3月21日号 梅・梅関連製品特集
中田食品株式会社 代表取締役社長 中田吉昭氏
持続可能な梅産業に 梅干し一粒当りの塩分表示へ
中田食品株式会社(和歌山県田辺市)の中田吉昭社長にインタビュー。梅の開花状況や梅干しの売れ行きなどについて話を聞いた。今年の開花及び満開期は平年より10日~14日遅れており、「ここまで遅い開花は記憶にない」と不安を覗かせるが、遅咲きになると良い作柄になるという通説通りになることに期待を寄せる。生産者の高齢化や減少が問題となる中、持続可能な産業を形成するために安定した価格で原料を買い上げて適正価格で販売していく必要があると強調。また、漬物や梅干しは塩分が高い、というイメージを払しょくするため梅干しの常食量表示(一粒当り)について準備を進めていることを明かした。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐今年は梅の開花が遅れている。
「ここまで遅い開花は記憶にない。平年の満開期は2月20日頃なので、10日くらい遅い計算になる。田辺地域では3月1日、2日に満開となったのだが、3月に入ってから満開というのは経験がない。一抹の不安もあるが、梅は遅咲きになると良い作柄になると言われており、これからの天候にもよるが豊作になることを期待している」
‐昨年は近年稀に見る凶作となった。
「昨年は史上最低の凶作で、災害級の作柄となった。平年の3割しかないので紀州梅産業にとっては試練の年になっている。春から夏の需要期に原料がないと売上を作ることができず、事業継続が困難になる。ヒネ在庫が農家等の倉庫に眠っている可能性もあるが、昨年の漬け込み量は平年の3割しかないのでヒネ在庫の分を加えても平年の半分の量もないだろう。そのような状況下で新物が出てくるまでつないでいかなくてはならない。値上げはしているが、商品によっては供給できなくなるものが出てくる可能性もある。梅干しは特に夏が需要期なので、新物が出てくる秋まで待ってください、とは言えない。得意先にはご迷惑をおかけする可能性もあるが、ご理解をいただきたいと思っている」
‐中国産のシェアが増えている。
「紀州産が足りない状況なので、中国産に頼らざるを得ない。当社も中国産原料が比較的安定していることから、梅の売場を中国産で補っていただくようお願いしている。今年の中国産の作柄は良好で、球数が多く小粒傾向。中国国内需要が停滞しているので日本向けに安定した量が塩漬されている。ただ、円安なので採算は合っていない。昨年の秋に紀州産の値上げを実施したため、中国産の値上げは見合せた。そのため、値上げ後の紀州産は数量が3割程度減るなどブレーキがかかっているが、中国産は伸びている。今期の売上はここまで前年比103%となっている」
‐紀州梅産地の将来について。
「どこの産地も生産者が高齢化していて人手不足。紀州では高齢の生産者の畑を若い人が譲り受けて栽培管理を行う人が増えている。多くはないが、Uターンで戻ってくる人もいる。生産者が減り続ければ収穫量も減る。持続可能な産業を形成していくためには我々メーカーも生産者が継続して農業ができる価格で原料を買い上げて適正価格で販売していくことが重要だ。紀州梅の価値を高め紀州ブランドを守り未来につなげることが大事」
‐漬物業界で常食量表示が推奨されている。
「漬物の栄養成分表示は100gが一般的となっているが、1食分の表示にすると食塩相当量の数値が小さくなるため、漬物は高塩というイメージを払拭できるかもしれない。梅干しは粒の大きさや塩分量の平均値を出すことが難しいのだが、1商品ずつ計算して一粒当りの塩分量を表示するよう準備を進めている」
(千葉友寛)
◇ ◇
‐今年は梅の開花が遅れている。
「ここまで遅い開花は記憶にない。平年の満開期は2月20日頃なので、10日くらい遅い計算になる。田辺地域では3月1日、2日に満開となったのだが、3月に入ってから満開というのは経験がない。一抹の不安もあるが、梅は遅咲きになると良い作柄になると言われており、これからの天候にもよるが豊作になることを期待している」
‐昨年は近年稀に見る凶作となった。
「昨年は史上最低の凶作で、災害級の作柄となった。平年の3割しかないので紀州梅産業にとっては試練の年になっている。春から夏の需要期に原料がないと売上を作ることができず、事業継続が困難になる。ヒネ在庫が農家等の倉庫に眠っている可能性もあるが、昨年の漬け込み量は平年の3割しかないのでヒネ在庫の分を加えても平年の半分の量もないだろう。そのような状況下で新物が出てくるまでつないでいかなくてはならない。値上げはしているが、商品によっては供給できなくなるものが出てくる可能性もある。梅干しは特に夏が需要期なので、新物が出てくる秋まで待ってください、とは言えない。得意先にはご迷惑をおかけする可能性もあるが、ご理解をいただきたいと思っている」
‐中国産のシェアが増えている。
「紀州産が足りない状況なので、中国産に頼らざるを得ない。当社も中国産原料が比較的安定していることから、梅の売場を中国産で補っていただくようお願いしている。今年の中国産の作柄は良好で、球数が多く小粒傾向。中国国内需要が停滞しているので日本向けに安定した量が塩漬されている。ただ、円安なので採算は合っていない。昨年の秋に紀州産の値上げを実施したため、中国産の値上げは見合せた。そのため、値上げ後の紀州産は数量が3割程度減るなどブレーキがかかっているが、中国産は伸びている。今期の売上はここまで前年比103%となっている」
‐紀州梅産地の将来について。
「どこの産地も生産者が高齢化していて人手不足。紀州では高齢の生産者の畑を若い人が譲り受けて栽培管理を行う人が増えている。多くはないが、Uターンで戻ってくる人もいる。生産者が減り続ければ収穫量も減る。持続可能な産業を形成していくためには我々メーカーも生産者が継続して農業ができる価格で原料を買い上げて適正価格で販売していくことが重要だ。紀州梅の価値を高め紀州ブランドを守り未来につなげることが大事」
‐漬物業界で常食量表示が推奨されている。
「漬物の栄養成分表示は100gが一般的となっているが、1食分の表示にすると食塩相当量の数値が小さくなるため、漬物は高塩というイメージを払拭できるかもしれない。梅干しは粒の大きさや塩分量の平均値を出すことが難しいのだが、1商品ずつ計算して一粒当りの塩分量を表示するよう準備を進めている」
【2025(令和7)年3月21日第5190号2面】
紀州みなべ梅干協同組合 理事長 殿畑雅敏氏
産地の維持、拡大に関与 生産性高めて反収を上げる
紀州みなべ梅干協同組合理事長の殿畑雅敏氏(株式会社トノハタ社長)にインタビュー。今後の組合活動の方針などについて話を聞いた。昨年は災害級の作柄になったことで原料状況は厳しい状況になっており、組合としては産地の維持、拡大に向けた取組の必要性を指摘。行政、JA、加工業者、生産者の全員が知恵を出して、産地の未来を考えていくべきだと語った。(千葉友寛)
◇ ◇
‐梅の開花状況は。
「平年より10日以上遅い。今年の中国産は豊作型と見られている。中国と日本の作柄は同じ状況となることが多いので、現時点で確定的なことは言えないが、紀州についても豊作型になることを期待している」
‐原料状況は。
「昨年は災害級の作柄となったため、厳しくないメーカーはほぼないだろう。過去に不作の年があっても8月いっぱいくらいまでの原料はあったのだが、今年は厳しいと言わざるを得ない。現時点の見通しとしては、6月初旬に漬けたものを7月半ばに使うことになる可能性もある。今年の作柄がそこそこの豊作になっても例年よりも前倒し(約2~3カ月分)で使うことになるため、来年に向けても大幅な余裕が出てくる状況にはないと思われる」
‐産地の今後について。
「これまでは原料があって当たり前の時代が続いた。不作が続いても原料はどこからか出てきた。しかし、現在の状況はこれまでとは違っており、梅があることのありがたさが骨身に染みるほどの教訓となっている。今回のことで改めて感じたことは、我々の商売は原料がないと会社を維持することができない、ということ。組合活動についても栽培の技術指導や剪定の講習会など、PRより産地の維持、拡大に向けて積極的に関与していくべきだと思っている」
‐みなべ町長と意見交換を行った。
「昨年12月に山本秀平みなべ町長に梅産業を支援していただく旨の陳情を行った。みなべの農家の平均年齢は67歳。10年後のことを考えると、今と同じ状況であるはずがない。収穫量を維持するためには生産性を高めて反収を上げるしかない。現在の農水省の方針は耕作放棄地の復活には補助金を出すが、新規の圃場(パイロット事業等)に対する支援は乏しい。平地の収穫量は傾斜地の3~5倍あり、生産者が減っても平地の農地が広がれば栽培面積や生産者が減っても収穫量を維持することができる。このようなことについて声を上げ、行政、JA、加工業者、生産者の全員が知恵を出して、これからの産地のことを考えていく必要がある」
‐値上げの動きは。
「昨年の秋冬で大幅な値上げを実施したので、春夏は動けなかった。仮に値上げして売場がなくなった場合、秋冬の売場を失うリスクがあると考えた。数量としては1~2割減ったものの、値上げ幅が大きかったので金額は前年を割ってはいない。我々としては原料不安がある国産を中国産に切り替えたいのだが、売場は金額がプラスになっているので変えたくない意向だ。ある程度作柄が良い時は価格を下げるところが出てくる。それがなくなることはないだろう。しかし、農家の収入にも影響することだが、末端の消費者にとっても原料があるから安い、ないから高いと価格が上下することは良いこととは言えない。価格が上がれば消費者が離れ、市場はシュリンクする。そのような意味では価格を安定させることが重要で、次の年への原料をある程度繰り越していく意識が必要。そのことは昨年の作柄で強く意識付けられたと感じている」
◇ ◇
‐梅の開花状況は。
「平年より10日以上遅い。今年の中国産は豊作型と見られている。中国と日本の作柄は同じ状況となることが多いので、現時点で確定的なことは言えないが、紀州についても豊作型になることを期待している」
‐原料状況は。
「昨年は災害級の作柄となったため、厳しくないメーカーはほぼないだろう。過去に不作の年があっても8月いっぱいくらいまでの原料はあったのだが、今年は厳しいと言わざるを得ない。現時点の見通しとしては、6月初旬に漬けたものを7月半ばに使うことになる可能性もある。今年の作柄がそこそこの豊作になっても例年よりも前倒し(約2~3カ月分)で使うことになるため、来年に向けても大幅な余裕が出てくる状況にはないと思われる」
‐産地の今後について。
「これまでは原料があって当たり前の時代が続いた。不作が続いても原料はどこからか出てきた。しかし、現在の状況はこれまでとは違っており、梅があることのありがたさが骨身に染みるほどの教訓となっている。今回のことで改めて感じたことは、我々の商売は原料がないと会社を維持することができない、ということ。組合活動についても栽培の技術指導や剪定の講習会など、PRより産地の維持、拡大に向けて積極的に関与していくべきだと思っている」
‐みなべ町長と意見交換を行った。
「昨年12月に山本秀平みなべ町長に梅産業を支援していただく旨の陳情を行った。みなべの農家の平均年齢は67歳。10年後のことを考えると、今と同じ状況であるはずがない。収穫量を維持するためには生産性を高めて反収を上げるしかない。現在の農水省の方針は耕作放棄地の復活には補助金を出すが、新規の圃場(パイロット事業等)に対する支援は乏しい。平地の収穫量は傾斜地の3~5倍あり、生産者が減っても平地の農地が広がれば栽培面積や生産者が減っても収穫量を維持することができる。このようなことについて声を上げ、行政、JA、加工業者、生産者の全員が知恵を出して、これからの産地のことを考えていく必要がある」
‐値上げの動きは。
「昨年の秋冬で大幅な値上げを実施したので、春夏は動けなかった。仮に値上げして売場がなくなった場合、秋冬の売場を失うリスクがあると考えた。数量としては1~2割減ったものの、値上げ幅が大きかったので金額は前年を割ってはいない。我々としては原料不安がある国産を中国産に切り替えたいのだが、売場は金額がプラスになっているので変えたくない意向だ。ある程度作柄が良い時は価格を下げるところが出てくる。それがなくなることはないだろう。しかし、農家の収入にも影響することだが、末端の消費者にとっても原料があるから安い、ないから高いと価格が上下することは良いこととは言えない。価格が上がれば消費者が離れ、市場はシュリンクする。そのような意味では価格を安定させることが重要で、次の年への原料をある程度繰り越していく意識が必要。そのことは昨年の作柄で強く意識付けられたと感じている」
【2025(令和7)年3月21日第5190号3面】
紀州田辺梅干協同組合 理事長 前田雅雄氏
県や政府に支援を要望 セーフティネット指定業種へ
紀州田辺梅干協同組合理事長の前田雅雄氏(有限会社紀州うめまさ社長)にインタビュー。今年の作柄状況などについて話を聞いた。昨年は史上最低の作柄となったことで需要期に向けて多くの企業が原料不安を抱えている。組合では経営安定資金の保証など、多くの支援を受けられるセーフティネットの指定業種になるよう政府に要望しており、力を合わせて苦しい状況を乗り切っていく考えを改めて示した。(千葉友寛)
◇ ◇
‐今年の花芽は。
「平年より約2週間開花が遅い。遅咲きに不作なし、と言われているので豊作を期待しているが、満開となった3月1日、2日の翌3日から雨が降って気温が下がったのでミツバチが飛ばなかった。開花は稀に見る遅さで、その後の寒気の影響など、あまり経験したこがないので不安もある」
‐原料価格の見通し。
「昨年の原料価格は一昨年の約2倍に高騰した。3割作という史上最低の作柄となったことが影響したわけだが、今年は各社タンクが空いているので漬け込み意欲が強い。青果や他業界の引き合いも強いことが予想されるため、ある程度良い作柄になったとしても原料相場が大きく変動することはないだろう。豊作になっても現状維持か少し下がるかくらいだと見ている」
‐原料状況は。
「過去にないくらい逼迫している。原料を持っているところと持っていないところでは極端に差があり、当社は原料を持っているところにお願いしながら、小ロットで確保して集めている。ヒネ在庫があると指摘する人もいるが、あるかないかは本当に分からない。過去に不作の年で原料はどこにもない、と言われていた時も春以降に出てきたケースが多々ある。ただ、現在は確実にある、と言える状況ではないので、限られた原料を大事に販売している。春夏は梅干しの需要期となるのだが、各社は販売の期待以上に原料不安を抱えている」
‐組合の取組について。
「当組合は紀州みなべ梅干協同組合と合同で、『令和6年度の梅干しの状況』を昨年7月23日付けで発表。紀州産梅干しの作柄、また梅原料のひっ迫と価格の高騰などの現況を伝え、加盟企業の価格転嫁がスムーズに行われるよう、流通、小売り関係者に対して理解を求めるための要望書を作成した。また、紀州みなべ梅干協同組合と合同で和歌山県や国にセーフティネット構築の協力と支援を要請し、県は機器などの導入経費の補助や不作に備えた梅干し原料の備蓄促進を図る支援策を打ち出している。政府の方では、業況が悪化している業種に属する中小企業者を支援するための国の制度であるセーフティネットの指定業種となるよう働きかけている。梅産業や漬物産業がセーフティネットの指定業種となれば、経営安定資金の保証が受けられる。苦しい状況は続くが、力を合わせて乗り切っていきたいと考えている」
【2025(令和7)年3月21日第5190号4面】
紀州田辺梅干協同組合理事長の前田雅雄氏(有限会社紀州うめまさ社長)にインタビュー。今年の作柄状況などについて話を聞いた。昨年は史上最低の作柄となったことで需要期に向けて多くの企業が原料不安を抱えている。組合では経営安定資金の保証など、多くの支援を受けられるセーフティネットの指定業種になるよう政府に要望しており、力を合わせて苦しい状況を乗り切っていく考えを改めて示した。(千葉友寛)
◇ ◇
‐今年の花芽は。
「平年より約2週間開花が遅い。遅咲きに不作なし、と言われているので豊作を期待しているが、満開となった3月1日、2日の翌3日から雨が降って気温が下がったのでミツバチが飛ばなかった。開花は稀に見る遅さで、その後の寒気の影響など、あまり経験したこがないので不安もある」
‐原料価格の見通し。
「昨年の原料価格は一昨年の約2倍に高騰した。3割作という史上最低の作柄となったことが影響したわけだが、今年は各社タンクが空いているので漬け込み意欲が強い。青果や他業界の引き合いも強いことが予想されるため、ある程度良い作柄になったとしても原料相場が大きく変動することはないだろう。豊作になっても現状維持か少し下がるかくらいだと見ている」
‐原料状況は。
「過去にないくらい逼迫している。原料を持っているところと持っていないところでは極端に差があり、当社は原料を持っているところにお願いしながら、小ロットで確保して集めている。ヒネ在庫があると指摘する人もいるが、あるかないかは本当に分からない。過去に不作の年で原料はどこにもない、と言われていた時も春以降に出てきたケースが多々ある。ただ、現在は確実にある、と言える状況ではないので、限られた原料を大事に販売している。春夏は梅干しの需要期となるのだが、各社は販売の期待以上に原料不安を抱えている」
‐組合の取組について。
「当組合は紀州みなべ梅干協同組合と合同で、『令和6年度の梅干しの状況』を昨年7月23日付けで発表。紀州産梅干しの作柄、また梅原料のひっ迫と価格の高騰などの現況を伝え、加盟企業の価格転嫁がスムーズに行われるよう、流通、小売り関係者に対して理解を求めるための要望書を作成した。また、紀州みなべ梅干協同組合と合同で和歌山県や国にセーフティネット構築の協力と支援を要請し、県は機器などの導入経費の補助や不作に備えた梅干し原料の備蓄促進を図る支援策を打ち出している。政府の方では、業況が悪化している業種に属する中小企業者を支援するための国の制度であるセーフティネットの指定業種となるよう働きかけている。梅産業や漬物産業がセーフティネットの指定業種となれば、経営安定資金の保証が受けられる。苦しい状況は続くが、力を合わせて乗り切っていきたいと考えている」
【2025(令和7)年3月21日第5190号4面】
紀州田辺梅干協同組合 https://kishu-tanabe-umeboshikumiai.com/
紀州うめまさ http://www.umemasa.co.jp/
若梅会 会長 濱田朝康氏
大阪・関西万博で『万博漬け』 梅干しは日本古来のフードテック
昨年10月に代表取締役に就任した株式会社濱田(和歌山県田辺市)の濱田朝康氏にインタビュー。同氏は紀州田辺梅干協同組合(前田雅雄理事長)と紀州みなべ梅干協同組合(殿畑雅敏理事長)を合わせた青年部組織「若梅会」の会長を務めており、昨年1月に2期目(1期2年)を迎えた。紀州梅の会(真砂充敏会長)の実働部隊となる若梅会は、大阪・関西万博で梅を漬けて25年後に食べる『万博漬け』の取組を実施し、日本古来から伝わるフードテックを国内外に広く伝える役割を担う。(千葉友寛)
◇ ◇
‐梅の開花状況は。
「田辺梅林や山の方ではまだ満開となっていないところもあるが、みなべや海側では2月下旬から3月2日頃に満開期を迎えた。大よそ1週間から2週間遅い。梅産地では、遅咲きは良いと言われており、花が咲いて暖かい日が続くと授粉が進み、花がパッと散る。開花期は短くなるが、その後の生育環境としては良いため、今年は良い作柄を期待している」
‐原料状況は。
「昨年が史上最低の作柄だったので当然のことながら余裕はない。当社が使用する原料はA級とB級だが、当社とは逆にA級とB級は使用せずC級が欲しい、というところもあるので、利害が一致した企業と原料の交換を行っている。売買よりも交換が優先される傾向だった。そういった中でも最近は一部メーカーで原料売りの動きも出てきている。新物が使用できる秋口までは、このような形で何とか原料を確保していきたいと考えている」
‐梅干しの売れ行きは。
「昨年の原料価格は約2倍に高騰したので、値上げを実施した。そのため、出荷数量は落ちている。売上は値上げ分がプラスとなっているが、トータルでは微減となっている。現在の梅干しは健康食品よりも嗜好品に近いものとなっており、企業としてもどちらの方向を目指していくのか選択する必要がある」
‐若梅会の活動は。
「紀州梅の会(梅干部会)では、2025年日本国際博覧会協会が主催する8つのパビリオンのうち、放送作家・脚本家の小山薫堂氏がプロデュースする『EARTH MART』の展示に協力するのだが、若梅会もお手伝いさせていただいて『万博漬け』の取組を6月に実施する。『万博漬け』とは、2025年大阪・関西万博シグネチャーパビリオン『EARTH MART』にて会場内で実際に漬けられた梅干しのことで、長期保存ができる梅干しを使って万博の思い出を未来へと託すというもの。『万博漬け』は、紀州梅の会によって25年後の2050年まで保管し、『食のタイムカプセル』として引き継がれ、食ベられる。日時や場所等の詳細は、引き換えイベント開催間近に発表される予定」
‐万博でのPR内容は。
「『EARTH MART』は、2025年大阪・関西万博シグネチャーパビリオンの一つとして、小山薫堂氏がプロデュースした『食といのち』をテーマにしたパビリオン。食を通じて、自然や他の動植物の命の大切さ、そして、食そのものの尊さを見つめ直すというもの。『EARTH FOODS』とは食の未来をより良くするために、世界に共有したい日本発の食の知恵。その25品目の食材のうちの一つに『梅干し』が選ばれた。梅干しは、電気も機械も使うことなく、自然の恵みと人の知恵だけで長期保存できる日本古来から伝わるフードテックだとも言える。この『万博漬け』をきっかけに、地域の人々がその価値を見つめ直し、世界中に広がることを願っている」
【2025(令和7)年3月21日第5190号5面】
若梅会
https://wakaumekai.com/
昨年10月に代表取締役に就任した株式会社濱田(和歌山県田辺市)の濱田朝康氏にインタビュー。同氏は紀州田辺梅干協同組合(前田雅雄理事長)と紀州みなべ梅干協同組合(殿畑雅敏理事長)を合わせた青年部組織「若梅会」の会長を務めており、昨年1月に2期目(1期2年)を迎えた。紀州梅の会(真砂充敏会長)の実働部隊となる若梅会は、大阪・関西万博で梅を漬けて25年後に食べる『万博漬け』の取組を実施し、日本古来から伝わるフードテックを国内外に広く伝える役割を担う。(千葉友寛)
◇ ◇
‐梅の開花状況は。
「田辺梅林や山の方ではまだ満開となっていないところもあるが、みなべや海側では2月下旬から3月2日頃に満開期を迎えた。大よそ1週間から2週間遅い。梅産地では、遅咲きは良いと言われており、花が咲いて暖かい日が続くと授粉が進み、花がパッと散る。開花期は短くなるが、その後の生育環境としては良いため、今年は良い作柄を期待している」
‐原料状況は。
「昨年が史上最低の作柄だったので当然のことながら余裕はない。当社が使用する原料はA級とB級だが、当社とは逆にA級とB級は使用せずC級が欲しい、というところもあるので、利害が一致した企業と原料の交換を行っている。売買よりも交換が優先される傾向だった。そういった中でも最近は一部メーカーで原料売りの動きも出てきている。新物が使用できる秋口までは、このような形で何とか原料を確保していきたいと考えている」
‐梅干しの売れ行きは。
「昨年の原料価格は約2倍に高騰したので、値上げを実施した。そのため、出荷数量は落ちている。売上は値上げ分がプラスとなっているが、トータルでは微減となっている。現在の梅干しは健康食品よりも嗜好品に近いものとなっており、企業としてもどちらの方向を目指していくのか選択する必要がある」
‐若梅会の活動は。
「紀州梅の会(梅干部会)では、2025年日本国際博覧会協会が主催する8つのパビリオンのうち、放送作家・脚本家の小山薫堂氏がプロデュースする『EARTH MART』の展示に協力するのだが、若梅会もお手伝いさせていただいて『万博漬け』の取組を6月に実施する。『万博漬け』とは、2025年大阪・関西万博シグネチャーパビリオン『EARTH MART』にて会場内で実際に漬けられた梅干しのことで、長期保存ができる梅干しを使って万博の思い出を未来へと託すというもの。『万博漬け』は、紀州梅の会によって25年後の2050年まで保管し、『食のタイムカプセル』として引き継がれ、食ベられる。日時や場所等の詳細は、引き換えイベント開催間近に発表される予定」
‐万博でのPR内容は。
「『EARTH MART』は、2025年大阪・関西万博シグネチャーパビリオンの一つとして、小山薫堂氏がプロデュースした『食といのち』をテーマにしたパビリオン。食を通じて、自然や他の動植物の命の大切さ、そして、食そのものの尊さを見つめ直すというもの。『EARTH FOODS』とは食の未来をより良くするために、世界に共有したい日本発の食の知恵。その25品目の食材のうちの一つに『梅干し』が選ばれた。梅干しは、電気も機械も使うことなく、自然の恵みと人の知恵だけで長期保存できる日本古来から伝わるフードテックだとも言える。この『万博漬け』をきっかけに、地域の人々がその価値を見つめ直し、世界中に広がることを願っている」
【2025(令和7)年3月21日第5190号5面】
若梅会
https://wakaumekai.com/