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愛知県漬物協会 漬物振興大会

「漬物王国」愛知県と一体で 70周年祝し振興大会

曾我会長
大村知事
森局長
鈴木局長
中園会長
知事表彰を受けた佐藤氏
会長賞受賞の一同
役員一同
公式キャラクター「アイチタルオ大王」
社会福祉法人へ漬物を寄付
最後は岩田副会長による万歳三唱で
出席者全員で創立70周年を祝った
 公益社団法人愛知県漬物協会(曾我公彦会長)は創立70周年を記念して「愛知県漬物振興大会」を2月26日に名鉄グランドホテルで開催した。
 会員、賛助会員に加えて協会名誉会長である大村秀章愛知県知事や中園雅治全漬連会長をはじめ多数の来賓を迎え、協会の永年の隆盛を祝った。
 振興大会の第一部は記念講演会を開催し、株式会社GHIBLIの坪内知佳社長を招き、漁業の6次産業化への取組からそのチャレンジ精神を学び、漬物業界への応用の可能性を探った。
 第二部式典では、功労者の表彰や、社会福祉法人への寄付継続を宣言。多数の来賓から協会の永続へ期待と激励の言葉が贈られた。

坪内氏
坪内知佳氏講演会 『ファーストペンギン!』モデル 六次産業化から学べること
 愛知漬協70周年式典に先立ち、記念講演会「50年先の未来も漬物業で生きていく~船団丸から何を学び、何をすべきか」が開催され、講師は株式会社GHIBLIの坪内知佳代表取締役が務めた。
 坪内氏は、日本の漁業界において六次産業化の先駆者として著名であり、女優の奈緒さんが主演のドラマ『ファーストペンギン!』(2022年、日本テレビ系列)で主人公のモデルとなったことで知られる。
 結婚を機に、山口県の萩市へ移住し、地元の漁師と2010年に出会い、漁業の現状について話を聞いたことが、漁業に関わるようになったきっかけ。漁業の持続可能性に危機感を覚え、漁師が生産・加工(第二次産業)や流通・販売(第三次産業)まで手掛ける、中間業者を通さない六次産業のビジネスモデルに着目し始めた。
 その矢先、農林水産省が「六次産業化・地産地消法」に基づく認定事業者の募集を開始するという情報を耳にし、坪内氏や漁師たちは、萩大島の三船団を「萩大島船団丸」と、2011年3月に任意団体を設立し、坪内氏が代表に就任した。
 坪内氏は萩大島に来るまで元々、漁業に関わったことはなく、生魚の臭いは苦手。さばくこともできなかった。萩大島船団丸の結成に際し、自ら漁業の現場に足を運び、漁師たちと積極的にコミュニケーションを取り、最初は考えの行き違いで喧嘩が絶えなかったものの、少しずつ信頼を得ることができるようになった。
 坪内氏が発案した、萩大島船団丸の六次産業化のビジネスモデルは、次のモデルだ。
 ①萩大島で主に獲れるアジとサバは萩の市場に従来通り出荷し、②その他のスズキやイサキなどの混獲魚を「鮮魚BOX」として箱に詰め合わせ、東京や大阪のレストランを始めとし、県外へ直送するというモデル。
 通常、混ざって揚がった魚は、市場流通しても1箱1000円程度の値段しかつかない。しかし、直送先であれば細やかな要望、例えば「小さなタイが欲しい」「アラは要らないからすぐに捨てて」という声に対し、最適に応えることができる。食品ロスを極力無くし高鮮度での提供で、なおかつ購入者の使いやすい形で魚を届けられる、坪内氏の鮮魚ボックスのアイデアは斬新であった。
 同年、中国・四国地方において、国が認定する前述の「六次産業化法」の認定事業者の第1号となり、大きな漁協や組合、企業に先んじて認定されたことから、「離島の小さな漁師集団の快挙」と言われた。
 その後、坪内氏は、直送先の飲食店の開拓に励んだ。飲食店は、すでに既存の仕入先があるため、坪内氏の商談は苦戦からスタート。だが、坪内氏がグルメサイトで検索して見つけた魚へのこだわりが特に強い店にアプローチし、新規直送先を拡大していくことができた。
 一方、営業で東奔西走し島を離れることの多い坪内氏と、船団丸の漁師たちとは、すれ違いも生まれた。坪内氏は、漁師に飲食店との顧客対応を一部任せていたが、漁師は実際に自分たちが獲った魚の買い手や消費者との交流がなかったため、顧客対応でトラブルが相次いでいた。
 坪内氏は、自身の東京出張に初めて漁師たちを同行させ、彼らは自分たちが獲って加工し、直送した魚が、高級フランス料理店のフルコースで提供されていることを知る。実際にそのフレンチを食べてみると、シェフが魚の鮮度や美味しさを活かした調理をしてくれていることに感動した。
 船団丸の六次産業事業が安定化してきた2014年、さらなる事業拡大のため、坪内氏は「株式会社GHIBLI(ギブリ)」を設立。ギブリとは、サハラ砂漠から地中海に向かって吹く「熱風」を意味する。
 海に向かって吹く、強く熱い風は、坪内氏たちを表すのにぴったりの言葉。同社設立の大きな理由は、漁師たちが漁に出られない期間(禁漁期間、天候不良日等)の収入安定のためだ。
 GHIBLIでは、従来の鮮魚販売に加え、旅行部門、コンサルティング部門、環境部門などを設け、旅行部門では萩大島に訪れた旅行客の前で漁師たちが自ら魚をさばき、振舞う。コンサルティング部門では、船団丸がどのようにして六次産業化事業を立ち上げ、運営しているのか、漁師たちを全国の漁協や自治体に派遣し、そのノウハウを全国に展開していく試みを行っている。
 坪内氏は最後に「バタフライエフェクト」を紹介した。蝶の羽ばたきは微々たるものでありながら、その動きで周りの空気が次々とかきまわされて連動し、一カ月後に遠くで竜巻を起こす大きな動きに変わるという物理現象である。
 坪内氏は「船団丸、GHIBLIの仕事が漁業・水産加工業の世界で少なからず影響を与えたが、初めは数人で始めた活動に過ぎない。漬物業界でも六次産業化など新たな取組で、業界が持続可能に発展していくために、知恵を絞ってほしい。ちょっとした工夫が、大旋風を巻き起こすかもしれない」と激励し、講演会は締めくくられた。
<式典・懇親会> 
 第二部の式典は浅田康裕専務理事の司会の下、野田明孝副会長が開会を宣言した。主催者代表として大村名誉会長が登壇し、「愛知県は漬物をはじめとして日本酒、酢、味噌、醤油、たまりなど発酵食が盛んな地という観点からもPRしていきたいと考えている。会員の皆様には今後もお力添えをお願い申し上げる」と述べ、今後一層連携を深めていくことを誓った(挨拶別掲)。
 次に漬物振興功労者の表彰へと移った。知事表彰を大村知事より授与されたのは佐藤善雄理事。協会運営に永年にわたり尽力し、また丸善佐藤商店の代表として愛知県漬物業界の発展に寄与してきたことを讃えられた。
 会長賞では小久保理理事(山幸漬物食品)、太田光則理事(尾張屋)、乾伸市郎理事(名古屋中央漬物)、永田尚也理事(コトジョー)、伊藤博明監事(伊藤商事)ら5名の役員が表彰された。
 また漬物製造管理士技能評価試験への会場や審査員を提供し、漬物業界へ多大な協力をしている名古屋調理師専門学校の向山登校長、60周年記念に誕生した公式キャラクター「アイチタルオ大王」にも、曾我会長から表彰状が授与された。
 続いて記念事業の一環として、子ども食堂の運営支援を行う社会福祉法人愛知県社会福祉協議会へ、漬物一式を寄付する旨が示された寄付目録を贈呈。これを機に、今後も寄付事業を継続していくことが宣言された。
 また農林水産省東海農政局より協会へ感謝状が授与され、森重樹局長は「漬物の消費振興や製造技術向上、それによる野菜消費の拡大、食育や寄付活動などの公益事業といった様々な活動に取り組まれてきたことへ敬意を表する。今後も地域の食生活・食文化を未来へつなぎ、豊かな未来作りへ活躍されることを期待している」と功績を称えた。
 その後、愛知県農業水産局の鈴木希明局長、全日本漬物協同組合連合会の中園雅治会長ら来賓から祝辞が述べられた。
 鈴木局長は「愛知は全国5位の野菜生産県であり、それを背景に漬物製造が発展し『漬物王国』と呼ばれることもある。そこに至るには漬物の製造技術の発達や、原料の安定確保など努力があったことだろう。近年はコスト上昇など課題となっているが、健康性や現代の嗜好に合った漬物を開発し、漬物が発展し続けて欲しい」と語った。
 中園会長は「愛知漬協は全国に先駆けて協会を設立し、常に業界をリードしてきた存在であり、現在漬物業界が抱える課題に対してもその力を発揮していただきたい。全漬連では20、30歳代の漬物消費拡大、漬物レシピのPR、漬物が高塩度食品だという誤解を払拭することを目標にしているので、お力添えをお願いしたい」と愛知漬協の活躍を願った。
 その後は席を移し、懇親会の席が設けられた。
 曾我会長は式典開催に当たり尽力した会員や事務局、関係者へ感謝の言葉を述べた上で「当協会でできることはまだまだある。協会はこれからも課題解決を目指していくので、会員の皆様には協会をどんどん利用してほしい」と力強く宣言した(挨拶別掲)。
 懇親会は栗田和典副会長による乾杯発声で開宴。コロナ禍が落ち着き久しぶりの出席となった会員も多く、会話が弾み賑やかな時間を過ごした。最後は岩田孝逸副会長の万歳三唱による中締めで協会の永続を誓い合い、閉会となった。
曾我公彦会長 県と連携の強み生かす
 本日は多くの来賓、会員、賛助会員に出席いただき心より感謝申し上げる。知事表彰、会長表彰をお贈りした方々におかれては永年にわたり協会運営や漬物業界の発展に尽力いただき、重ねてお礼申し上げる。
 また当協会の事務局は愛知県農業水産局園芸農産課に委託しており、日頃の運営から本日の大会開催までご助力いただいた。本当にありがたく思っている。
 昨年会長の大任を拝命し、協会の歴史を改めて紐解いてみた。戦後間もない頃は配給制の管理のため漬物関連の組合もできたが一度解散された。その後、企業個々では解決できない問題に取り組んでいこうということで1953年に愛知県漬物協会が発足した。
 実際、団体で交渉することによって様々なことを実現してきたようだ。1959年、漬物品評会開催を機に桑原幹根知事を会長へ迎えたわけだが、桑原知事は当時の主要産業であった農業をもっと育ててくれるのが漬物だと考えていたようだ。県が全面的に協力してくれるというのは非常に心強いことだ。
 昨今、組合活動の意義を疑問視する声も聞かれるが、メリットのない団体が70年も続くはずがない。県の農業試験場、食品工業技術センターなど技術的な問題に対しても助力してもらえる。協会でできることはもっとあるはずなのに、活用する意識が足りていないと気付かされた。
 協会としても課題解決に努めていく。皆様ももっと協会を活用しよう、という気持ちであれば業界が良くなっていくと思う。一人ひとりの力は小さくとも、皆で協力していきたい。
  
大村秀章名誉会長 「発酵食」の地をPR 
 本日は名誉会長として、主催者代表という形でのご挨拶となる。僭越ながらこのように盛大に70周年記念式典を開催でき会員、関係者の皆様へ感謝申し上げる。
 本協会は1953年に創立した。1959年に当時の桑原幹根知事が会長に就任、1991年に鈴木礼治知事が会長・名誉会長を務め、そして2017年に私が引き継いだ。70年の歴史の大半を県と強固に連携しながら事業を行ってきたということが分かる。私もこうして漬物に携わることができて名誉であり、嬉しく思う。
 本県の漬物産業は愛知県の盛んな農業を土台として発展してきた。当協会は漬物の一層の振興を目指し1953年に設立され、1963年に社団法人化、2012年8月には現在の公益社団法人に移行した。
 2013年に「和食‥日本の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に認定され約10年が経つ。世界において和食が注目されるようになってきている。その欠かせない存在である漬物も、これを機にますます発信に力を入れていかねばならない。
 発酵食という観点で見れば、愛知は漬物を筆頭に、日本酒が40以上の蔵元があり、酢、味噌、醤油、たまり、八丁みそなど独自の文化を築き上げてきた。発酵食の地、というPRもしていけるのではないか。そのためには皆様の力が必要であり、力添えいただきたい。
 最後になるが、愛知県漬物協会の一層の発展を祈念して挨拶とする。
【2024(令和6)年3月11日第5156号6面】
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