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日本漬物産業同友会 2022

日本漬物産業同友会 原料対策委員会

遠藤会長
梅澤委員長

再生産可能な適正価格へ

急速な円安へ対応
 日本漬物産業同友会(遠藤栄一会長)は8日、原料対策委員会(梅澤綱祐委員長)をWEB会議の形式で開催。全国から35名が参加し、漬物市況、梅、生姜、楽京、塩漬け野菜、沢庵と原料別に作付状況や在庫状況、各製品の売れ行き、今後の見通しなどについて情報交換を行った。
 資材、副資材、調味料、人件費、物流費、燃料、運賃、肥料など、国内外で共通する製造コストの上昇は大きな課題となっているが、海外原料、海外完成品を扱っている企業にとってさらに大きな問題となっているのが急速に進行する円安だ。
 9月7日の外国為替市場で円相場が一時1ドル144円台となり、24年ぶりの円安ドル高水準となった。1年前(1ドル110円)と比べて34円の円安となっており、仕入価格に重くのしかかっている。企業努力で吸収できるレベルをはるかに超えている状況だ。
 海外産は価格改定が急務となっており、各メーカーでは値上げの交渉を進めているが、物価高や競合の動向、代替品の存在にも注視しなければならず、スピード感のある対応ができていない状況だ。
 さらに円安が予想を上回る速さで進行し、価格交渉している時と価格改定後の為替に差が生じているため、価格転嫁できても実際の販売価格がマイナスとなっているケースもあり、「海外完成品については値上げが追い付かない。ある程度ストックできる原料でも難しい状況だ」(遠藤会長)と価格転嫁の難しさもある。
 すでに品目によっては赤字製造を余儀なくされているものもあり、このままの状況が続けば〝不採算商品〟の規模がさらに拡大する可能性があり、漬物業界がおかれている状況は他業界と同等かそれ以上に切迫している。
 原料対策委員会は遠山昌子副会長の司会進行で遠藤会長が開会の挨拶を行い、「為替が1ドル144円と非常に厳しい状況が続いている。1年前と比較すると約25%高となる。各企業の情報を共有させていただきながら、自分たちがどのような方向に進んでいけば良いのか感じていただきたいと思う。各企業の商品を適正価格にしていくために知恵を出し合っていきたいと考えている」と悲壮な決意を示した。
 続けて梅澤委員長は、「今年5月に新体制となってから1回目の原料対策委員会となる。我々を取り巻く環境に大きな変動が起きていたこともあり、5月の総会の後に情報交換会を開催させていただいた。その時の為替は1ドル130円だったのだが、昨日は1ドル144円と4カ月で14円の円安が進行した。同友会の会員は輸入の原料や製品を生業にしている企業が多く、重要な局面を迎えている。本日は各原料の状況を中心に話を聞かせていただきたい」と述べ、委員会を進行した。(2面に続く)
【総括】
 <遠藤会長>
 各企業とも悩み事が多くあることが分かった。その中でも為替は各企業が直面している大きな問題だ。企業だけでなく産地も含めて再生産が可能な適正価格にしていくためには業界が問題や課題を共有し、デフレからインフレに転換できるように取り組んでいきたいと思っている。皆さんには本日の会議の内容を有効利用していただきたい。
 <梅澤委員長>
 為替はどのカテゴリーにも重くのしかかってくる。秋口には適正価格化の動きをするメーカーもあると思うが、環境の変化が激しい業界の中でも、情報交換を行うなど、業界が置かれている状況を俯瞰した上で、各社が適切な対応を取ることが大事だと感じた。
原料対策委員会の参加者

各カテゴリー発表

急がれる価格転嫁 諸コスト上昇で赤字販売も
<漬物市況>
新型コロナウイルスの感染者数は高止まりしているが「まん防」等の行動制限がなく巣ごもり消費は落ち着き、代わりに外食や土産が回復傾向にある。
 量販店では、梅雨明けが早く、猛暑が続いたため6月から8月半ばまで梅干しの売行きが好調だった。その他、たくあんが今年は前年比超を続けている。
 外食は回復してきて、店舗別で見ればコロナ前に近い水準に回復した所もある。しかし、大手チェーンで閉店が相次いだため市場規模全体で見ればコロナ前には遠く及ばない。
 土産もコロナ前には及ばないが回復傾向。旅行の他、ライブ等のイベントや、駅や商業施設での催事が復活したため販売機会は増えている。
 産業給食(社員食堂)は都市部などでリモートワークが続いているため稼働率が下がっている。
 物価上昇は全員が認識していること。漬物問屋には各取引メーカーより連日値上げの案内がきており、取引先に値上げを認めてもらうための交渉を日々行っている。
<梅>
 和歌山では2年前が凶作で値上げを実施した。昨年は豊作で、今年は平年並みの作柄となり、秀品率も高かった。原料的にはゆとりのある年となっている。塩の出荷量から計算すると、250万~270万樽の原料が漬けられていると推測される。在庫状況はグレードによって差があるが、全体的にはゆとりがあり、新物の使い始めもゆっくりだ。
 紀州梅は3年前から2年連続で値上げを実施した。その後は原料価格が落ち着き、今年は様々なコストが上がっているが、値上げが続いたこともあり各社値上げしない方向で、特売や内容量調整での対応となりそうだ。
 コロナ禍では、梅の売れ行きは悪かったが、今年は梅雨明けが早く猛暑が続いたことでまずまずの売れ行きとなった。ただ、8月中旬以降は例年通りに落ち着いた。量販店の動きは落ち着いてきたが、通販などは好調が続いている。
 売場では幅広いニーズがあり、全体的に動いているのは、外やC級などの低級品。安い商品の動きはあまり良くない。量販店ではB、C級などある程度のグレードの商品が普及品として売れている。中国産原料の商品の動きもやや鈍く、昨年の10%程度落ちていて、需要が国産にシフトしてきている。今年の中国梅の作柄は7割作で価格が上がっている。製造コストや為替の影響も大きく、価格改定を交渉している。
 群馬では青カリの最盛期の6月2日に降雹があり、ほとんどの梅が叩き落とされた。群馬の梅は、豊作となった平成30年以降、不作傾向となっている。
 JAはぐくみ管轄内において、今年の青カリは平年比6割程度となっているが、南高梅が中熟する前のものを収穫して回した分も含めての数字。小梅については雹が降る前の収穫だったので影響はほぼなかった。
 ここ4、5年で、JAはぐくみ管轄の農家が50組以上減り、1割以上減ったことになる。価格の上げ幅も高く、必要量を確保できないメーカーが多い。また、東北も3割作と厳しい状況。中国のカリカリも半作から3割作と聞いており、価格も1・5倍に上がっている。そこに為替の影響もある。
 価格転嫁の動きについては、菓子や珍味など同じ棚に並ぶ競合や他の梅の状況もある。しかし、梅干しとは違い、原料コストまで上がっており、値上げは必須だ。
<生姜>
 漬物用原料としての現地漬込価格(ドルベース)は、中国山東省が上昇し、中国南部とタイはわずかに下がった。この結果、3産地の価格差が非常に小さい状況となった。
 山東省はフレッシュの価格が昨年暴落したことで、栽培面積が3割減少した。また4月に低温、6月に干ばつ、7月に大雨で一部の畑が水没、と異常気象が続いて減収が確実となり、フレッシュの青田買いが入ったため一転して価格が急上昇した。このため農家は8月下旬から早掘りするのを嫌い、漬物用が集めづらくなり価格も上昇した。
 中国南部も作付が減少。しかしメーカーの説得により、投機や山東省の動向に影響を受けやすいフレッシュに比べ、漬物用は安定収入源となることが好感されて量が確保できた。
 タイは、昨年のフレッシュ価格の下落で作付面積が30%減ったものの、作柄としては天候が良く生育が早かった。
 フレッシュが7月当時は安く推移していたため生産農家としては早く売り抜けたい心理があったこと、スパイスメーカーの買付が入らなかったことなどから、例年より早い7月から収穫が始まり、漬物用原料が十分に集まった。
 現地漬込価格は中国南部、タイでわずかに下がったものの、ここ数年で見ると高値安定。そのような状況下で現在は為替の影響が大きく、進行する円安により輸入価格は大幅に上昇する。また包材等諸コストの上昇にも対応するため、国内メーカーは今秋から複数回にわたり価格改定し、適正価格を目指していく。
<楽京>
 中国産楽京は昨年、天候不順やコロナによる播種の遅れのため、大不作となり価格が大暴騰し、過去最高値を付けた。今年は、楽京が昨年高く売れた影響もあり作付面積が増え、天候も良かったため豊作型の収量となった。原料価格は過去最高値となった昨年より下がったものの、諸物価が高騰しているため、塩蔵にした段階の価格は安くない。為替の状況がとても悪く、各メーカーが赤字で販売している状況。秋冬に向けて適正価格で販売できるよう案内を進めているが、為替が現在進行形で上がり続けており、さらなる価格改定が必要になっている。
 国産楽京は、九州で定植時期が遅くなり分結が少なく、収量は昨年の2~3割減。鳥取も悪天候により収量が少なく小粒傾向で、加工用は例年の6~7割程となった。国産楽京は全国的に収量が少なく、大切に販売していかなければならない状況となっている。
<塩漬け野菜>
 中国産の四葉胡瓜、常盤胡瓜、茄子の原料価格はいずれも高値維持となっている。四葉胡瓜と茄子は昨年並の収穫となったが、常盤胡瓜は低温の影響で収量が減少した。
 国産の胡瓜、茄子は値上がり傾向。東北では大雨で種が流れるなど、これからの確保に苦慮。また塩漬を行う農家や一次加工業者から、塩の値上げ分の価格交渉が増えている。
 メンマは中国国内の消費増もあり高止まりしている。わらび等の山菜は、中国がコロナによるロックダウンの影響で山に収穫に行けずに減収。ロシア産も現地の人手不足から減収。通貨(ルーブル)の暴騰もあり輸入価格は大きく上昇している。原料状況に加え為替や諸コストの影響から、多くの品目で価格改定が計画されている。
<沢庵>
 九州の干し沢庵農家は、毎年5%ずつ離農している。自社農場等による対策が必須な状況。物流費の上昇や、最低賃金の上昇を見据えて価格改定が進められている。
 べったら漬などに使う北海道産は現在収穫が行われているが、7~8月の天候不順が影響し、病気が発生するなど作柄が良くない。東北も播種を終えたが、台風が発生しているため安心できない。べったら漬は量販店での主力が小容量カット物にシフトしており、単価が上がらない状況が続いている。
<商社・その他>
 砂糖や塩など副資材の値上がりが激しく、調味料も10㎏10円以上の値上げとなっている。機能性食品のルチンも上がっている状況。値上げをして、またすぐに値上げという状況が続いている。天候不順や為替の影響もあり、値上げが収まっていない厳しい状況になっている。北海道の野菜についても、天候不順の影響で、牛蒡・人参・大根などで今後の作柄が不安視されている。
 フレートについては中国関係が落ち着いていたが、国慶節が近づくにつれて値上げの状況になっている。ドライコンテナについては4倍以上、リーファーは1・5~2倍くらいのフレート代になっている。
 国産と中国産どちらが安いのかという状況で、国産に注力して取り組んでいるものの、肥料代の高騰が厳しく、今年10月~11月以降の作柄について心配している。
【2022(令和4)年9月11日5105号1,2面】

令和4年度定時総会を開催

遠藤会長
遠山副会長

遠藤栄一氏が新会長 情報を共有して事業展開

 日本漬物産業同友会(宮前有一郎会長)は10日、Web会議システム(Zoom)にて、令和4年度定時総会を開催。第4号議案の役員選挙では、宮前会長が退任し、遠藤栄一副会長が会長、遠山昌子会計理事が副会長に就任。新型コロナウイルスや原料資材関連のコストアップ、為替の影響など、業界を取り巻く環境は今後も不安定で不透明となっているが、新体制で情報を共有しながら有益な事業を展開していく方針が示された。
 総会は山本正憲理事の司会進行で、宮前会長が開会の挨拶を行い、「現在の世の中は不確定要素が多く、漬物業界も激動の時を迎えている。本日は価格の適正化に向けた情報交換会も開催させていただくが、厳しい状況の中でも情報交換は同友会の核になるものだと思っているので、ご協力をお願いしたい」と述べた。
 総会は宮前会長が議長を務めて議事を進行。第1号議案の令和3年度事業報告、第2号議案の令和3年度決算・監査報告、第3号議案の令和4年度事業・予算案は、原案通り承認、可決された。
 令和4年度事業計画では、原料対策委員会を9月に開催を予定している他、研修旅行、タイムリーな情報交換・講演会、食育を視点とした同友会ならではの漬物需要進行に向けた事業も検討する。また、令和4年度予算案では、食育に関する新規事業を行う予算として20万円が上程され、承認された。
 第4号議案の役員選挙については宮前会長がWeb上で選挙を実施することについて説明を行い、理事会で作成した新役員案を提出。全会一致で承認された。新会長に就任した遠藤会長は、「宮前会長は日本漬物輸入事業協同組合が解散した後、後継団体として日本漬物産業同友会を発足させるなど大変な苦労があった。宮前会長がいなかったら、この会はなかった。宮前会長のように色々な提案ができるか分からないが、会の方針は変わらずざっくばらんに意見を言い合える会にしていきたい」と抱負を語り、遠山新副会長も「会長をサポートしていきたい」と語った。
 来賓の全日本漬物協同組合連合会の鎌田洋行事務局長と同会に初めて参加した出席者が挨拶を述べた後、籠島正雄理事が閉会挨拶を行い、「食育については新たな取組の提案が出てきている。足元の部分も大事だが、将来に向けて何をしていかなければならないのか、ということについては我々の役割は重要だと感じている。今後はそのような議論もしていきたいと考えている」と未来に向けた活動の必要性を訴えた。
 【新役員】(敬称略)
 ▼会長:遠藤栄一▼副会長:遠山昌子▼会計理事:宮前有一郎▼理事:浅田康弘、梅澤綱祐(原料対策委員長)、籠島正雄、山本正憲(研修旅行委員長)▼監事:菅野嘉弘
日漬同友会の情報交換会

価格適正化へ情報交換 二度目の値上げに言及も

 総会終了後、梅澤原料対策委員長の発案で、価格適正化へ向けた情報交換会が開催された。
 梅澤委員長は「原料対策委員会は各原料状況が出揃う9月に開催してきた。しかし現在、新型コロナウイルスやロシア問題等により急激な物価高、為替変動が起こっている。情報共有することで、価格適正化へ向けた指針となるため、緊急で情報交換会を開きたい」と意図を説明した。
 情報交換会には漬物メーカーに加え商社、包装資材メーカーも参加し、コスト上昇の状況やそれらへの対応方針が説明された。
 全社共通課題としてまず挙げられたのが、海外原料の輸入における物流の遅延と費用高騰。特に貨物船の不足や積み下ろし作業の停滞が深刻で、通常2週間程度の納品が数カ月に遅延する事例が多発しており、早めの在庫確保が必須となっている。費用高騰は企業の収益を圧迫している。
 原因はコロナ、ロシア問題、燃料高騰、世界中での物流量増加など複合的であり、解決の目処は立っていない。中国国内を陸送し、余裕のある港から出荷するなどの対応も検討されているが、陸送費が高く継続性は低い。
 また多くの原料がドル建てで取引されている中、急激な円安が輸入価格に強く影響している。ドルは今年1月に115円だったが、5月には130円超と約13%の円安となった。今春値上げした製品はこの円安を織り込めておらず、秋口に再度の見直しが必要との声も上がった。
 また野菜栽培ではロシア問題によって肥料が40%の高騰。農業資材や機械も値上げとなり全作物に影響を与え、少々の作付増では吸収しきれず価格は上昇する可能性がある。
 さらに、日本以外の経済成長が進んでいること、日本企業の要求する規格が厳しいことなどから、買い負けする事例が増えており、取引価格の見直しに迫られているとの指摘もあった。
 包装資材は、ナフサやポリエチレンといった原料が不足している。値上げを避けられないだけでなく、安定供給にさえ不安があると報告。調味料も原料穀物の高騰により上昇しており、今後さらなる上昇が予想される。
 物価上昇の傾向は今後も止まらない状況を踏まえ、ベンダー業を営む東京中央漬物の齋藤正久社長は「漬物業界でも値上げはやむを得ず、当社の取引メーカーからも続々と案内が来ている。得意先へはその原因を説明できるよう、メーカー各位と協力して取り組んでいる」と話した。
 また三井食品工業の岩田孝逸会長は「これまでは小売店が売価帯を決め、それに合わせて商品を作っていた。メーカーがコストを積み上げ、適正価格を提示するのが本来のあり方だと思う」と指摘した。
 最後に遠藤会長が「前例や他社に依らず、原価計算をして適正価格を各社で判断し、実現していける業界にすることが必要」と呼びかけ、終了となった。
 作物別の原料事情、日本での価格改定状況の次の通り。
 ▼生姜=2021年産フレッシュ生姜のオーダーが少なく種生姜の価格が下落。生産農家の栽培意欲が落ち、作付面積が中国、タイともに縮小した。肥料高騰もあり、価格は上昇すると予想。契約栽培でもコスト上昇分は買取価格に反映せざるを得ない。
 業務用生姜漬は調味料等の高騰を背景に7月から値上げを実施する動きがあり、円安を織り込んだ第2弾の値上げも検討している。
 ▼らっきょう=2021年産の中国産原料が過去最高値を更新。各社では4月に規格変更や値上げを実施した。本年は作付が増えたものの、諸物価の上昇によりさらなる原料高騰の可能性がある。
 ▼梅=中国産は不作の見通し。国産の関東産地は、収量が昨年を下回る懸念。農家の減少も深刻。梅原料のほか、塩の価格上昇の影響も大きい。カリカリ梅の場合は競合がガム、飴など菓子業界のため、価格改定には慎重な姿勢。
 ▼干し沢庵=農家の高齢化により収穫量が減少しており対策が急務。業界的には価格改定は遅れているが、今春から値上げした企業もある。
【2022(令和4)年5月16日第5093号1、3面】
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