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ルポルタージュ 2023

奥田しば漬本舗 真夏のしば漬作り体験

重石を乗せた樽
大原のしそ農園
奥田充氏
重石を乗せる作業は筋トレ
 【大阪支社】8月17日、奥田しば漬本舗(奥田和義代表、京都市左京区)の奥田充氏から声をかけていただき、しば漬の漬込み作業を体験した。
 しば漬の発祥地である京都・大原では7~8月、暑さ極まる時期に漬込みのピークを迎える。原料であるしその葉と茄子の収穫時期であること、またしその葉と茄子、塩だけで漬込み熟成発酵させるにはこの暑さが必要であるためだ。
 世間は夏休みであっても、野菜の成長と季節の流れは止まってくれない。1年分のしば漬を夏の短期間で一気に漬込むため、ほぼ毎日作業に当たることとなる。
 同社ではしその葉と茄子、塩を漬込む作業はすべて手作業で行っている。充氏はスライサーから出てきた茄子の量を瞬時に見極め、しその葉と塩を手に取ると研ぎ澄まされた感覚で量を調整しながら振りかけ、混ぜ合わせる。
 それを樽に放り込み、踏んで水分を出しながら樽1丁に約180㎏(生茄子原料換算)を詰めていく。原料を詰め終わった樽は、スライサー近くから漬込場まで引っ張って移動させ、重石を乗せていく。記者はこの作業を担当した。樽に入り茄子を踏む作業は、茄子の柔らかさと水分に足を取られて体幹を使うため、見た目よりも重労働だった。
 そして重い樽を引っ張り、背の高い樽の上へ20㎏もの重石を乗せる作業は筋トレそのもの。普段は1日に20丁以上を漬けているそうだが、この日はその半分の樽10丁を午前中に漬込んで終了した。それでも、全身が疲労感に襲われた。
 記者はこの漬込み作業だけで終えたが、実際は朝5時頃の薄暗い時間からしそ刈りに始まり、工場の清掃や茄子の仕入れ、出荷作業等々の仕事を毎日こなしている。そのどれもが頭脳と肉体を常に働かせなければいけない作業だ。
 短時間ながら、実際に製造の仕事を体感し、食品メーカーには本当に頭が下がる思いでいっぱいになった。漬物を食べる時には感謝の気持ちを持たなければならないと改めて感じさせられた。
【大原の生しば漬】
 『平家物語』で有名な高倉帝の皇后、建礼門院徳子が大原の寂光院に閑居していた折に、里人が夏野菜を漬込み献上したところ大層気に入り「紫葉漬け」と命名したと伝承されている。
 現在では胡瓜に酢を利かせた漬物が一般的になっているが、大原のしば漬はしその葉と茄子、塩だけで漬けて乳酸発酵させたもの。
 この製法で味の要となるのがしその葉。奥田しば漬本舗では100%大原産を使用している。大原は盆地という地理的要因と、永年自家採種を続けてきた人々の努力によって交雑が防がれ、原種に近いしそが守られている。
 漬込まれたしば漬は、漬かり具合が均等になるよう毎日重石の調整をしながら熟成を進めていく。1樽当たりの重量は、生原料の時点では約180㎏だが出荷時には水分が抜けて60~70㎏ほどになる。
(小林悟空)
【2023(令和5)年8月21日第5138号2面】

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