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日本漬物産業同友会 2021

日漬同友会 原料対策委員会

原料対策委員会の参加者
原料高騰 適正価格化へ
楽京は過去最高値に

 日本漬物産業同友会(宮前有一郎会長)は8日、原料対策委員会(梅澤綱祐委員長)をWEB会議の形式で開催。全国から32名が参加し、漬物市況、浅漬、梅干、生姜、楽京、塩漬け野菜、沢庵と原料別に近年の作付状況や原料価格の変動、今後の見通しを中心に情報交換を行った。
 人件費、運賃、燃料、副資材、資材、肥料、農薬など、様々なコストがアップしている中で、昨年の同時期と比較して円安ドル高で推移していることに加え、元の対米ドル相場(為替)が約11%不利な状況となっており、中国企業にとっては約11%収入が減ることになるため、大きな痛手となっている。為替の問題は今年の全ての中国原料に対して影響を及ぼしている。
 そのような状況下で、楽京は過去最高値を更新し、にんにくは投機が入ったことによって価格が高騰。生姜は昨年の価格から下がる見通しだが、昨年まで2年連続上昇するも値上げすることができず、厳しい状況が続いている。
 委員会は遠藤栄一副会長の司会進行で宮前会長が開会の挨拶を行い、「本日の原料対策委員会は、1日であらゆる農産物の状況と途中経過などの話が聞くことができ、農業全体の動きが分かる。コロナの影響は大きく、外国人実習生が入国できないから栽培面積が減っているという事例もあり、海外も異常気象でこれまでにない動きが出てきている。皆さんと情報を共有することで参考になることは多い」と開会を宣言した。
 梅澤委員長は、「同友会の原料対策委員会は今回が4回目で、これまで対面が2回、WEBが2回となる。対面の重要性は理解しているが、短時間で生の情報を共有できるという意味ではWEB会議との相性は良いと感じている。今年もやり方は同じだが、新たなカテゴリーとして『商社情報』を設けた。商社は漬物原料以外にも幅広いものを取り扱っていて、より広い視点で情報をいただきたいと思っている。油脂、砂糖などなど色々なものの価格が高騰しており、大手食品メーカーも値上げを表明している。我々の業界にとっても強い関心事なので、情報の提供をお願いしたい」と幅広い情報提供を求めた。

生姜価格は高値安定
コンテナ不足でフレート代高騰 
漬物市況
 コロナの影響で量販店の数字は好調だが、その分、外食は悪い。全体としては前年並み。昨年は8月まで野菜の価格が高かったが、9月から天候不良がなく国産原料は安定して推移。浅漬原料で苦労することはなかった。今年はお盆まで順調だったが、8月中旬以降は長雨で野菜価格が高くなった。白菜の価格は2200円(15㎏)と少し高く、レタスや胡瓜も高い。今の状況は9月20日頃まで続く見通しだが、これからの天候が悪くならなければ今年は順調に行くと見ている。
 業務用関係は、緊急事態宣言が発出された昨年の4月、5月と比べると今年は前年をクリアしているが、一昨年と比べると1~2割落ちている。夏から感染者が増えて数字は伸び悩んでいる。都市部では会食がなく、夜会も時短営業となっているので戻っていない。学校給食は出ているが、都市部の産業給食は減少し、郊外の工場は動いている状況。昨年はGoToキャンペーンなどの事業があったが、今年は何もないので見通しは厳しい。
 東北の土産関係は厳しい状況が続いている。漬物以外の業種で売上が8割~9割減となり、人員削減や店舗撤退などの動きも出てきている。弊社の土産関係の売上は前年80%で、試食を提供できない影響が大きい。ネット販売は好調で、一昨年より伸びている。家飲み需要は続くと見ており、漬物を日本酒やワインとセットにする販売を考えている。百貨店は厳しい状況が続いているが、お盆のサービスエリアや道の駅は前年並み。だが、お盆明けは落ち込んでいる。

 今年は大豊作だったが、市場流通しない路買いやメーカー漬が増えているため裾物原料の価格は上がっている。サイズは小粒傾向。塩の出荷量は約1万3000tで例年以上に原料がある。ただ、豊作の割に価格が高いため、年明けはそれぞれの判断で適正価格の提案が行われる見込み。売れ行きはまずまずだが、これから売れなくなる時期に入るので秋以降の売れ方次第で来春の価格に影響が出てくる。中国産は作柄が良く、価格の変動はない。内販向け商品を製造するメーカーの購入意欲も強くないため、原料的には問題ない。
 群馬の小梅は、大きなトラブルがなく5月17日から収穫をスタートした。10年前と比べるとスタートは2週間くらい早まっている。収穫量は前年比で1~2割増で、全体で2000t弱。市場価格はキロ500円で昨年の約9割だが、例年の価格と比較すると高い。東北の収穫量は昨年よりやや減少。価格は高値となった昨年より若干下がって例年並み。
 山梨の小梅は一昨年、昨年と大不作だった。今年の収穫量は昨年の5%~10%増だが、平年の7~8割。収穫期の土曜と日曜に雨が降ったことで収穫放棄もあった。農家は兼業で後継ぎがいない。親が畑を管理して子供が収穫を手伝う、という流れだがそれが成り立たなくなってきている。価格は一部メーカーの買いが入ったため、10%アップした。業務用は原料が切れた企業もある。コロナで厳しい状況が続いているが、持ち直してきた感がある。小売用商品は量目変更などの調整が必要になってくる。
生姜
 今年は高い種を使って栽培する状況だった。農家は昨年の価格が良かったので栽培意欲が強く、全ての産地で作付面積が増加。生育環境も良く、順調な作柄となっている。ここ2年は特異な形で価格が上がった。一昨年は生鮮の価格が高騰し、昨年はスパイスメーカーの買付が入った。それらの影響で塩蔵生姜の価格も2年連続で上がった。タイの収穫状況は刻み用の終盤で、スパイスメーカーの買付がまだ入っていない。中国南部は価格が安いことが影響し、農家が収穫を止めたことで、良い品質のがり用が少ない。山東省は大きなトラブルがないものの、為替に注視する必要がある。
 原料価格は一昨年から2年連続で高騰しているが、製品価格は2018年のままで、値上げはほぼできていない。業務用の売れ行きは現在も7割程度。コロナで外食産業が打撃を受けていることもあり、メーカーが企業努力で吸収している形となっているが、予想される2021年産の原料価格はタイが84ドル、中国南部が75ドル、山東省が64ドル。いずれの産地も昨年より下がるものの、ここ20年で3、4番目の高値になると見られている。ここ2年は我慢の状況が続いたこともあり、適正価格での販売が求められている。
楽京
 2021年産の原料価格が過去最高値となっている。離農や工業化の影響で作付面積が約30%減少。加えて長雨等の天候不順が続き、加工向けの収穫量も30~40%減となり、漬け込み量は昨年の35%減となる3万tに留まった。塩蔵楽京の価格はサイズによっても異なるが、20~30%増と高騰した。
 調味資材も含めて考えると、甘酢漬の価格は製品ベースでキロ130円以上値上がりする計算となる。昨年の価格も高値だったが、各企業は吸収する形で対応。今年の上がり幅は各企業で吸収できるレベルではなく、原料が新物に切り替わるタイミングで、適正価格での販売が不可欠な状況となっている。在庫はタイトな状況で新物への切り替えは例年より早まる見通し。量販店の売れ行きは順調だったが、今年に入ってやや落ち着いてきている。
塩漬け野菜
 中国の胡瓜は、ときわ、四葉ともに作付面積が減少。胡瓜は栽培に手間がかかるので、小麦やトウモロコシにシフトする傾向がある。5月の定植期に低温のため一部で枯れが発生し、植え直しとなった。その後の天候も良くない。茄子も同じ状況で、生の価格はときわと四葉が10~20%上昇し、茄子も10%以上上がっているため、塩蔵価格も上がると見ている。
 国産胡瓜は関東の5月の気温が高く、ピークが早かったため木が枯れて価格が上昇。7月と8月の東北産は余裕があったが、お盆前後の雨で木が枯れて市場価格が高騰し、今も高値で推移している。加工用は良い時と悪い時があり、通年で見ると平年並み。
 ふきのとうががんに効くというニュースが流れ、量販店から問い合わせがきた。弊社では前倒して出荷することにした。
 中国産のにんにくは、順調に生育し、長雨等の影響もなかったが、投機が入って価格が上昇。最終価格はまだ出ていないが、2015年を超えて最高値になる可能性もある。人件費も上がっていて、月6000元~7000元でも人が集まらない。機械化も進んでいるが、異物混入や不良品が多くなることを懸念している。
沢庵
 昨年は巣ごもりによる異常値となり、出荷を調整した。今年は去年ほどではなく、量販店の売上と同じ90%台で一昨年並み。今年のものはこれからだが、過去2年は平年並みの収量。契約農家は高齢化し、数も減っている。弊社では農業法人を設立して収量の確保を目指している。また、サーファーの方に秋冬は工場で働いてもらう取組の提案を行い、進めている。
 べったら漬は、原料が塩蔵ではないため九州から青森、北海道まで追いかけて確保している。昨年4月から10月までの生大根の相場は、ここ5年で一番高かった。11月から九州の大根が入ってきて落ち着いたが、今年は昨年と同じくらいの価格で推移している。品質は7月の高温と8月の長雨の影響で悪く、歩留まりも良くない。販売状況はまずまずで、スライスタイプは拡大している。北海道で東京フェアが開催されたこともあり、7月に実績を作ることができた。業務筋は厳しい状況が続いている。
 福神漬の昨年の大根原料は計画通りに購入できたが、農家が減少しているため大規模農家に委託する数量を増やす必要があるが、ハーベスタを使うため品質が落ちることが懸念材料。
 大根おろしはずっと伸びていて、売上の柱になっている。今年4月から数量ベースで前年比110%、とろろも125%。簡便性の高い商品が底堅い動きをしている。グループ会社で取り扱っているチルドポテトは、不作で小玉傾向だが、弊社は昨年以上の数量を確保できると見ている。
商社情報
 コンテナの予約が取れず、価格も高騰している。タイから日本向けのフレート代は昨年の2倍。タイからアメリカ向けは3、4倍になっている。
 今年の原料状況が良くないのは天候と環境規制が要因。河北省の工場は6、7割が輸出禁止となっている。このような状況でも良い工場を選定すれば、良い原料が入ってくる。中国とはWeChatなどを利用して連絡を取っている。価格が上昇している状況だが、日本は他国に買い負けている。保存の観点からザーサイなど日持ちする商品が人気となっている。
 砂糖、油、小麦の価格が上がっている。穀物相場は上がっているが、キロ単価で見ると高いものではない。それよりもフレート代の上昇の影響が大きい。北米向けのコンテナが洋上で留まっているため、コンテナ不足となっている。この状況は短くても1月まで続くと見られている。伸びていて注目している素材は大豆たんぱく。
【2021(令和3)年9月11日5069号1,2面】

日漬同友会 リモート形式で総会開催

リモート形式で開催した日漬同友会の総会
原料など情報交換も実施  
 日本漬物産業同友会(宮前有一郎会長)は11日、令和3年度定時総会をリモート形式で開催。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、Web会議システム(Zoom)を活用して実施した。
 遠藤栄一副会長の司会進行で挨拶を行った宮前会長は、「我々の業界はコロナによって難しい状況になっている。助け合えることがあればやっていきたい。対面ではないのが残念だが、課題や問題を話し合える場になれば幸いだ」と団結を呼びかけた。
 宮前会長が議長を務め、第1号議案の令和2年度事業報告、第2号議案の令和2年度決算・監査報告、第3号議案の令和3年度事業・予算は原案通り承認、可決された。
 年会費は通常2万円だが、コロナ禍で会合や研修ができない状況のため半額の1万円となったことが報告された。原料対策委員会は9月8日に開催予定で、現時点では対面形式、Web形式のどちらの可能性もある。また、研修旅行は今年も中止となった。
 総会後、情報交換会が開催され、出席者が近況を報告。主な内容は以下の通り。
 【原料関連】
 ▼群馬の小梅は昨年まで2年連続で不作となっているが、今年も良くない。
 ▼和歌山の梅は豊作傾向と見られている。毎年、収穫が終わらないと分からないのだが、今のところは豊作が見込める生育環境となっている。
 ▼水産原料は資源の枯渇化が指摘され、コロナの影響で船を出せないという問題もある。量を集めることが難しく、価格も上昇している。
 ▼福島では新規で胡瓜を生産する人が増えている。
 ▼タイでは生姜の植え付けが終了。種は昨年より高かったが、フレッシュ用の市況が良いため農家の生産意欲は高い。中部エリアでは作付が3~4割増えているところもあり、全体でも微増。
 【業務用製品】
 ▼中食は堅調だが、ホテルやレストランは厳しい状況が続いている。チェーン店は店舗が閉店している。
 ▼業務用は昨年より動いており、給食も多少動きが出てきている。
 ▼4月の数字は昨年よりも上がった。
 ▼業務筋と観光関係の売上は前年比で25%~30%下がったが、量販店商品は好調で全体の売上は少し伸びた。
 ▼業務用と土産品の動きは良くないが、ネット通販は良い。
 ▼昨年は3月下旬から売上が4割減という状況が続き、4月はコロナの影響を最も受けた。それでも、テイクアウト用の商品や小売用商品は安定していた。売上は2年前と比較するようにしている。
 ▼昨年は平均すると10%減。年末は良かったが、ゴールデンウイークは平年並み。コロナが収束し、需要が戻った時に備えて瞬発力を出せるように工場の整備を行っている。
 【小売用製品】
 ▼昨年の量販店の数字は異常値で、今年は裏年のため数字的には3月、4月ともに厳しかった。
 ▼観光業のダメージが大きく、土産品も厳しい状況が続いている。
 ▼昨年の4月と5月は白菜の価格が高騰したが、その後は安定して利益が出るようになった。昨年の4月と5月は売上が大幅に伸びたが、今年はそこまで伸びていない。
 ▼和歌山への観光客も減少し、土産品の売上は大きな減収となった。原料高で値上げを実施した影響もあると見られるが、他の漬物が売れた中で梅干は影響がなかった。
 【職場環境】
 ▼昨年からテレワークを引き続き実施しているが、生産性の部分では課題がある。
 ▼在宅勤務を実施しているが、緊張感の維持は難しくなってきている。現状の対策で大丈夫なのか確認している。
 【営業関連】
 ▼東北方面は埼玉からの訪問だと面会できず、思うような営業活動ができていない。
 ▼昨年は干し大根のやぐらや工場の見学を実施することができず、商談ができない状況が続いている。
【2021(令和3)年5月21日第5058号2面】
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