵となる。
 製造コストの上昇がメーカーを苦しめている。エネルギーコストに加え、栗・昆布・黒豆・田作りといった主原料、砂糖・調味料といった副原料まであらゆるものが高騰している。円安の影響もあり、「終わってみなければ利益が出るのか、赤字になるのか分からない」とするメーカーも多い。
 さらに不安視されているのが来年のおせち商戦だ。「円安に振れる前の原料ストックが一部ある今年はまだよいが、本当に大変なのは来年のおせち商戦」と今から来年の状況を懸念する声も聞こえてくる。
 だが、おせち全体の需要は堅調に推移しており、メーカーはこの需要に応えるための安定供給がテーマとなっている。ヤングファミリー層や単身世帯といったこれまでおせちを購入していなかった新たな層が、コロナ下におせち料理を食べるようになった。コロナ後もこうしたユーザーをつなぎ止め、おせち文化を次世代に伝承していくことが大切だ。
 2023年おせちのトレンドとして挙げられるのが、大人数おせちの復調と、おつまみおせちの台頭。久しぶりに親戚や友人たちと大人数で食卓を囲む食シーンを想定し、各社が大人数で楽しめるバラエティ豊かな重詰めを展開している。少量多品種の酒の肴が詰まったおつまみおせちも、家飲み需要に対応し人気カテゴリーとなっている。
(おせち特集特別取材班)

 【食料新聞 独自おせちアンケート】→こちらから

【2022(令和4)年10月26日第5109号1、3、4~10、16面】

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<浅漬キムチ特集> キムチの需要は高止まり

東海漬物の白菜漬ときゅうり漬を使った「赤魚の塩麹ソテー白菜漬ミネストローネソース」
浅漬も料理素材に利用
 コロナ禍で健康志向が高まり、特需が発生したキムチ。今年は2020年、2021年と比べると需要は落ちてきているが、コロナ前(2019年)比では10%以上のプラスとなっており、需要が減少しているというよりは「需要は以前の水準に戻りつつあるが、高止まりしている」という表現が正しいと言える。
 つまり、一過性のブームではなく、食生活の一部として定着している流れだ。植物性乳酸菌を豊富に摂取できるキムチは発酵食品としての認知度も高く、料理素材としても利用できるなど汎用性の高い点も魅力。これからの時期は鍋の具材としての利用も増えてくる。
 売上を確保するため、特売や販促の目玉として価格訴求の売り方が多くなっているが、各メーカーの特徴が打ち出された多彩な商品ラインナップで、女性や若い世代が積極的に売場に足を運ぶ。引き続き漬物市場をけん引する役割を担っている。
 野菜の価格が比較的安定していたこともあり、やや低調な動きが続く浅漬だが、主力の白菜が美味しくなる季節となるため、これからの動きが期待される。
 きのこ入りの白菜漬、キャベツ、秋茄子、赤かぶなど季節感のある商材の他、新しいスタンドパックの包材でオクラやブロッコリーが展開されている。また、ぬか漬やぬか風味の商品が人気で、60g~80gのミニカップも堅調な動きを見せている。
 東海漬物株式会社(永井英朗社長、愛知県豊橋市)は、株式会社タニタ(谷田千里社長、東京都板橋区)とのコラボで白菜漬ときゅうり漬を使ったアレンジメニュー(赤魚の塩麹ソテー白菜漬ミネストローネソース)を開発し、東京都中央区のタニタカフェコレド室町店にて期間限定(10月3日~11月6日まで)で販売。キムチと同様に料理素材としても幅広く利用できることをPRしている。
 生野菜よりも賞味期間が長い浅漬は、彩りになるだけではなく、野菜を調理や味付けを行わずに食物繊維を摂取できる“常備菜”として、健康的な食生活に寄与することができる。食べ方や利用方法の提案次第では、まだまだ伸び代がある。本特集ではキムチと浅漬の魅力を発信する。
【2022(令和4)年10月11日第5108号1、2、4、8・9面】

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<茨城特集> 茨城プレDCがスタート

長島漬物食品の大根圃場(右側)とさつまいも畑
順調に生育する大根
荒廃農地再生で農業復活
 都道府県別の魅力度ランキングで毎年下位に低迷する茨城県が注目を集めている。
 茨城県では、2023年秋(10~12月)に「茨城デスティネーションキャンペーン(茨城DC)」を開催する。それに先立ち、2022年10月1日から「茨城プレDC」、2024年秋に「茨城アフターDC」を開催する。
 「体験王国いばらき」をキャッチコピーに、全国に誇るアウトドアや食、新たな旅のスタイルをテーマとし、地域性を活かした野菜の収穫体験など、各市町村等の魅力が詰まった100を超える企画やイベントが用意されている。
 デスティネーションキャンペーン(DC)とは、JRグループ6社(JR北海道・JR東日本・JR東海・JR西日本・JR四国・JR九州)と地域(県・市町村・地元観光事業者等)が一体となって行う国内最大規模の観光キャンペーン。
 観光需要を喚起する政府の「全国旅行支援」が11日からスタート。東京からアクセスも良く、小旅行にも最適な茨城県には熱視線が注がれている。
 野菜や果物の生産が盛んな茨城県でも「荒廃農地」が増えていたが、近年は行政のバックアップもあってさつまいもの生産が大幅に増加。2016年~2020年までに3652haの荒廃農地再生に成功した。重量野菜である大根や白菜の生産はやや減少傾向にあるものの、漬物産業と表裏一体である農業の復活は明るい材料だ。
 環境や立地に恵まれた茨城県の魅力を特集した。
【2022(令和4)年10月11日第5108号1、5・6面】

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<秋冬商材特集> コメの発酵食品が健康に寄与

料理素材の需要高まる「酒粕」
甘酒飲用で免疫力アップ
 秋冬商材の代表格である「米こうじ」、「甘酒」、「酒粕」。これらに共通しているのはいずれもコメを原料とした発酵食品であること。ここ数年はそれぞれの健康機能性が注目され、その度にブームを巻き起こしてきた。
 ブームは時間の経過とともに落ち着いてきているが、いずれの商品も売場に定着して根強く支持されている。
 新型コロナウイルスの感染拡大は第7波のピークが過ぎ、新規感染者は減少傾向となっているが、健康を意識する人は着実に増えており、優れた健康機能性を有する発酵食品の認知度や関心度は以前にも増して高まっている。
 米こうじは2011年に大ヒットした「塩こうじ」、2016年から需要が急増した「甘酒」、2018年に話題を呼んだ「こうじ水」に欠かせない素材で、発酵の力によって健康効果を高め、一般消費者にもその健康機能性が広く浸透。砂糖不使用で甘いあんこを作ることができる「発酵あんこ」が話題となった2020年をピークに米こうじの需要はゆるやかに減少しているが、引き続き幅広い用途で使用され、マストアイテムとなっている。
 米こうじ由来の甘酒は、米の自然な甘さとノンアルコールが特徴で、女性や子供からの人気が高い。果実の味やフレーバーなど、ラインナップも広がりを見せている。
 栄養価も高く、オリゴ糖やアミノ酸、ビタミンB群など350種類以上の栄養成分が含まれており、江戸時代には夏バテ予防として飲まれていた。また、腸内で甘酒を食べた善玉菌がパワーアップし、腸内環境を整えて免疫力を高める効果もある。
 同じくこうじ菌の働きによって作られる日本酒の副産物が酒粕だ。酒粕には食物繊維やタンパク質のほか酵素や酵母による分解作用で様々な健康成分が生み出される。
 その一つが、血流を改善するアルギニンであり、酒粕には体を温める効果があると示されている。酒粕をたっぷりと溶かした粕汁や甘酒が冬の風物詩であるのは合理的といえる。この他にも肥満防止や腸活の効果も期待される。食欲が増すこの季節、ぜひ摂りたい栄養素だ。
 また日本酒由来の豊かな香りやコクを生かして料理素材としての利用も広まってきている。三大酒処と言われる伏見、灘、西条では酒粕を用いた料理を提供する店が数多くある。伏見の老舗酒造・玉乃光は今年4月に「純米酒粕玉乃光」を京都市内のオフィス街にオープンした。酒粕加工業者においても料理素材の需要は高まっていくとの認識が広まっており、ペースト状で使いやすい商品が続々と誕生してきている。
 これら米こうじ、甘酒、酒粕の原料は全てコメ。コメはほぼ100%が国内生産であり、その消費拡大は日本の農業へ活力を与えることにもなる。
 コメ自体の栄養も見逃せない。東洋ライス(和歌山県)の発表によれば、コメには特有の未知の成分が少なくとも5つ含まれていることが判明した(詳細6面)。その多くは精米時に剥脱される糠部分に含まれるため玄米の摂取が効率は良いとされるが、ぬか漬としての摂取でも同様の効果が期待できる。ぬか漬のハイシーズンは夏のイメージが強いが、白菜や、大根、蕪など秋冬野菜にもよく合う。各社から発売されているたくあん漬の素でも、多くは米糠を使用している。
 また、これから旬を迎えるのが大根をこうじで漬けた「べったら漬」。10月19日と20日に日本橋大伝馬町の宝田恵比寿神社とその周辺で「東京日本橋べったら市」が3年ぶりに開催される。多くの人で賑わい、秋冬商材の需要喚起の起爆剤として期待されている。
【2022年(令和4)年10月1日第5107号1、4~7面】

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<高菜特集> 春不作で秋作割増し

漬込まれる高菜(写真提供:中園久太郎商店)
現状把握のアンケート実施
 九州を代表する特産漬物「高菜漬」。この2年半は、コロナウイルスのため外食向けの業務用や、観光地でのお土産需要が大きな打撃を受けた。
 その一方、内食需要は継続しており、生協やスーパー向け商材は堅調。また、首都圏でもコンビニ向けのおにぎりや、冷凍食品(炒飯、ピラフ、おにぎり)での採用が増えてきており、高菜の需要は底堅いと言える。
 一方で、農家の高齢化による原料減少の懸念は、数年前から継続している。今期はさらに外国人実習生がコロナの影響で来日できない状況から、人手不足も深刻化しているのが現状だ。
 このような状況下、食料新聞では高菜漬メーカーに対するアンケート調査を実施した。
 コロナによる販売動向の質問では、業務用とともにお土産需要の落ち込みが目立った。その一方で、量販店向け、個人向け通販などの販売拡大策も着実に成果が上がっている。
 高菜栽培農家の現状、将来的な予測と対策については、今期の春作高菜が不作だったため、秋作での調達を1・5倍ほどに割り増しするという回答が複数社から見られた。
 高齢化による農家の減少には歯止めがかかっていないが、新規の農業法人等の開拓、買取価格を上げて新規生産者の確保等に積極的な姿勢もうかがえた。(アンケートの全回答は5面)。
 高菜漬は漬物の中でも油炒めやチャーハン、パスタなど料理素材としての利用度が高い商材。各社とも、WebやSNSで積極的にレシピ提案し、その魅力発信に努めている。
 今後は、アフターコロナで回復が見込まれる業務用需要に対応できるだけの原料の確保と、人手不足に対応した漬け込み・製造の効率化なども課題である。高菜漬メーカー各社の動向を特集した。
【2022(令和4)年9月21日第5106号1、3~5面】

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<酢漬特集> 酢漬は堅調な売れ行き

収穫されたタイの生姜
洗い楽京の選別作業(JA鳥取いなば)
優れた健康機能性が魅力
 巣ごもり需要が落ち着き、消費動向がコロナ前(2019年比)の水準に戻りつつある中、生姜漬はコロナ前の水準を5~10%上回っており、堅調な売れ行きを見せている。
 中でも新生姜は幅広いメニューの素材や付け合わせとして活躍の場が広がっており、家飲みのおつまみとしても支持されている。売場も漬物だけでなく、惣菜売場にも定着し、販路は着実に拡大している。
 紅生姜もお好み焼きやたこやき、焼きそばの付け合わせとして定番となっており、国産、海外産、みじん切り、大容量タイプ、食べ切りタイプと充実した品揃えで多様なニーズに対応している。
 海外産楽京は大手メーカーが4月に行った量目調整以降、売れ行きはやや苦戦。コロナ前との比較でも微減となっている。10月には価格改定が実施される見通しで、需要の維持が課題となっている。国産楽京は主要産地が不作となったこともあり、在庫はタイトな状況となっている。今年は限られた原料を大事に販売していく1年となりそうだ。
 生姜に含まれる「ジンゲロール」、加熱すると発生する「ショウガオール」には、血糖値上昇の抑制、動脈硬化予防などの働きがある。
 楽京は野菜の中でも最も多くの水溶性食物繊維を含み、腸内環境改善効果が期待できる。
 ウィズコロナの現状でも高い水準で維持されている健康志向。漬物の中でも優れた健康機能性を有する酢漬の魅力を特集した。
【2022(令和4)年9月11日第5105号3~5、10面】

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<食品関連資材・機器企業特集> 高まる安全安心意識 『FOOD展2022』で情報発信

昨年開催された「FOOD展2021」
近年、食品業界を取り巻く環境が大きく変化している。
コロナ禍により消費者の安全安心意識はこれまで以上に高まりを見せると共に、HACCPの義務化、食品表示法の改正など、食品加工業者にはより高度な対応が求められている。
また、SDGsへの取組が重視される中、食品ロスやプラスチック廃棄物の削減は、食品業界にとって避けて通れない課題となっており、その実現のため、食品関連資材機器の果たす役割はこれまで以上に大きくなっている。
9月28日~30日には『FOOD展2022』が東京ビッグサイトで開催される。同展示会は「フードセーフティジャパン」(主催:食品産業センター、日本食品衛生協会)、「フードシステムソリューション」(主催:フードシステムソリューション実行委員会)、「フードファクトリー」(主催:食品産業センター、日本食品衛生協会) 、「フードディストリビューション」(主催:日本加工食品卸協会、食品産業センター)、「惣菜・デリカJAPAN」(主催:惣菜・デリカJAPAN組織委員会)といった5つの展示会が同時開催となる食の複合展示会。
食品製造、大量調理、衛生管理、工場設備、物流など食に関わる様々なジャンルで最新の情報を発信する。
「フードセーフティジャパン」は食の安全・安心に繋がる機器・衛生資材が集う専門展示会。食品衛生・品質管理の最新トレンドをおさえた各種セミナーも開催予定となっている。
「フードシステムソリューション」は給食・大量調理現場における設備・機器・資材、「フードファクトリー」は食品工場の設備改善・エンジニアリングに関わる設備・機器、「フードディストリビューション」は食品物流の物流設備・機器・部品・システム・物流サービスが集う専門展示会になっている。
また「惣菜・デリカJAPAN」は、中食・惣菜製造に特化した専門展示会。惣菜製造現場の人手不足解消や生産性向上をテーマとした専門セミナーも盛りだくさんで、日本惣菜協会が国家プロジェクトとして進めるAI・ロボット導入による惣菜製造の自動化についての特別セミナーも実施される予定だ。
【2022(令和4)年9月11日第5105号7~9面】


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<鹿児島特集> 漬物の料理素材化進む

山川漬のかき揚げ(写真提供:中園久太郎商店)
 鹿児島県は、漬物業界において干し沢庵、生漬(塩押し)沢庵、高菜漬の一大生産地として全国トップクラスの生産量を誇る。また、県のふるさと認証食品である「山川漬」は、鹿児島県工業技術センターの研究により、長期熟成する秘密が明らかとなった。
今回の特集に合わせて、鹿児島県内食品メーカーにアンケートを行った。新型コロナウイルスの影響では、業務用やお土産用が大幅減となったが、量販店向けは堅調な動きだった。一方、沢庵(干し・塩押し)や高菜の原料動向としては、農家の高齢化や減少による厳しい状況が示された。
ご飯のお供としての存在感があった漬物も、昨今はコメの消費減退で厳しさが増している反面、おつまみや料理素材としての価値が見直され、SNSでの情報発信も活発だ。
なお、電子版「九州うまかモン」登録企業はQRコードを表示している。(菰田隆行)
【2022(令和4)年9月1日第5104号1、4~5面】

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<霞ヶ浦北浦特集> 全国唯一の「ナツワカ」 水産資源の伝統と価値を守る

霞ヶ浦北浦特産の夏のワカサギ“ナツワカ”
 霞ヶ浦北浦では今年も7月21日に、ワカサギ漁が解禁となった。
 夏のワカサギ漁は全国でも霞ヶ浦だけのもので、茨城県では夏のワカサギを“ナツワカ”と称してPRしている。ナツワカは一般的なワカサギより脂乗りが良くDHAやEPAといった不飽和脂肪酸を多く含むことで知られる。コロナ禍により消費者の健康志向が高まる中、ワカサギの健康機能性にも注目が集まっている。
 霞ヶ浦漁業協同組合では2020年より産地直送通販サイト「ポケットマルシェ」において期間限定でナツワカを販売。今年も『オンラインわかさぎ解禁市』として、7月21日~8月31日までネット販売を行っている。https://poke-m.com/producers/51696
 霞ヶ浦北浦はワカサギ、川エビ、シラウオなど小魚原料の宝庫だが、ここ数年はやや不漁傾向が続いている。また、新型コロナウイルスの影響でギフト商品の動きが低迷するなど、同地の水産加工業は大きな岐路に立っている。
 その中で各社は、原料調達地の拡充や新機軸の商品開発など、変化に対応する方策を取っている。全国的にも小魚原料が不漁となる中、霞ヶ浦北浦の貴重な水産資源の伝統と価値を守るために取り組む各社を特集した。(霞ヶ浦北浦特集特別取材班)
【2022(令和4)年8月21日第5103号1、4~5面】

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<中華・オススメ商材特集>

 コロナ禍の巣ごもり消費により、伸長しているカテゴリーの一つが中華商材だ。直近では新型コロナ第7波の到来により、再び内食、中食需要は高まりを見せている。ラーメンに限らず、チャーハンやギョウザ、夏場を迎え、冷やし中華やつけ麺にも人気が集まる。こうした中華料理の付け合せとして欠かせないのがメンマやザーサイ、高菜といった漬物類。コリコリ、シャキシャキとした食感が中華の味わいを引き立てる。そのままおかずやおつまみとして、また料理素材としても活躍するオススメの中華商材を紹介する。
【2022(令和4)年8月21日第5103号8面】

<新潟特集> 個性豊かな特産品を全国に発信 地産他消で地域活性化

 日本一の米産地で、清酒産地としても知られる新潟県の漬物出荷額(2019年工業統計調査)は、130億4600万円で全国8位。漬物の事業所数は51で和歌山、長野、埼玉に次いで全国4位の多さを誇る。
 みずみずしく、肌が白くてきめの細やかな大根を原料とした沢庵漬、山の幸と海の幸が融合した山海漬や海産珍味(野沢菜昆布、数の子松前漬、数の子はりはりなど)、名産の越後みそを使用した味噌漬など、地域に根付いた特産品を全国に発信している。
 種類の豊富さは自然豊かな新潟ならではの特徴で、伝統の技術と生産力を活かして付加価値の高い商品を供給。その流れはまさに地産他消で、地域の活性化にもつながっている。
 今年は3月にまん延防止等重点措置が解除され、巣ごもり消費は一服していたが、7月から新型コロナウイルスの感染者が増加に転じ、第7波が到来。感染拡大に歯止めがかからず、巣ごもり消費が再び増加する見通しで、内食や家飲み需要も増えていくことが予想されている。
 ご飯のお供や酒の肴として、すでに実績のある新潟の名産品だが、リベンジ消費やプチ贅沢といった新たなニーズに対応できるだけの個性とポテンシャルを持っている他、地域の産品を取り寄せて自宅で楽しむ疑似旅行のアイテムとしても関心を寄せられている。
 昨年9月、新潟県漬物工業協同組合青年部は、第39回全日本漬物協同組合連合会青年部会全国大会新潟大会を開催。Web形式で実施された同大会の懇親会では、新潟の地酒や酒の肴等が参加者に事前に送付され、新潟にいなくても新潟の酒と食を全国の仲間とともに楽しんだ。
 個性豊かで魅力溢れる新潟の“食”を提供する企業を特集した。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年8月11日第5102号1、16・17面】

<長野特集>特産漬物の雄「野沢菜漬」 “価格”から“価値”へ転換

今年行われた「善光寺御開帳」
 長野県では今年、7年に一度の「善光寺御開帳」が行われ、4月3日~6月29日の期間中に636万人(善光寺発表の速報値)の参拝者が訪れた。前回2015年の参拝者が707万人であったので、前回の約9割の参拝者が訪れたことになる。
 コロナ禍により大きな打撃を受けている県内の観光産業にとって一筋の光明となったことは確かだ。だが、同じく7年に一度行われる諏訪地方の御柱祭はメインイベントである「木落し」が中止になったこともあり、来場者数は前回2016年(186万人)の約1割にとどまるなど、県内エリアによって観光産業の回復度合いには濃淡があり、コロナ第七波到来により、先行き不透明な状況が続いている。
 県を代表する漬物として知られる野沢菜漬は、近年、各事業者の新商品開発が活発化し、新たな商品が次々と生まれている。
 昨年4月に開催された「漬物グランプリ2021」において全国一の漬物に輝いたのは野沢菜を燻製にした「クラシックスモーク野沢菜」(竹内農産)で、お酒のおつまみとしての野沢菜の美味しさや可能性を全国に知らしめた。
 さらに、野沢菜キムチや、市田柿の柿皮を添えた野沢菜漬など新しい味わいを追求した製品、野沢菜油炒めや、野沢菜を塩漬けにせず調味漬けにした「きりづけ」など郷土食として親しまれてきた野沢菜製品も発売され人気を集めている。
 足元で事業者を苦しめているのが製造コストの上昇だ。燃料費、調味料、包材などの上昇に加え、肥料高による野沢菜原料の上昇、冬場にかけて徳島から原料を長距離輸送する物流費の上昇も事業者に重くのしかかっている。
 各事業者では順次値上げを進めているが、コストアップ分を吸収するには至っておらず、早急な対応が求められている。
 野沢菜漬は、その美味しさゆえに、地域特産品から全国の食卓へ消費が拡大した「特産漬物の雄」と言える漬物だ。その魅力を改めて商品に織り込み、〝価格”から〝価値〟へ訴求点を転換していくことが求められている。
 なお食料新聞では、県内の食品メーカーを対象に匿名でアンケート調査を実施した。コロナ禍の影響や原料状況、値上げ状況などについて主な回答を掲載している。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年8月1日第5101号1,11~15面】

<梅特集>暑さ追い風に売場をけん引 期待される4つのポイント

天日干しされる紀州南高梅(和歌山県日高郡みなべ町、7月7日撮影)
 各梅産地の今年の作柄や在庫状況には大きな差があるものの、日本一の梅産地で梅干し売場の主力商品となっている紀州南高梅は売れる環境や条件が例年以上に揃っている。夏本番を迎えている漬物売場をけん引する存在として、大きな期待を寄せられている。
 【①安定した原料状況】
 今年の紀州梅産地の作柄は平年作から平年作以上と見られ、漬け込みに使用される塩の出荷量は1万1080tと平年の1万tを上回った。豊作となった昨年産の在庫にも余裕があり、青梅価格が落ち着いた今年の原料と合わせれば商品の供給には全く支障がない状況だ。
 【②記録的な猛暑】
 夏商材の代表格とも言える梅干しは、熱中症対策のアイテムとして広く知られるようになり、気温が上がれば上がるほど需要が増加する。今年は6月下旬に異例の早さでの梅雨明けとなり、7月1日には全国6地点で気温40度以上を観測するなど、記録的な猛暑となった。例年より早い梅雨明けとなった2018年は、梅干しの需要が大幅に増加した年で、現在の気象状況が4年前と酷似していることから、今年も暑さが長引く夏になることが予想されている。
 【③梅の健康機能性】
 和歌山県田辺市とJA紀南で構成する紀州田辺うめ振興協議会は3月18日、梅に含まれる「梅ポリフェノール」が新型コロナウイルスに対して阻害効果を持つことが明らかになったことを発表した。
 また、東海大学医学部の研究グループは6月1日、「梅干の果肉から抽出した成分が新型コロナウイルスの増殖を抑制する」研究成果を発表。研究グループのリーダーで、大阪河﨑リハビリテーション大学の宇都宮洋才教授は、「個人的には驚異的とも呼べる感染抑制が見られた。梅干しを1日1粒食べるだけで、十分感染予防が期待できる」と語っている。
 発表された2つの研究成果は、ともにコロナ感染者が減少傾向にあったタイミングだったこともあり、大きな話題にならなかった。だが、6月下旬頃から新規感染者が増加に転じ、7月に入ると感染拡大の第7波が顕著になってきている。そのため、コロナに関連する報道が増えており、少し前の情報が掘り起こされ、コロナ予防が期待される梅干しに熱視線が注がれる可能性もある。
 【④漬物売場の主力商品として期待】
 原料状況、季節性、直近の売れ行きや今後の見通しなど、総合的に考えると現在、漬物売場をけん引できる品目は見当たらない。漬物も様々な品目が秋冬の棚替えから値上げになることもあり、秋以降はさらなる苦戦が予想されている。
 だが、紀州産の梅干しは青梅価格が昨年より下がったものの、主要メーカーは上昇する製造コストを自助努力で吸収する形で製品価格を維持する見通し。円安の影響が大きい中国産の他、国内でも雹害が発生した群馬や不作となった産地の梅は値上げとなる見込みだが、主力商品である紀州南高梅は価格の変動がないため、消費者が相対的に「お買い得感」を感じる可能性もある。
 猛暑となった6月下旬以降、梅干しの需要は大幅に増加。和歌山のメーカーでは想定以上の注文で残業を余儀なくされ、供給しきれない事例も出てきている。7月に入ると台風や線状降水帯の発生で気温の上昇は抑えられているが、今年は例年以上に暑くなり、残暑も厳しくなると予想されている。
 ここ2年は冷夏や長雨で夏の需要が振るわなかったが、暑さを追い風とする梅干しの〝攻勢〟がいま、始まろうとしている。
 なお、食料新聞では減塩梅干し製品や製品価格などに関するアンケート調査を実施。収穫量の減少に伴い価格が上昇している小梅については、9月~10月にかけて値上げが実施される見通しだ。
【2022(令和4)年7月21日第5100号1・2~10・15面】

<塩特集>食と健康の根幹なす塩 燃料など高騰で価格改定へ

 熱中症対策のアイテムとして、年々重要性が認識されるようになってきた塩。気象庁によれば、直近30年間の猛暑日(日最高気温が35℃以上)は、100年前と比べ3・3倍に増加している。
 塩は汗とともに流れ出る。水分だけを摂ると、体は塩分濃度を保とうとますます汗や尿を出す(自発的脱水)。塩を一緒に摂ることが、熱中症予防には必要不可欠だ。
 塩は人間の健康の源であると同時に「食」の根幹も為している。調味料としてはもちろん、防腐作用や脱水作用など様々な効果を持ちあらゆる食品作りで代替の利かない役割を持っている。
 必需品である塩は、かつて国家による専売制度が取られてきた。自由化が進められた後も「物価の優等生」として人々の生活を支えてきた。
 日本の塩は高度な技術によって異物や汚染が極めて少ない。また結晶の大きさや、海のミネラルが含まれた藻塩、様々な味付けがされたフレーバー塩などがある。
 各社・団体がPRを重ねてきた結果、その繊細な差異を使い分ける消費者も増えてきている。
 そんな必需品である塩だが、今年は値上げの波が押し寄せている。昨年末、国内製塩大手4社が値上げを発表し、今年初頭から春にかけて実施した。輸入塩でも複数社が値上げを実施。来年1月には原料塩商社との契約更新が控えており、本格的な値上がりはこれから起こることが確実視されている。
 価格改定の背景は、石炭や重油等の燃料費や海上輸送費の高騰、円安、包装資材等など、あらゆる工程でのコストアップ。7面掲載の図表の通り、これらの価格はかつてない水準まで上昇している。
 低単価高重量である塩にとって、これらのコストが製品価格に影響する度合いは大きい。
 今回の「塩特集」では各社・団体こだわりの塩や塩関連製品を紹介するとともに、塩の啓蒙活動や価格改定の動きなどについて取材した。(大阪支社・小林悟空)
【2022(令和4)年7月21日第5100号1・12~14面】

<滋賀特集> 琵琶湖が育む「近江伝統野菜」や「琵琶湖八珍」

湖西から見下ろす琵琶湖
 湖で日本一の面積を誇る琵琶湖。食文化を含め、滋賀県の文化は常に琵琶湖と密接に関わっている。7月1日は「びわ湖の日」である。これは水質変化を危ぶまれた1980年に「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」が施行され、その施行1周年を記念して「びわ湖の日」となったものである。この活動が功を奏し、琵琶湖は今も様々な農水産物を育くんでいる。近年はSDGsの重要性が強調されるようになってきているが「びわ湖の日」はそれを実証し続けていると言えるだろう。琵琶湖に棲む魚は約80種類とされる。中でも代表的な魚は「琵琶湖八珍」(ビワマス、ニゴロブナ、ホンモロコ、イサザ、ゴリ、コアユ、スジエビ、ハス)と呼ばれ、古くから鮒ずしや佃煮などで愛されてきた。また琵琶湖は水源として周辺の土壌を肥沃なものとし19種類の「近江伝統野菜」や様々な作物が栽培されている。また滋賀県は全国トップレベルの長寿県であり(男性全国1位、女性4位)、県では郷土料理である鮒寿司、漬物、味噌、醤油、地酒等の食文化に注目。「発酵からつながる滋賀プラットフォーム」を構成し、産業支援を図ってきた(今年2月末で終了)。昨年12月には長浜市に発酵文化をテーマとした商業施設「湖のスコーレ」も誕生。発信力を高めている。今回の特集でも、滋賀ならではの素材、食文化を取り込んだユニークな商品が揃う。
(小林悟空)
【2022(令和4)年7月11日第5099号4、5面】

<愛知特集> 「ものづくり県」の実力を証明

食育など多角的な取組も
 愛知県は全国1位の製造品出荷額等をはじめ、食料品製造業や農業産出額も日本トップクラスで、工業、商業、農林水産業のバランスが取れた「ものづくり県」として知られている。
 4月に開催された漬物グランプリ2022(主催:全日本漬物協同組合連合会)では、株式会社若菜の「真鯛のミルフィーユ」がグランプリを受賞した他、株式会社扶桑守口食品の「生姜の風味香る愛知の伝統野菜ふりかけ奈良漬」が準グランプリ、三井食品工業株式会社の「かりもり味噌漬」、東海漬物株式会社の「どん辛」、株式会社香味小夜子の「まるごとオクラと枝豆」が金賞を受賞。1県で5商品の金賞以上受賞は最多で、「ものづくり県」としての魅力と実力が見事に証明された。
 食育にも力を入れている。公益社団法人愛知県漬物協会(山田謹一会長)は青年会を中心とし、6月18・19日に開催された第17回食育推進全国大会inあいちで漬物をPR(詳細は2面掲載)。その他、東海漬物では、学生や一般の方を対象にぬか漬教室やぬか漬講座を開催(詳細は2面掲載)している。地域性を生かしながら多角的な取組で漬物市場の拡大に貢献する愛知県の企業にスポットを当てた。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年7月1日第5098号1、4・5面】

<奈良漬特集> 発酵訴求や新素材開拓盛んに

何度も漬け替えて熟成した白瓜
観光回復と猛暑で注文増
 ようやく観光需要が回復し始め、奈良漬の販売回復にも期待がかかっている。奈良漬メーカーには予約注文が増えており、製造現場は慌ただしい日々が続く。
 奈良漬は酒粕に幾度も漬け替え、長い熟成期間を経て作られる。その歴史は古く、約1300年前、奈良時代の木簡に「加須津毛(かすづけ)」と記載があったところまで遡ることができる。
 美しい琥珀色や酒粕由来の芳醇な香りは「大人の味」の代名詞的存在である。また歴史の重みを感じさせるような手間暇が掛かる製法ゆえに高級漬物の一つでもあり、ギフトや土産としてよく利用されてきた。
 コロナ下の2年間は、ギフト需要は堅調であったものの、観光土産としての販売は激減。それだけに、屋外ではマスク不要が政府見解とされるなど、観光の復活とともに奈良漬の販売回復にも期待がかかる。
 日本一の白瓜産地である徳島県では収穫のピークを迎える。今年は作付けが大幅に増加し、生育状況も順調だ。直近2年間はコロナによる需要減への不安から減反していたところへ天候不順による不作が重なり在庫が不足気味となっていたため、今年は生産農家の意欲も高まり例年以上の作付けとなっている。
 また愛知県漬物協会では毎年12月に、守口大根の母本選抜を実施しているが、色や形、大きさなどを評価基準としている。生産農家と加工者が意見を交わすことで、漬物に適した形質の維持へ貢献している。
 さらに中元、歳暮と並んで奈良漬販売の販売ピークを作っているのが土用丑の日、うなぎの付け合せとしての需要だ。今年は7月23日と8月4日の二回ある。うなぎの価格は昨年より高いものの、6月下旬から猛暑が始まっているため暑気払いのニーズは高く、うなぎ商戦の活性化が見込まれている。
 量販店の奈良漬売場はあっさりタイプや、スライス済みのもの、酒粕ごと食べられる刻み奈良漬などが主流になりつつあるが、夏場は一舟入の販売が増え、中には樽を用意してディスプレーする店舗も見られる。
 中外食でもうなぎメニューを取り入れるところは増えており、奈良漬の伸びしろもまだまだありそうだ。
 観光の回復やうなぎの付け合せとしての需要だけでなく、奈良漬自体の魅力を発信しようとする動きも、メーカー各社で見られる。
 全日本漬物協同組合連合会(野﨑伸一会長)が認定する「発酵床熟成漬物」の第一号に、白雪食品(兵庫県)の「白雪奈良漬白瓜」が認定。その後胡瓜、西瓜、守口大根、にんにくでも認定された。また同じく全漬連の「漬物グランプリ2022」では扶桑守口食品(愛知県)の「生姜の風味香る愛知の伝統野菜ふりかけ奈良漬」が準グランプリ、新六本店(埼玉県)の「茗荷の奈良漬」が銀賞を受賞。新たな素材や食シーンの開拓が高く評価されている。
 この他にも「奈良漬バターサンド」といったスイーツ利用や、クリームチーズと組み合わせたおつまみ提案なども積極的に行われている。いずれも奈良漬の美しさや甘みの味わい、食感が生かされているのに加え、老舗漬物店の挑戦という点も加わり、メディアで取り上げられる機会が増えているようだ。
 栄養面でも優れている。奈良漬の漬け床である酒粕には、米やこうじ、酵母由来のアミノ酸、ペプチド、ビタミンなどの栄養素が豊富だ。コレステロールの排出などの機能性で注目されるレジスタントプロテインも含まれており、生活習慣病改善への関与も示唆されている。
 今回の特集では、今後の奈良漬業界を牽引するバラエティに富んだ商品や取組を紹介する。
(大阪支社・小林悟空)
【2022(令和4)年7月1日第5098号1、6・7面】

注目度満点 <山陰特集>

らっきょうは雨不足で不作に
 鳥取を代表する名産品であるらっきょうが、今年は小粒傾向となり、不作となった。4~5月の雨不足で玉太りが進まなかったことが原因だった。県内最大産地である鳥取県東部を管轄するJA鳥取いなばは「昨年から2割減。あと少し雨が降ってくれれば結果は真逆だった」と肩を落とす。作柄とは裏腹に鳥取産らっきょうの需要は旺盛。生鮮品としての出荷が多かった分、加工用の確保が課題となっている。同JAや県内加工メーカーでは値上げの機運も高まっている。島根県では日本一の漁獲を誇る宍道湖産シジミや、日本海の海産物を活かした商品開発が盛んだ。シジミも中国での禁漁や青森県での不漁があり、宍道湖産へ需要が集中しつつあるため品質や資源量の維持が必須となっている。らっきょうも水産物も、貴重な地域資源を扱うキーワードとなっているのが付加価値の向上。美味しく、地域性のある商品開発が求められている。
(小林悟空)
【2022(令和4)年6月26日第5097号6~7面】

原料王国 <徳島特集>

日本一の白瓜産地 コロナ落ち着き作付増加
 有数の野菜産地として、日本全国の食産業を支える徳島県。漬物やカット野菜向けの原料野菜も豊富で、夏は白瓜、胡瓜、茄子などが盛んだ。特に白瓜の生産では数十年にわたって日本一に君臨しており、この良質な原料を用いた漬物を各社が製造している。全国の漬物メーカーへ供給を行う「縁の下の力持ち」的な一面も持っている。今年はこれら原料野菜の作付けが増え、6月に入ってから程よい涼しさと雨量で順調な生育状況となっている。昨年はコロナによる需要減を見込み作付を減らす生産農家もあったところへ天候不順による不作が重なり、原料不安を抱えているため、今年の作柄には期待がかかっている。懸念点は肥料や燃料の値上がりで、農業コストは上昇。組合各社は契約栽培価格を引き上げるなど対応に追われており、一次加工原料の供給にも影響していきそうだ。一方で昨今の円安や海上輸送費の高騰で国産原料に目を向ける漬物・惣菜メーカーは増えている。原料産地としての徳島の重要度がますます高まっている。
(小林悟空)
【2022(令和4)年6月26日第5097号8面】

<酢漬特集> 健康機能性の価値を訴求

収穫された鳥取県産らっきょう
円安で値上げ機運高まる
 需要期を迎える酢漬への期待感が高まっている。
 気象庁は6日、関東甲信地方で梅雨入りしたと発表。前年(2021年)より8日早く、平年より1日早い梅雨入りとなった。
 梅雨明けは7月中旬と見られ、梅雨明け後は平年以上の暑さになると予想されている。酢漬の売れ行きは気温の上昇に比例するため、売場も熱くなることが期待されている。
 2020年はコロナの影響で巣ごもり需要が大幅に増加し、酢漬製品の売れ行きも大きく伸長。2021年は前年の流れが続き、平年比ではプラスとなった。
 今年に入るとコロナの感染者が減少。「まん延防止等重点措置」が全面解除となった3月22日以降、需要の動きはコロナ前に戻り、内食、中食関連商品の売れ行きは2019年の水準に戻った。
 酢漬も同様だが、小売店における生姜漬の動きは2019年比で10%前後のプラスとなっている。巣ごもり需要の増加で紅生姜を中心に売場が広がり、定着している流れとなっている。
 コロナ禍で高まった健康志向にマッチしたアイテムとして更なる可能性を秘めている。野菜の中で最も多くの水溶性食物繊維を含む楽京は、腸内で乳酸菌のエサとなって善玉菌を増殖させる。
 乳酸菌を摂取する腸活のプラス効果をもたらすことで、免疫力向上や整腸作用が期待できる。ここ数年は家飲みのおつまみとしての需要も増えてきた。
 生姜に含まれる「ジンゲロール」には殺菌作用があるだけではなく、悪玉コレステロール値を下げ、血糖値の上昇を抑える働きがある。また、生姜を加熱すると発生する「ショウガオール」には、傷ついた血管を修復して血流を良くし、動脈硬化を予防する働きがある。酢漬メーカーにおいても機能性表示食品として販売するケースが増えており、健康イメージは高まっている。
 酢漬市場を支える海外原料の動向は、製造コストや物流費の上昇、ウクライナ情勢の影響による海上輸送の混乱、輸入に不利となる円安の進行など、問題や課題が山積している。
 楽京は昨年産の原料価格高騰と製造コストの上昇を受け、今年4月から量目調整を行った。だが、その時は為替が加味されていなかったため、8月~9月を目途に円安分の価格転嫁が行われる見通しだ。
 2019年と2020年の原料価格が上昇するも、コロナの影響で主要な取引先である外食産業が大きなダメージを受けたこともあり、値上げのタイミングがバラバラとなった業務用生姜も為替の影響が大きく、年内に値上げを実施する機運が高まっている。
 酢漬市場を取り巻く環境は厳しさを増しており、適正価格での販売が急務であることに加え、商品の安定供給はより重要なポイントとなってくる。品質の維持、向上もさることながら、「健康」に寄与する素材であるということを再認識し、業界を挙げてその価値を訴求していく必要がある。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年6月11日第5096号1、5~8面】

<わさび関連企業特集>

 わさび関連メーカー各社では、コロナ禍により観光土産や業務用販路の売上が減少する中、新たな取組を進めている。新商品開発では、わさびの可能性を広げるユニークな商品が続々登場。バーベキュースパイスや、アジアンテイストの調味料までその顔ぶれは多彩だ。4月に開催された漬物グランプリでは、田丸屋本店の「かつおのUMAMIわさび」が金賞を受賞。薬味として使用されることが多い「わさび」を、日常的に食卓で楽しんでもらえるようかつおだしをきかせて旨味たっぷりに仕上げた。また、地元食材を使用した商品開発も活発。静岡産わさびの他、浜松産エシャレットや遠州産メロンを使用したキムチも登場している。ようやく感染状況が落ち着き、観光土産や業務用販路に回復の兆しが見えてきた。海外観光客の受け入れも再開される中、わさび関連商品の売上アップに期待がかかる。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年6月11日第5096号9・10面】

<深谷特集> 「野菜のまち」に新名所

深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム
 「野菜のまち」として知られる埼玉県深谷市に5月29日、新名所「深谷テラスヤサイな仲間たちファーム」がオープンする。
 同ファームは、埼玉県深谷市が進めている「花園IC拠点整備プロジェクト」の一環として、キユーピー株式会社(髙宮満社長、東京都渋谷区)が開業する複合型施設。「野菜にときめく、好きになる!みんなの笑顔を育むファーム」をコンセプトに、体験農園やマルシェ、レストランなどが設置される。
 5月29日のオープニングセレモニーには、キユーピーの髙宮社長、深谷市の小島進市長らが出席。地元の子どもたちを招待して「旬のヤサイ引っこ抜き」セレモニーも行われる予定だ。
 深谷市は昨年、NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一の出身地として注目が集まり、渋沢栄一記念館や旧渋沢邸「中の家(なかんち)」といった関連施設が人気の観光スポットとなった。渋沢栄一は2024年より新一万円札の肖像画として描かれることが決まっており、まだまだ渋沢フィーバーは続く。
 多くの漬物メーカーが点在し〝関東一の漬物処〟としても知られる深谷市。漬物、油揚げ、蒟蒻など伝統食メーカーの取組を取材した。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年5月21日第5094号1、4面】

<食品関連資材機器特集> 求められる省力化・省人化

ifia JAPAN 2022の会場
新たな食ビジネスを創出
 原材料価格に加え、原油価格、電気代、物流費、包装資材、調味料など、製造及び供給に関するあらゆるものの価格が上昇し、企業の経営環境は厳しい状況が続いている。また、輸入原料や輸入製品については、円安の影響も大きく、価格転嫁の動きが活発となっている。
 現在、全ての業種に求められているのが省力化・省人化。人手不足という大きな課題も抱える中、機械化を図って労働力を省き、コスト削減を目指す動きが一段と強まっている。
 このような状況下において、安全性、生産の効率化、品質の維持や向上は、より高いレベルで要求されている。そこで注目されるのが時代のニーズに対応しながら進化を続ける食品関連資材機器だ。5月18日~20日に東京ビッグサイトで開催された「第27回ifia JAPAN 2022」(国産食品素材/添加物展・会議)では、食品素材・食品添加物の最先端の情報が発信された他、サスティナビリティやSDGsに関係する機能性素材などが幅広く紹介。2万2697人が来場し、好評を博した。
 また、省人化、自動化、無菌化、ロボットやAI、食の衛生管理など食シーンの多様性に応える最先端の製品・技術・サービスを集結した世界一の食品製造総合展として、「FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)」が6月7日から4日間、東京ビッグサイトで開催される。
 同会場での開催は3年ぶりとなり、出展社数は過去最多の865社。あらゆる角度からの提案で新たな食ビジネスの創出が期待されている。
【2022(令和4)年5月21日第5094号1、5~7面】

<漬物の素・夏の甘酒特集> 優れた健康機能性を訴求

サミット湯島天神南店の漬物の素売場(3月撮影)
ぬか床で食品ロス削減へ
 コロナ禍で健康志向が高まり、キムチ、ヨーグルト、納豆などの需要が大幅に増加した。これらの商品に共通しているのが「発酵食品」であること。発酵食品であるぬか床も同様に需要が増加し、市場も拡大した。
 ここ2年は売れるべくして売れた、と言っても過言ではない環境だった。2020年と2021年は新型コロナウイルスの感染拡大で巣ごもり需要が増加。これまで主婦の利用が多かったがぬか床だが、初心者も含めて若い女性や男性など幅広い世代の利用者が増えた。
 健康志向の高まりも追い風となった。感染の予防効果などが期待される乳酸菌がクローズアップされ、乳酸菌を含む食材や食品、飲料の需要が増加した。ぬか床で野菜などを漬けたぬか漬は直物性乳酸菌をはじめ、ビタミンB群やミネラルなど多くの栄養素を摂取できる発酵食品であることがメディア等を通じて広く紹介され、認知度が向上。全国的に大きな天候の影響がなく、野菜価格が安定していたこともプラスの要因だった。
 家庭で残った野菜をぬか床で漬ければ捨てずに食べられるため、食品ロス削減に貢献できることも魅力だ。食品ロスやSDGsへの関心が高まる中、「ぬか床」は家庭において心強い味方となる。
 今年は2020年、2021年の反動減が見られるが、コロナ前の数字より大幅な上昇を見せており、ぬか床市場の底上げになっている。今後は、利用の継続と新たなぬか床利用者の獲得が課題だ。
 奈良漬をはじめ、わさび漬やからし漬などにも利用される酒粕は、ここ2年間は業務筋への出荷が厳しい環境にあったが、今年は観光業に復調の兆しが見えており、期待が高まる。
 また家庭用では簡便化の波が訪れている。練粕を小容量化したものや、より軟らかくペースト状にした酒粕や吟醸粕をチューブ容器に詰めたものなどが各社から発売されている。粕漬だけでなく粕汁や甘酒作りにも便利だ。
 価値が見直されているぬか、酒粕、漬物の素だが、懸念点となるのが原料の高騰。ぬかは、米の消費減に応じて生産量が減少。また大豆粕など輸入に頼る他の飼料穀物の価格高騰に引っ張られ、ぬかの価格もここ2年間で4割ほど上昇している。
 酒粕も、未だ日本酒の消費量はコロナ以前の水準に戻っていない。特に近年は吟醸酒の人気が高まり、漬物用に適する水分の少ない普通酒の粕は減少の一途を辿っている。その他、塩や糖類、調味料や包材などの値上げも、漬物の素製品の原価に大きく影響。各社では秋口を目途に価格転嫁の動きがありそうだ。
 夏の売場でも定番となっている甘酒は、ブームとなった2016年ほどの勢いはないものの、「飲む点滴」と言われるほど高い栄養価があり、熱中症対策や夏バテ防止のアイテムとして支持されている。濃縮タイプは水などで割って甘酒にする他、調味料としての使用やスイーツの生地に混ぜ込むなど、幅広い用途で利用されている。
 コロナの影響に加え、高齢化社会を迎えている日本において健康志向は高まり続けることが予想される。発酵食品であるぬか床を主軸する漬物の素や甘酒は、優れた健康機能性を訴求できることが大きな強みであり、魅力だ。
 それぞれの素材は市場をさらに拡大するポテンシャルを有しており、これからの展開が注目される。
(千葉友寛、小林悟空)
【2022(令和4)年5月16日第5093増刊号1・4~6面】

<茄子特集> 初夏の彩りで季節感を演出

 漬物売場では初夏の訪れとともに茄子漬のアイテムが拡充。季節感を演出する商材として売場を彩っている。
 姿物を中心に、蓋を開けるだけで食べられる簡便性の高いカップ製品、サラダ感覚で食べられる皮むきのカットタイプやスライスタイプ、他の素材を合わせたミックスタイプ、一口タイプの小茄子など、幅広いアイテムがラインナップされ、多様なニーズに対応している。
 2020年と2021年は巣ごもり消費の増加に伴い、漬物全体の需要も大きく伸長した。2020年の茄子漬は需要期である5月から9月に大幅に需要が増加。2021年は前年の反動減で前年より減少する品目が多い中、茄子漬は通年で見ても前年並みで推移。コロナの影響がなかった2019年の需要期との比較では約20%増となっている。季節商材としての魅力が改めて実証するとともに、消費者に広く支持されていることを示した。
 気象庁の全般暖候期予報(3月~8月)によると、6月から8月の平均気温は、北日本を除き平年並みまたは高い確率がそれぞれ40%となっており、暑い夏になると予想されている。気温の上昇は茄子漬の売れ行きに連動するため、需要期に向けて大きな期待が寄せられている。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年5月16日第5093増刊号1・10面】

<キムチ浅漬特集> 消費動向が大きく変化

価格ではなく価値の訴求を
 3月21日をもって新型コロナウイルス対応の「まん延防止等重点措置」が全面解除され、消費の流れも変化した。
 2020年1月に日本で初のコロナ感染者が確認されて以降、巣ごもり消費が拡大し、内食、中食の需要が増加。感染者は急激な落ち込みにはならないものの、徐々に減少しており、その動きに連動するように人出が増えて外食や外出が盛り返してきている。そのため、3月以降、内食、中食の需要は減少傾向となっている。
 コロナ禍で最も伸長したカテゴリーであるキムチは、乳酸菌を豊富に含む発酵食品の代表格として認知度が高まり、特需的な動きとなった。料理素材として幅広く利用できる汎用性の高さや賞味期限の長さも魅力で、家庭における常備菜としても支持された。
 だが、昨年は一昨年の数字には届かないため、売場では売上確保のため価格競争の様相となっている。それでも、コロナ前の2019年比ではプラスとなっており、裾野は確実に広がっている。消費者の健康志向は今後も高止まりすると見られ、価格ではなく価値の訴求が望まれている。
 旬の野菜で季節感を演出する浅漬売場では、夏野菜の代表格でもある胡瓜と茄子を中心とした売場が形成されている。また、オクラやブロッコリー、いんげんといったサラダ感覚で食べられる新しい素材の商品が定着し、新しい需要を創出している。
 コロナ禍においては、家飲み需要の増加に伴い、「おつまみ」や「食べきり」、簡便性といったニーズにマッチした少量タイプの売れ行きが好調だったが、今後の消費動向は不透明。コロナ感染者の増減で大きく変化する消費ニーズに柔軟に対応していくことが重要となりそうだ。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年5月6日第5092増刊号1~4・10面】

<宮崎特集> 宮崎県伝統食品業界の現状と課題を知るアンケートを実施

間もなく旬を迎えるらっきょう畑
 宮崎県は、全国屈指の農業県だ。きゅうり、ピーマン、ミニトマト等の生産量は全国でもトップクラスを誇る。また、日本一の生産量を誇る干し大根、らっきょうなどを始め、漬物の生産県としても知られる。漬物出荷額は県全体で約82億円(2019年工業統計)あり、全国14位に位置している。
 その漬物製造業も、近年はコロナ禍による売上減少、原料調達、諸経費の高騰による製品値上げ、人員の確保など多くの課題が存在する。本紙ではそれらの課題について、宮崎県内の伝統食品業界にアンケートを実施した。
 コロナ禍により売上減少等の影響を受けた仕向け先としては、業務用、土産用が最も大きく、全体で15%程度の減少。最も影響が大きかった企業は50%以上のダウンも見られた。
 原料の確保については、沢庵用大根など自社栽培で確保する道筋を立てる企業がある一方、農家育成のため値上がりした農薬分を負担したり、良質な大根には報奨金を支払うなどの努力も見られる。らっきょう原料では、契約外での買い付け量が農家には分からないため、作付の時からメーカーと生産者の連携を求める声があった。
 調味料、プラスチックなど石化原料、光熱費等の高騰により製品値上げを実施し、また今年中に実施する企業もある。
 人員確保については、コロナ感染または濃厚接触者での休業、外国人実習生の補充がきかず、労働力不足が継続している。その一方、新卒者の採用や、人件費のアップを抑えるため新規募集を控えるなどの対策を行う企業もあった。
 コロナによる売上減に対しては、新たな販路開拓に取り組む企業も多く、また行政による補助金の積極的な利用も見られ、それぞれの特色を生かすため、困難な時代を乗り切る努力も見られる。それら宮崎県の有力企業を特集した。
(菰田隆行)
【2022(令和4)年5月6日第5092増刊号1、6~7面】

<漬物グランプリ2022特集> 全漬連 金賞以上確定の16品を発表

 全日本漬物協同組合連合会(野﨑伸一会長)は13日、「漬物グランプリ2022」の法人の部において、金賞以上の受賞が確定した16品を発表(別掲)した。全国の名産品、特産品、オリジナリティー溢れるこだわりの漬物が揃い、この16品の中からグランプリ1作品(農林水産大臣賞)、準グランプリ各部門より1作品(農林水産省大臣官房長賞)、地域特産品特別賞(1作品)が選出される。なお、上記3賞以外の12作品は金賞となる。
 各賞の結果は、4月29日に東京ビッグサイトで開催される第15回ホビークッキングフェア2022内で行われる「漬物グランプリ2022」特設ステージでの表彰式にて発表される。
 法人の部は「本漬部門」と「浅漬・キムチ部門」の2部門で、応募総数は106作品。1次審査は3月上旬に全国5ブロックで実施し、通過した本漬部門29品、浅漬・キムチ部門19品の計48品が3月28日に2次審査(決勝審査)として審査された。
 法人の部は東京家政大学院客員教授の宮尾茂雄氏を審査委員長とした6人の審査委員で審査を実施。個人の部では、全漬連の野﨑会長を含めた7人が審査委員を務めた。
 漬物グランプリ2022の2次審査に向けて野﨑会長は、「漬物グランプリを通して漬物の消費拡大に、結び付けたいと考えている。そういった意味では、審査委員の方には市場性も考慮して審査をお願いしたい。味の嗜好や量目、価格帯などをトータルで見ていただき、グランプリを受賞した作品が市場をけん引していくような形になることを望んでいる」とグランプリ作品への期待を語っている。
 審査方法は審査委員による書類・実食による審査。テーブルや椅子のアルコール消毒、手指消毒、検温、マスク着用などの新型コロナウイルス感染予防対策がとられた中、①彩り(見た目・ネーミング・考え方)、②素材の性質(機能性・地域性・時代性)、③味覚(味・香り・食感)、④安全性(生産・製造工程)、⑤販売価格(コストパフォーマンス)の5項目を各10点満点で採点。得点数を集計した後、審査委員による合議を行い、各賞を選出した。
 宮尾審査委員長は、「各社とも機能性や地域性を考慮した漬物を作っていて、時代のニーズに応じた工夫をしていると感じた。皆さんはプロなので、味については甲乙つけがたいものがあったが、関東や中部の漬物が目立っていた印象だ」と審査の感想を語った。
 なお、1次審査通過作品は「銀賞」以上が確定し、受賞ロゴが授与される。また、グランプリ、準グランプリ、地域特産品特別賞、金賞についても、それぞれ受賞ロゴが授与される。
 【法人の部・最終審査審査委員】(敬称略)
 ▼審査委員長:宮尾茂雄▼審査委員:桶谷茂守(有限会社セレンディブ)、原田ひ香(小説家)、松岡寛樹(高崎健康福祉大学)、武藤麻実子(日本食糧新聞社新製品事業部月間食品新製品トレンド編集長)、堺谷徹宏(グルマン・ゴーズ・トゥ・トウキョウ株式会社代表取締役)※個人の部の審査委員は上記の6人に野﨑会長を加えた7人で構成
 ※漬物グランプリ2022特集は電子版及び、「おいしい新聞 食料新聞社Ⓡ」(フェイスブック、インスタグラム、ツイッター)で順次アップしていきます。
【2022(令和4)年4月21日第5091号1、6~10面】

全漬連 HP

<泉州水なす漬特集> 30億円超で成長続く

丸々とした水なす
出だしは寒波と燃料高が影響
 大阪を代表する漬物、泉州水なす漬。水なすの皮は薄く柔らかくアクが少なく、みずみずしい果肉には甘みがあり、生食することもできる。りんごのような甘みを持つため元は「蜜ナス」と呼ばれたとする説さえある。他の茄子では代替できない唯一無二の茄子だ。
 かつてはローカル漬物だった水なす漬だが、いまや全国から引き合いのある存在となり、大阪府漬物事業協同組合(林野雅史理事長)の会員各位は「大阪の宝」と呼ぶほどだ。新型コロナウイルスの流行下でも、水なす漬は家飲み需要を受け好調に動いた。
 大阪府がまとめた「大阪府の農業データ」によれば、平成26年の水なす栽培面積は44haだったのが、令和元年には47haに増加。収穫量は3489tに上る(泉佐野市、岸和田市、貝塚市の合計)。粗生産額は10億円超、漬物加工を含めた総販売額は30億円超と推計される。
 今年の原料動向に目を向けると、鈍い滑り出しとなった。この時期はハウス物が主力となるが、厳しい寒波が続いたこと、そしてハウス内を加温するための燃料が高値となったため原料供給が少なく、価格も1個当たり10円以上高騰したためだ。栽培面積等は前年並であり、気温が上昇してきた現在は正常化しつつある。天候の影響を受けやすく、泉州地域以外の土壌では品質が保てない非常に繊細な素材であることは、販売拡大の障壁になっている。しかしそれゆえに、希少性・地域性が保たれ、地位を向上させた面もあるだろう。
 今回の特集でも、品質にこだわりを持つ泉州水なす漬メーカーを紹介する。
 (大阪支社・小林悟空)
【2022(令和4)年4月21日第5091号1、4・5面】


<調理食品特集> 地域密着で炊き上げる

クルミ甘露煮の製造(東京都大田区の丸安商店)
SDGs推進が若年層開拓の鍵
 佃煮・煮豆・惣菜を始めとした調理食品業界では、コロナ禍の影響により、業務用や土産物ルートが引き続き苦戦を強いられている。一方、量販店向けは堅調で、ご飯のお供として売場で安定した動きを示す。
 足元の課題となっているのが製造コストの上昇だ。原料・包材・燃料費・物流費など様々なコストが高騰し、他の食品業界同様に値上げの動きが広がっている。本紙が4月5日~8日にかけて実施した「値上げ動向」に関するアンケート調査には佃煮煮豆メーカーより30件、惣菜メーカーより29件の回答があった。
 それによると佃煮煮豆メーカーでは37%がすでに値上げを実施、57%がこれから実施する予定と回答。惣菜メーカーでは52%が値上げを実施、48%が実施予定と回答した。惣菜メーカーの値上げ実施率は予定も含めると100%に上った。また市販用の値上げ幅では、佃煮、煮豆が6~9%、惣菜では6~9%と10~14%が最も多かった(アンケート詳細は11面掲載)。調理食品業界では、大手メーカーが6月1日より市販用製品の価格改定を発表しており、これから本格的に値上げの動きが進んでいくとみられる。
 こうした状況下で、各メーカーが力を注ぐのが商品力の向上だ。単に値上げを実施するだけでなく、より価値ある製品づくりを目指し、美味しさや使いやすさの他、減塩や低糖質といった健康性の面でも取組を進めている。また新商品開発も活発で、内食需要に対応したおつまみ製品やスイーツ製品など佃煮煮豆の枠組みを超えた新しい商品が生まれている。
 もう一つの流れが地域密着型の取組だ。コロナ禍により業務用や土産物が苦戦する中、地元消費者へ販売していく重要性が再認識された。直売店の強化や、地域イベントへの参加により、佃煮煮豆ファンを拡大していく地道な取組が求められている。
 元来、佃煮は苦労して獲った魚介類を無駄にしたくないという漁師たちの知恵から生まれた保存食で、フードロスを減らすサステナブルフードの先駆けと言える。地域密着型の取組と共に、こうしたストーリーを発信し、SDGsを推進していくことが、課題となる若年層の開拓にも繋がっていく。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年4月11日第5090号1、4~11、14面】

<栃木特集> 酢漬生産量が日本一

食卓の名脇役を供給
 栃木県は2019年の都道府県別漬物出荷金額で全国3位。1事業所当たりの出荷額も6億3800万円で全国3位。酢漬生産量日本一を誇る漬物生産県として需要を支えている。
 外食産業は人流が戻ってきたことで回復傾向にあり、がりや紅生姜などの業務用も復調してきている。また、テイクアウトの定着でミニパックの需要が増加しており、全体的な生産量は戻りつつある。
 中国国内の電力不足やゼロコロナ政策によるロックダウン、海上輸送に必要なコンテナ不足など、工場の稼働停止や物流などの問題があり、中国製品の輸入は不透明な部分が多くなっている。そのため、安定供給に加えて安心安全を訴求する国内製造の需要が増える流れとなっている。
 小売店向けの商品も冬休み、春休みと長期休暇があったことで、巣ごもり需要が伸長。家庭で簡単にできる粉もんメニューが増加し、紅生姜や新生姜は好調な売れ行きとなっている。
 生姜と楽京は海外産原料を使用した普及品と高付加価値の国産製品ですみ分けされているが、4月から原料原産地表示が完全義務化となり、国産原料や国産製品への切り替えを求める声が増えている。各メーカーでは幅広いアイテムをラインナップし、異なるニーズに対応している。
 寿司や焼きそばなどに欠かせない酢漬を製造する栃木県は、浅漬、茄子漬、唐辛子など、素材や地域性を生かした商品も作っている。食卓の〝名脇役〟を供給する各社の商品と取組を紹介する。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年4月11日号1、12~14面】

<塩特集> 燃料高騰で値上げの年に

製法の理解広め地位向上を
人間の健康を守る必須ミネラルである塩。調味料としてはもちろん、防腐作用や脱水作用など様々な役割を持ちあらゆる食品に利用されてきた。
このように食の根幹を成す塩だが、今年は値上げの年となった。概ね㎏あたり8~10円程、約2割という大幅値上げとなった原因は製造諸コストの上昇、特に燃料の高騰にある。
日本では海水塩が主に利用される。海水は容易に手に入る分、製品価格は製造コストに左右される。海水から塩を取り出すには莫大なエネルギーを要するため、燃料の高騰は痛手となり、各社とも企業努力による吸収は不可能と判断した。
燃料に関し、もう一つ課題となっているのが脱炭素への社会的要請だ。各社、また業界団体では、エネルギー使用量を抑えるだけでなく、発生したCO2を別の物質に変換し活用する方法などが検討されている。どの方法にしても新たな投資は必須であり、その資金確保を見据えた値上げ、という面もある。
政治的要因もあり、燃料相場は今後も不安定になり塩業界にとって厳しい環境となる見通しだが、今回の価格改定を、塩の価値を再発信する機会と捉えることもできる。
日本の塩は高度な技術によって異物や汚染が極めて少ないこと、製法によって味わいや粒度が異なり適する用途が違ってくることなどを理解してもらうことが、価格改定へ理解を得るために必要であり、塩の地位を高めることにも直結していくと言える。
今回の「塩特集」では各社・団体こだわりの塩や塩関連製品を紹介するとともに、塩の啓蒙活動や、脱炭素への取組について紹介する。
【2022(令和4)年3月21日第5088号1、8~11面】


<梅特集> 梅業界に〝神風〟が吹く

個包装で新たな市場を創造
やや低調だった梅干の売れ行きが復調の兆しを見せている。
紀州梅は2019年と2020年が不作となったことで原料価格が上昇し、実質的な値上げを余儀なくされた。そのため、この2年の間に主力商品の量目は140gから120g、110gと減り、量販店などの売場では割高感が出てしまったことで苦戦を強いられた。
さらに、2019年から大きな問題となったのが量販店などで普及品の位置付けとなる低級品の原料価格も大幅に上がったことで、買い求めやすい紀州南高梅の商品が売場からなくなったことも要因とされる。
かつては売れ筋商品で販売量も多かった「つぶれ梅」は売場で見られなくなった。「つぶれ梅」の原料価格が上がり、価格の優位性を打ち出せる商品を供給することができなくなっている。かつては取り合いをしていた低級品の原料だが、現在は購入できるものの高値安定となっていることが大きな課題だ。
梅干の売れ行きは微減傾向だったが、紀州では2021年産の作柄が豊作型になったことで原料の価格、在庫量ともに落ち着き、増量企画や特売などの販促を実施することができるようになった。それらの動きが広がったことで昨年の秋以降、前年同月比で微増傾向が続いている。
メーカーによっても異なるが、全体的な動きを見ると量販店では微増から微減で堅調となっているが、観光土産や業務用は回復しきれておらず、梅干産業としては前年の数字には追い付いていない状況だ。
だが、今の梅業界には〝神風〟のような追い風が吹いている。紀州田辺うめ振興協議会は18日、梅干を製造する時にできる副産物「梅酢」から調製される「梅ポリフェノール(略称‥UP)」が新型コロナウイルスに対して阻害効果を持つことを確認したと発表した。新型コロナウイルス感染症への治療方法や投薬が確立しない中、新たな機能性の科学的なエビデンスが発表されたことで、梅製品への注目度は高まっている。
また、夏の天候にも注目だ。気象庁が2月25日に発表した6月~8月の天気予報によると、暖かい空気に覆われやすいため、北・東・西日本は「平年より高い」としている。今年の夏は例年以上の猛暑が予想され、「熱中症予防には梅干」という意識が高まれば需要が飛躍的に増加する可能性もある。
北京冬季五輪でも梅干が話題となった。カーリング女子ロコ・ソラーレの「もぐもぐタイム」で、中田食品が製造する個包装の梅干が食べられるシーンが大きな注目を集めた。
新型コロナの感染予防や衛生面での利点もある個包装は持ち運びが便利で、国内外問わずいつでもどこでも手軽に梅干を食べることができ、新たな市場の創造が期待される。今回の梅特集では各社の個包装商品を中心に改めて梅の魅力に迫った。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年3月21日第5088号1、2~7面】

<群馬特集> 盛り上がる〝群馬グルメ〟 県内メーカーと組合が食育活動

家庭科用副教材『日本の伝統的な食について』
〝群馬グルメ〟が盛り上がっている。この一カ月だけでも、『マツコの知らない世界~群馬ラーメンの世界~』、『出没!アド街ック天国~群馬高崎~』、『秘密のケンミンSHOW~熱愛けんちん汁の謎に迫る!~』といった人気番組で続々と群馬グルメが紹介されている。
特に『出没!アド街ック天国』では高崎市の魅力をたっぷりと放送。東日本一の梅産地である箕郷梅林・榛名梅林の他、パスタや焼きまんじゅうといった群馬グルメが登場した。
県内の食品メーカーの取組も活発だ。新進とやまうでは漬物業界の活性化や福神漬の消費拡大のため食育活動で連携。小学校5・6年生向けの家庭科用副教材『日本の伝統的な食について』を共同制作し、群馬県と東京都の小学校約83校に1万部程度を配布した。
また群馬県漬物工業協同組合(武井均理事長)でもこの度、漬物文化の訴求や食育を目的としたPR動画を作成。作成した動画は3月下旬に組合ホームページにアップされる他、ユーチューブでの配信も予定しており、若い世代への漬物PRにも繋げていく。
全国2位の生産量を誇る〝群馬の梅〟の人気も上昇中だ。昨年、高崎市の名店がパスタの味を競い合う大会「キングオブパスタ2021」にて、カリカリ梅を使用したクリームパスタを出品したイタリア料理店「カーロ」が優勝。さらには、カリカリ梅をタルタルソースに使用した竜田バーガーがハンバーガーチェーン『ファーストキッチン』から3月中旬より期間限定で発売されるなど、料理素材としてのカリカリ梅の使用が増加している。
群馬県の梅メーカー5社で組織する「うめのわ」では1月22~23日に県内で開催された「第5回全国ウメ生産者女性サミット2022」に参加。シンポジウムでは県内の梅生産者と群馬の梅のブランド化などについて貴重な意見交換が行われた。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年3月11日第5087号1・6~8面】


<東京特集>流行やトレンドの発信地 アンテナショップ巡りで旅行気分

年明けから新型コロナウイルスの感染者が急激に増加したが、新規感染者は緩やかに減少している。感染者の増減によって需要の流れも一変するが、巣ごもり消費は定着してきており、小売店の売れ行きは堅調となっている。また、外食も感染者の減少とともに回復傾向にあり、感染対策を徹底しながら生活する新しい様式が日常化してきている。
東京都によると2月1日現在の東京都の人口は、推計で1398万485人。世帯総数は723万3481世帯(参考値)といずれも減少傾向にあるが、世界を代表する都市の一つであり、新たな「日本の台所」と呼ばれる豊洲市場も開場から4年目を迎えるなど、日本最大の消費地としての影響力と底力は健在だ。
流行やトレンドの発信地でもある。銀座・東銀座・有楽町周辺では、各道府県のアンテナショップが並び、各地の名産品などを販売。コロナ禍で旅行や帰省ができない人も多い中、地方の特産品が揃う「アンテナショップ」を巡って旅行気分を味わう人が増えている。
東京にも他地域に負けない特産品がある。江戸時代まで起源を遡るべったら漬や江戸甘味噌、江戸の佃島が発祥とされる江戸前佃煮、江戸東京野菜・練馬大根を用いた練馬沢庵など、伝統の技術や製法で作られてきた名品を今に伝えている。東京特集では、〝東京ブランド〟の商品を広く紹介する。
【2022(令和4)年3月1日第5086号1・2・3・6面】


<SMTS特集>SDGsに食で貢献 漬物・佃煮はサステナブルフード

甲州小梅の干し作業(山梨・長谷川醸造)
「第56回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2022」、「デリカテッセン・トレードショー(DTS)2022」(主催:一般社団法人全国スーパーマーケット協会)、「第17回こだわり食品フェア2022」(主催:一般財団法人食品産業センター)が16日~18日まで、幕張メッセ全館で開催される。
昨年同様にコロナ禍の開催となる今回も、徹底した感染対策の下、新しい生活様式に対応した商談展示会として実施される。
出展者数は1711社・団体、3029小間(1月15日現在)。今回も全国各地から自治体や地方金融機関等の取りまとめにより、1200社以上の地域産品メーカーが出展。海外からは6カ国、69社・団体、70小間が参加となる。
主催者企画では、「美と健康×食」、「サステナビリティ×食」の2つのトレンドテーマを打ち出した「食のトレンドゾーン」を新設。来場者に最新のトレンド情報と商品を紹介する。
近年、環境問題への関心の高まりにより世界的な潮流となった「SDGs(持続可能な開発目標)」。今回のSМTS、DTSにおいても、サステナブルフードや環境配慮型容器といったSDGsに対応する商品の提案が積極的に行われる予定だ。

三河伝統の本はぜ甘露煮(愛知・平松食品)
SDGsという観点では、伝統食品である漬物や佃煮も、食品を無駄なく食べようとする先人達の知恵から生まれたサステナブルフードと言える。漬物は漬けるという技法で、佃煮は炊くという技法をそれぞれ用いて、主に野菜や魚介類の保存性を高め、長きにわたり、食品ロス削減に貢献してきた。
最新のフードテックを駆使した食品に注目が集まりがちだが、日本には世界に誇る食文化が昔から存在し、日本各地の気候や風土に合わせて伝承されてきたことを忘れてはならない。SМTSは、まさにそのような地域に根付いた色とりどりの食に出会える場所だ。
今回もSМTSのメーンテーマとなるのが〝創ニッポン〟。全国各地の魅力的な産品を紹介することで、地域の活性化を図り、食を通してSDGsへ貢献していく。
【2022(令和4)年2月11日第5084号1~13面、18~20面】

<漬物の素特集>『ぬか床』で家庭の食品ロス削減 残った野菜を漬けて食べる

かぶのぬか漬(つけもと提供)
「ぬか床」が家庭での食品ロス削減に貢献する。その方法は、残った野菜を「ぬか床」で漬けるだけ。食品ロスやSDGsへの関心が高まり、世界的に地球環境等の問題が重要視される中、「ぬか床」が心強い味方となる。
食べられるのに捨てられる食品「食品ロス」は、食品メーカーやスーパーマーケットで多く発生していると思われているが、農林水産省及び環境省の「令和元年度推計」によると、食品ロス量の約半分(261万t)は家庭から発生している。
日本での食品ロスは年間570万t(令和元年度)と推計されており、日本の人口1人当たりの食品ロス量は年間約45㎏。日本では、家計における食費は消費支出の約4分の1(総務省「家計調査2020年」)を占めている。
また、世界の食料廃棄量は年間約13億tで、人の消費のために生産された食料の約3分の1(国連食糧農業機関「世界の食料ロスと食料廃棄(2011年)」)が廃棄されている。食品ロスは日本だけではなく、世界規模の問題となっている。
その問題の解決策の一つとして提案したいのが「ぬか床」の活用だ。野菜は日持ちが短く、冷蔵庫でも長期間保存しておくことはできないが、「ぬか床」にすれば栄養豊富で美味しいぬか漬にして食べることができる。また、「発酵」によって保存期間を長くさせることができ、ロングライフの要素も併せ持つまさにスーパーアイテムだ。
ここ数年、「ぬか床」の需要は上昇している。コロナ前の2019年頃から家庭で手軽にできる趣味として利用する人が増加。2020年はコロナの影響によって巣ごもり消費が増加し、おうち時間が増えたことによって「ぬか床」の需要が大幅に伸長した。売れ行きはメーカーによっても差があるが、年間で見ても120%~150%と好調だった。その中でもすぐに漬けることができる「熟成タイプ」の動きが目立った。
メディア効果も大きく、NHKでは2020年6月~2021年2月までの間に「ぬか漬」の特集を3回行うなど、その魅力を広く発信している。昨年は一昨年ほどの勢いはないものの、2019年比では2桁以上のプラスで推移。昨秋以降、野菜の価格が安定していることも追い風で、「ぬか床」以外の漬物の素も支持されている。
「菌活」「腸活」「菌トレ」などの言葉が広がっているが、総じて同じような意味を持つ。コロナ下で健康志向が高まる中、積極的に発酵食品を摂取して腸内環境を改善し、健康の維持増進を図るというものだ。2020年以降、キムチ、納豆、ヨーグルトの需要が急激に増加したことは、「菌活」や同じ意味として使用される「腸活」を実践する人が増えていることを示している。
「ぬか床」で野菜などを漬けたぬか漬は植物性乳酸菌をはじめ、ビタミンB群やミネラル、食物繊維など多くの栄養素を摂取することができ、整腸作用や免疫機能を高める効果が期待できる。優れた健康機能性も大きな魅力だ。
昨年5月の特集では「ぬか床」が売れているポイントを4つ(①巣ごもり需要の増加。②健康志向の高まり。③メディア効果。④安定した野菜価格)挙げたが、5つ目の候補として「家庭での食品ロス削減に貢献」を加えたい。売場で5つ目のポイントを消費者にPRすることができれば、それが現実味を帯びてくる。
(千葉友寛)
【2022(令和4)年2月11日第5084号1・16・17面】

<静岡特集>人気上昇〝食材の王国〟 移住希望先で全国1位に

東西に長く、日本一高い富士山や日本一深い駿河湾など多様な風土を持つ静岡県は〝食材の王国〟だ。伊豆、三島、静岡のわさび、焼津のまぐろやかつお、浜松のうなぎや海苔など、様々な食材が揃う。
県では、この多彩で高品質な農林水産物の中から、全国や海外に誇りうる価値や特長を備えた商品を、県独自の認定基準に基づいて「しずおか食セレクション」として認定。令和2年度も「新たまねぎはるたま」「はなびらたけ」など9品が新たに認定された。
静岡県の伝統食品メーカーでは、こうした豊かな食材を背景に、地場食材を積極的に使用した商品開発が活発だ。わさびを使用したわさび漬、まぐろやかつおを使用した角煮、うなぎや海苔を使用した佃煮といった伝統食品はもちろん、コロナ禍により人気が高まるキャンプやバーベキューでの使用を想定したわさび製品など、時代ニーズに柔軟に対応した商品も発売されている。
県への人気も上昇している。ふるさと回帰支援センターのアンケート調査によると、2020年の移住希望先の全国1位に静岡県が選ばれた。豊かな自然や温暖な気候、交通アクセスの良さなどの理由から、幅広い年代で人気を集めた。
コロナ禍によるリモートワークの普及などで、静岡県が持つ魅力は全国区になりつつある。2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、静岡県東部が舞台。大河ドラマで描かれる武家社会にちなみ、「ぶし(武士)のくに静岡県」としてもPRしていく。
(藤井大碁)
【2022(令和4)年2月11日第5084号1、9面】

<春を呼ぶ商材特集>巣ごもり消費に「桜花漬」 桜でんぶは恵方巻に

桜の花を塩漬した「桜花漬」
年が明け、春夏向け商品の商談が本格化している。売場は3月末から春夏向けの棚割りとなり、季節感を演出する「春を呼ぶ商材」が品揃えされる。
春を想起させる代表的な商品として需要が増加するのが桜の花を塩漬にした「桜花漬」。桜の花の香りと彩りが特徴で、祝いの席で提供される懐石料理や寿司、桜ご飯、桜茶、和菓子などで使用されている他、洋菓子、飲料、化粧品関係など、幅広い用途での利用が増えている。
桜は日本の国花で、外国人観光客にも好評を博し、箱根では人気商品となっていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の観光客が減少。観光土産用としての需要は減少傾向にあり、各メーカーでは自宅で「春」を楽しめるように家庭向けの製品を提案している。HPで桜花漬の用途例を紹介するなど、年明けから増加している巣ごもり消費につなげる取組を行っている。
希少価値の商材となっているが、産地では生産者の高齢化や後継者不足が深刻な課題となっており、生産量の維持は困難な状況となっている。桜の花は収穫期間が7日~10日と短く、収穫期の天候が収穫量に大きな影響を及ぼす。昨年の花付きは良かったが、原料状況は毎年異なり、一定数量を確保することは年々難しくなってきている。
白身魚の身をほぐして煎りあげた「桜でんぶ」も春を想起させる商材だ。ちらし寿司や巻き寿司に欠かせないアイテムであり、恵方巻の定番具材としてもお馴染みだ。
近年、様々な味わいが登場しバラエティー化した恵方巻だが、「桜でんぶ」を使用した伝統的な恵方巻の人気も根強い。昨年に続きコロナ下の節分となる今年も、巣ごもり中の貴重な家庭内イベントを盛り上げるアイテムとして恵方巻の需要拡大が期待される。
【2022(令和4)年2月1日第5083号1、6面】
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