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「梅」データ・資料2024

<紀州南高梅> 10月から過去最大幅の価格改定 出荷数を抑え来年まで安定供給

天日干しされる紀州南高梅(和歌山県田辺市)
 今年、平年比3割作で史上最低の凶作となった紀州南高梅は、10月から過去最大の上げ幅となる価格改定が実施される。
 9月~10月に行われる秋冬向けの棚替えに向けた商談は例年6月中に終了するが、今年の紀州南高梅は暖冬の影響で着果数が少なく、3月の降雹被害等で早期から凶作の見通しだったこともあり、各メーカーは秋冬の棚割りからの価格改定に向けて6月中に「値上げは実施するが、価格や規格は新物原料価格が出てから提示する」と打診。特例的なタイミングとなるが、新物の相場が出た7月下旬からお盆明けにかけ、急ピッチで商談が行われた。
 値上げ幅や実施時期は各メーカーの在庫量などによっても異なり、小売店も販売価格を変更したくないところは内容量調整、商品規格を変えたくないところは値上げといったように、売場の都合と消費者の反応も考慮され、その内容には大きな違いが出ている。
 価格改定の内容は内容量調整、値上げ、内容量調整と値上げを合わせた3パターンがあり、A級原料を使用する特選マークの商品は原料価格が約2倍に上がったこともあって値上げが中心。30%前後の値上げになっている他、秀品率が低く原料が確保できないため終売とする商品も多い。
 また、特選マークを外してA級とB級の原料を使用したり、原料をA級からC級に変えるなど、特選マーク入りの商品は、当面の間、希少なアイテムとなる。
 量販店で主力商品の原料となるC級やつぶれ梅の原料となる外の原料価格は約1・5倍となっており、内容量調整で対応するメーカーが多く、15~25%の減量となっている。値上げの方では、398円が498円、498円が598円と、やはり20%前後の値上げとなる。近年では2020年の作柄が半作(平年比)となり、多くのメーカーは内容量調整で対応。その時でも10~20%の減量だったことから、今年は過去にない値上げ幅となる。
 原料がどれだけ確保できるかという見通しが立てられないメーカーもあり、いまだに新規格を出せていない企業もある他、消費者の買い控えも想定されることから、メーカーと小売店の価格交渉が続いているところもある。多くのメーカーは10月からの価格改定を目指しているが、各社の提示が出揃ったところまでには至っていない。8月中旬までに規格が確定できていなければ11月以降に先送りになるため、11月から価格改定となる商品も多い。
 今年の紀州南高梅の作柄については、流通側にも早くから情報が入っていたことから、日配商品として近年稀に見る値上げ幅となっているものの、比較的スムーズに商談が進んでいる。だが、両者の考えには多少のずれがある。
 売上を落としたくない小売店は値上げ幅を最小限に抑えたいという意向が強いが、メーカー側が価格改定を行う一番の理由は、原料価格の高騰というよりも、来年の新物原料が入ってくるまで原料を切らさず安定供給するために出荷数を減らす、というものだ。
 秋冬以降は、年内に価格改定を実施しない中国産原料を使用した梅干しが紀州産や国産をカバーする形で、売場のシェアを増やす見通し。ただ、多くの梅干しメーカーが中国産原料を扱っているわけではなく、国産を中心とする中小メーカーは、値上げによる出荷数の減少と原料不足という不安材料を抱えることになり、厳しい局面が続く。
 今年の夏は昨年以上の猛暑となっており、梅干しの売れ行きも昨夏を上回っている。価格改定後は売れ行きが大幅に悪くなることが想定され、物価高が続く中で梅干し離れや売場の縮小といったことも懸念される。大手メーカーでも新規の取引を受けられる余裕はない。今年は来年の作柄を見据えつつ、消費者の動向も注視しながら、限られた原料を大事に販売していく1年になる。(千葉友寛)
【2024(令和6)年9月1日第5172号1面】

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