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こんにゃく インタビュー2025

4月1日号 群馬こんにゃく特集

群馬県こんにゃく研究会副会長 利根沼田コンニャク研究会会長 こんにゃく生産農家 関 康浩氏

「しらたきサラダ」大作戦を展開
こんにゃく未来へつなぐ正念場
 近年、食生活の変化などにより、こんにゃく需要の減少が続く中、こんにゃく芋の原料価格が低迷。物価上昇により様々な経費が高騰することで、こんにゃく生産者の経営を圧迫している。こうした中、群馬県こんにゃく研究会副会長で利根沼田コンニャク研究会会長の関康浩氏は、こんにゃく消費拡大の一手として、「しらたきサラダ」のメニュー提案を推進。生産者から有志を募り、地元出身のインフルエンサーに動画制作を依頼するなど、需要拡大に向けて取り組んでいる。関会長は「こんにゃく産業を未来へつないでいくためにも今が正念場」とその覚悟を語った。(藤井大碁)  
-こんにゃく生産者の現状。 
 「板こんにゃくやしらたきなどのこんにゃく製品は農家が出荷したこんにゃく芋を、製粉業者がこんにゃく粉に加工し、メーカーが粉を使って商品を生産している。平成25年に609億円あったこんにゃく製品の国内販売額は令和5年に507億円まで減少している。これに伴い、こんにゃく芋の原料価格も平成25年~令和5年に平均価格(30キロあたり)約4600円だったものが、令和6年には約2500円まで下落した。さらに、現在はこんにゃく粉の余剰在庫が発生しており、それが解消されない限り、原料価格の上昇が見込みづらい状況にある。一方で近年の物価上昇により、肥料や燃料などのコストは逆に上昇しており、生産者がこんにゃく栽培で生計を立てていくことが難しくなっている」
-需要拡大のため精力的に取り組んでいる。
 「これまでは生産者の役割は良い原料をつくることで、売れる商品をつくり市場を拡大していくのは、こんにゃくメーカーの役割であると他人事のように考える甘えのようなものがあった。さらに流通の仕組みへの無理解から自家製生ずりこんにゃくをアピールしてしまうなど、むしろ製粉業者やメーカーの足を引っ張っていた。だが、原料価格が低迷し、厳しい経営状況に置かれる中、我々生産者こそ、流通の仕組みを勉強して需要拡大のために立ち上がらなければならないということに気づいた。こんにゃく業界は、こんにゃくメーカー、製粉業者、生産者の三業態一体で成り立っており、どこか一つの業態でも欠けてしまえば産業の歯車が回らなくなる。こんにゃく産業を未来へつないでいくためにも、今が正念場と考え、できることを全てやっていく覚悟でいる」
-「しらたきサラダ」大作戦を展開している。
 「こんにゃく、しらたきは冬場におでんやすき焼きなどの鍋物で食卓に登場する機会が多いが、夏場のメニュー提案はこれまで限られていた。近年、猛暑が続く中、夏場でもおいしく食べられるメニューとして『しらたきサラダ』を考案した。袋からしらたきを取り出し、水洗いし、キッチンバサミで食べやすくカットし、お好みのドレッシングをかけるだけ、わずか30秒で完成する。低カロリーで低糖質なだけでなく、豊富な食物繊維やカルシウムも摂取することもできる。手軽さ、健康性、美味しさを持ち合わせたメニューとして提案している。製造面においても、しらたきはこんにゃく粉をたくさん使うという側面があり、こんにゃく粉の余剰在庫を解消する手段としても有効だ。しらたきサラダが食文化として定着するよう、今後も活動に力を入れていく」
-インフルエンサーによる動画制作も行われた。
 「群馬県沼田市出身で世界的インフルエンサーとして知られるバヤシさんに知人を通して動画制作を依頼。バヤシさんは、地元を代表する特産品であるこんにゃくが消費減退や生産者減少などにより苦境に立たされていることを知り、快諾してくれた。県内の生産者から有志を募り、資金を集めたところ、186名がプロジェクトに賛同してくださり、動画作成が実現した。動画はチャンネル登録者数3210万人を誇るYouTubeチャンネル『バヤシTV』で公開。バヤシさん自身がしらたきサラダを食べ続けてダイエットにチャレンジする内容は反響が大きく、1月の公開後、動画の再生回数は約22万回を記録、コメント数も500件を超えている。足下でも再生回数は伸び続けており、まだまだ反響が大きくなることを期待している」
-試食イベントも頻繁に開催している。
 「伊香保温泉や渋川駅前、埼玉県川口駅前など県内外でしらたきサラダの試食会を実施して好評を得ている。実際に、食べてもらいその手軽さや美味しさを実感してもらうことが、大切だと考えている。食習慣を変えることは簡単なことではないが、草の根的な取組を続けることで、しらたきサラダを食卓の一品として定着させていきたい。試食会では3種のドレッシング(ごま、青しそ、シーザーサラダ)の人気投票を含めたアンケート調査も実施し、ただ試食するだけでなく、参加型のイベントにすることで、より関心を持っていただけるよう工夫している」
-今後について。
 「地元首長や議員を始めとした様々な方々のご協力により、個人や飲食店、自治体などにも、しらたきサラダの認知が広がりつつある。プロジェクトはまだスタートしたばかりだが、何十年後かに振り返った時に、あの時の取組があったからこそ今がある、と思えるよう全力で取り組んでいく。プロジェクトが始動してからたくさんの方にご協力頂き心から感謝を申し上げたい。生産量日本一を誇る群馬県のこんにゃく産業の持続可能な発展のため努力していきたい」
【2025(令和7)年4月1日第5191号4面】
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