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ぬか・漬物の素インタビュー2023

ぬか・漬物の素インタビュー2023

日本いりぬか工業会 会長 足立昇司氏

「ぬか漬けの日」をPR
今年は体制作りに注力
 昨年3月の総会で日本いりぬか工業会の会長に就任し、2年目を迎えた足立昇司会長(株式会社伊勢惣専務取締役)にインタビュー。コロナ禍で昨年度までは思うような活動ができなかったが、今年度は5月8日の「ぬか漬けの日」に合わせて業界紙の電子媒体やSNSなどを活用し、情報発信、プレゼントキャンペーンなどを行う計画。来年以降、ぬか漬教室などのイベントを継続的に実施するため、今年は体制作りに注力する意向を示した。(千葉友寛)
‐ぬか床製品の売れ行きは。
 「ぬか床の売れ行きについては、コロナ禍で巣ごもり消費が増加したことに加え、テレビなどのメディアでぬか床やぬか漬が紹介されたことで需要が大幅に増加し、市場も拡大した。健康や美容といった観点以外にも家庭で手軽にできる趣味など、多くの魅力を感じていただきぬか床の利用者が増えた。コロナが落ち着いた現在は落ち着いた状態となっているが、この3年でぬか床やぬか漬に対する認知度はかなり高まったと感じている」
‐ブームとなった甘酒の動きは。
 「甘酒は2016年あたりから需要が拡大した。2011年に大ヒットした塩麹の登場によって麹を利用した商品への関心が高まり、甘酒も大きな脚光を浴びた。その流れで新規参入する企業が増加し、市場も一気に拡大した。だが、ブーム的な動きは時間とともに弱含みとなり、全体の需要も減少傾向にあった。だが、昨年の売れ行きは前年並みに推移し、ようやく下げ止まった動きとなっている。全体的に売場のアイテム数は減っている状況だが、逆に甘酒を全く販売していない店舗もない。つまり、売場で定番になっているということは、普段の生活に取り入れることが習慣となっている消費者がいるということを示している。甘酒の市場は10年前と比べてもかなり大きくなっている。美味しくて栄養、健康、美容の3要素が揃っている甘酒にはまだまだ伸び代があると思っている」
‐ぬか床や甘酒の値上げについて。
 「残念なことにどちらの品目も昨今の値上げラッシュの波に乗ることができず、値上げは進んでいない。その要因は市場で大きなシェアを持つカテゴリーリーダーのような企業が存在しないことが大きいと思っている。中小企業で構成されるぬか床と甘酒は競争が激しく、値上げするとその他の企業に棚を取られてしまう。ぬか床については米ぬかの価格が上がっていることに加え、包装資材や電気代などの製造コストが上昇しており、利益を圧迫している。値上げをしたいのはどの企業も同じだと思うが、棚を失うリスクが高いため動きたくても動けないという状況が続いている。濃縮タイプの甘酒も同様に競争が激しいため値上げはできていない。ブランド力や差別化された商品があれば値上げをすることができると思うが、そのような商品は現在の売場にはない。商品開発やブランドを磨く努力が必要なのだが、現在は我慢比べの様相となっている」
‐日本いりぬか工業会の活動について。
 「工業会としてはまずぬか床やぬか漬のことを一般の方に認知してもらうため、5月8日の『ぬか漬けの日』に合わせ、業界紙の電子媒体やSNSなどを活用し、情報発信、プレゼントキャンペーンなどを行う。今年の事業計画には入れられなかったが、来年以降はぬか漬教室などのイベントを継続的に実施したいと考えている。今年は来年以降に向けた体制作りに注力したいと思っており、会員企業の理解と協力をいただきながら業界の活性化につながるような活動をしていきたい」
【2023(令和5)年5月1日第5127号6面】

株式会社伊勢惣

日本いりぬか工業会 副会長 山﨑理香子氏

提案型の売り方が鍵
いりぬかは伸びるアイテム
 日本いりぬか工業会の山﨑理香子副会長(国城産業㈱代表取締役社長)にインタビュー。山﨑副会長は、いりぬか製品の動向や値上げ状況を語ると共に、5月8日「ぬか漬けの日」に絡めた提案型の売り場作りがぬか漬け関連製品の売上増加に繋がると指摘した。(藤井大碁)
――いりぬか製品の動向。
 「いりぬか製品は2020年4月に緊急事態宣言が発令された後から、急激に需要が増加した。巣ごもりにより時間ができたことでぬか漬けにチャレンジする人が増えた。また緊急事態宣言のタイミングが、ぬか漬けシーズンのスタート時期とも重なったため、郊外型の大型店を中心に特設コーナーで販売され、それが一般的な食品スーパーにも波及し売上が伸びた。パンやパスタが品薄になる中で、ご飯を食べようという流れも追い風になり、ピーク時の出荷量は例年の約2倍に拡大。2020年、2021年の2年間はコロナ前と比較して150~160%で推移した。2022年は巣ごもりの減少と共に、いりぬか製品の需要も落ち着き、現在に至るまでコロナ前と同水準で推移している。足元では、気温の高低差が激しいことも影響し、ぬか漬けシーズンスタートの出足は例年より鈍い。これから本格的なシーズンインとなるので、需要拡大に期待したい」
――値上げについて。
 「弊社では4月より10%程の値上げを実施した。全てのコストが上昇しているが、特に米ぬか原料と物流費の高騰のインパクトが大きい。米ぬか原料は、輸入飼料の価格上昇に伴い、それに引っ張られる格好で国内飼料として使用されている米ぬかが上昇、一年間で約3倍近い価格になっている。米ぬかは近年人気が拡大している米油の原料としても引き合いが多く、この先も原料価格が下がる要素はない。物流費も一年間で15%程上がっており影響は大きい。いりぬかは、使う人は使う、使わない人は使わないという嗜好性の高い商品なので、値上げの影響は比較的少ない部類であると考えているが、今後の動きを注視して慎重に対応していきたい」
――ぬか漬けファンは増加傾向にある。
 「健康性や発酵食品としての認知度上昇に加え、近年はSNSを通じて、若い世代にもぬか漬けの魅力が広がり、コロナ禍を経て、新たなユーザーが増加した。コロナ特需は落ち着いたが、そういう意味でも、いりぬか製品は、売り方によって今後まだまだ伸びるアイテムだと考えている。小売店において、いりぬかやぬか床製品を購入する場合、現在はいりぬか製品(ドライタイプ)はグロッサリー売場、ぬか床製品(ウェットタイプ)は青果売場というように、ぬか漬け関連製品の売場が分かれてしまっている。これを青果売場に統一し、POPなどで使い方を分かりやすく明記することによりぬか漬け関連製品の売上を伸ばしていけると考えている。特設コーナーを展開した店舗の売上が伸びていることを見ると、“ぬか漬けを始めませんか”という提案型の売り方が鍵になる。健康性や、食品ロス削減といったSDGsの要素の他、5月8日の『ぬか漬けの日』を絡めた売場での販促を提案していきたい」
――他社のいりぬかメーカーが、いりぬか以外の製品を幅広く取り扱う中、貴社では50年間いりぬか一筋を貫いてきた。
 
「『いりぬか』ならどこのものでも一緒と思われがちな商品であるが、国内唯一のいりぬか専業メーカーとしては、いりぬかの質が最も重要であると考えている。お米の種類やその年の出来具合により、ぬかの質は変わる。その違いを見極め、製造していくことで、お客様に長く愛される商品を作り、日本固有の食文化“ぬか漬け”を守り続けていくために今後も努力していきたい」
【2023(令和5)年5月1日第5127号8面】

国城産業株式会社
https://www.kokujo.jp/

つけもと株式会社 総務部  越智都江氏

越智氏
SNSは会社の資産に
宣伝固執せず「共有」意識 
 つけもと株式会社(松井義明社長、奈良県北葛城郡河合町)は各種SNSを活用し、漬物の素のレシピを発信している。手作りならではの意外な漬物も多く紹介し、じわじわとフォロワーを増やしている。昨秋からはインスタグラムで動画配信も始めた。講師役として出演する総務部の越智都江氏は、好きなものを皆と共有する、という感覚を持つことで動画作りに気楽に取り組めるようになったと話す。SNSが会社の資産となっていくこと、レシピ開発のモチベーションとなっていることを紹介し、今後も活用していく考えを示した。(大阪支社 小林悟空)
◇    ◇
 ーインスタグラムで動画投稿を始めた。
 「以前からSNSでレシピ紹介や商品紹介をしていましたが、オンラインショップの刷新と同時期に、動画にも挑戦することになりました。初めは顔を映すことに抵抗もありましたが…少しずつフォロワーも増えたり、遠方の友人から連絡が来たりとやりがいを感じています」
 ー動画の役割は。
 「動画で実際に漬ける様子を伝えられれば安心に繋がります。動画はストックされていくので、会社の資産になっていくと思います。漬物の素はただ味付けをするのではなくて、時間をかけて熟成・発酵をさせていくもの。時間がかかるので正しく漬けられているか不安になる方は多いです。使い方を教えてほしいという電話は今でもほぼ毎日いただいていますが、動画がFAQのような役割を果たせば経費削減にも繋がるかもしれません」
 ー料理番組のような雰囲気。
 「宣伝ありきではなく、自分が好きなものを作るついでに撮影して共有しよう、くらいの感覚で気楽に取り組むようにしています。手元だけを映して早回しにする料理動画や、エンタメ要素たっぷりの料理動画も沢山ありますが、私自身はテレビの料理番組が好きなのでその雰囲気を真似しています。結果的に漬物にじっくり取り組むイメージにも合っているのではないでしょうか」
 ー大量に漬け込む動画も。
 「漬物づくりは手間を楽しむ面もあると思いますが、実は私にとっては常備菜としてラクをさせてくれるもの、という感覚が強いです。タッパーやポリ袋で漬けるのに慣れた方には、樽やボウルでたくさん漬けることにも挑戦してほしい、と思いを込めています」
 ー漬物作りの魅力。
 「漬物の素は好きな素材、旬の素材で自由に漬けられるのが一番の魅力です。ナッツのぬか漬や、激辛のキムチなど市販品にはない味も思いのまま。SNSを始めて、今までなんとなく手が伸びていなかった素材や漬け方に挑戦するモチベーションになっているので、新しい味を探究してご紹介していきます」
 ー今後の意気込みは。
 「当社は量販店や業務筋への出荷が中心なので通販はまだまだ小規模。気に入ったものを通販で定期的にまとめ買いするという方が多く、売れ筋は量販店と一致している部分が多いのが現状です。新商品や変わり種のような商品にも注目していただけるようSNSを盛り上げていきたいです」
【2023(令和5)年2月11日第5119号16面】

つけもと

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