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漬物JAS・全国漬物検査協会2025

<全漬検> 第33回漬物技術研究セミナー

宮尾会長
松岡氏
秋本氏
松本氏
熱心に聴講する出席者
秋本薫氏が講演 各社の研究発表も
 一般社団法人全国漬物検査協会(宮尾茂雄会長)は2月28日、東京都江東区の森下文化センターで第33回漬物技術研究セミナーを開催。全国から約100名が参加した。
 開会の挨拶に立った宮尾会長は、「このセミナーは学会とは違い、専門性の高い内容となっている。研究発表では各社が取り組んでいることや改善していることを発表していただく。敷居を低くして多くの方に参加していただきたいと思っているので、質疑応答などを通して漬物への理解を深めていただきたい」と述べた。
 特別講演では株式会社アキモ代表取締役社長の秋本薫氏とTOPPANデジタル株式会社事業推進センターNAVINECT本部シニアプロフェッショナルの松本博氏が講演を行い、昨年度の発表者5名に表彰状が授与された。
 高崎健康福祉大学教授の松岡寛樹氏がオブザーバーとして参加した研究発表では、株式会社新進企画開発本部マーケティング部広報室長の伊藤英明氏、東海漬物株式会社漬物機能研究所要素技術開発課の宝田美月氏、山形県工業技術センター食品醸造技術部主任専門研究員の長俊広氏、遠藤食品株式会社研究室課長の熊谷正幸氏がそれぞれの企業、施設で行っている取組を発表した(別掲)。
 秋本氏は「漬物製造工場におけるDXの実際」のテーマで講演。1979年にNECがパーソナルコンピュータを発売。父親は「将来、漬物屋でもコンピュータを使う時代が来る」と述べ、PCを購入してくれたことがコンピューターに興味を持つことのスタートとなった。
 1995年にインターネットエクスプローラーを実装したWINDOWS95が発売、誰もがPCを持つきっかけとなり、インターネット黎明期を迎えた。この時、インターネットの可能性に気付いて起業化したアメリカのドットコム企業、日本のインターネット関連企業は大きく躍進。特にアメリカの企業は世界を代表する大企業に成長。秋本氏は「成功するためには先が見えるかどうかということが重要だ」と述べた。
 DX化への第一歩としてペーパーレス化を推奨し、「ペーパー情報は入力しない限り計算ができないが、入力には手間がかかり、間違いも生じて保管に場所も取る」と説明し、自社の事例などを紹介しながらデータベース化、クラウド化、IoT化の重要性を強調。
 「DXの必要性を共通認識として全員に理解してもらわないといけないのだが、それを進められるのは社長か人望のある社員にしかできない」と会社全体で取り組むことが必要だと指摘した。
 続いて松本博氏は「製造業におけるDX化とデータ活用の課題と事例」のテーマで講演。紙ラベルを廃止し、環境負荷の少ない電子SCMラベルを導入するなど、デバイスによる物流ソリューションの事例を紹介した後、同社が提供する製造DXソリューション「NAVINECT」について解説。多様な事業・多数の自社製造拠点の問題解決で生み出した「総合ITソリューション」で、松本氏は「ペーパーレスから製造IoTまで製造業のDXに必要な11種類のパッケージによりお客様の課題を解決する」と説明した。
 研究発表後、全日本漬物協同組合連合会の真野康彦氏が「外国人技能実習制度の育成就労制度への移行」について情報提供を行い、現行制度と見直し後の内容について説明。育成就労制度は人材確保と人材育成が目的で、見直し後は育成就労で3年(原則)、特定技能1号で5年、特定技能2号で制限なしとなる。改正法施行は2027年だが、内容については検討中の要件もあり、漬物業界として意見を提出していることも明かした。
伊藤氏
[新進] 福神漬に親しむ取組を
 【企画開発本部マーケティング部広報室長の伊藤英明氏】
 テーマ「伝統の野菜食で子供たちに明日の食卓を」
 日本の伝統食として「一汁三菜」があり、漬物は香の物として欠かせない存在だったが、現在は食が多様化していることで和食文化が継承されない可能性がある。漬物業界として漬物の存在を見直し、昭和から100年にわたる日本の食卓や漬物の歴史、同社が取り組む食育活動を紹介した。
 子供たちに漬物を伝える扉とつながりを探し求め、同社が製造する福神漬に着目。福神漬はカレーの相棒で、大人も子供も大好きなメニュー。全国各地で開催されるカレーフェスに協賛出展し、カレーと福神漬の相性を再認識してもらい、家庭でも福神漬に親しんでもらえるよう取り組んでいる。
 2010年にはカレーの振興を図るため、7月29日を「福神漬の日」に制定した。その他、「福神漬を使ったレシピコンテスト」の開催やファミリー向けの料理教室を実施。また、やまうとの協業で小学生向け家庭科副読本を制作するなど、教育現場での取組も行っている。
宝田氏
[東海漬物] 漬物でナトカリバランス
 【漬物機能研究所要素技術開発課の宝田美月氏】
 テーマ「漬物のナトリウム・カリウム含量の実態とナトカリバランスについて」
 「漬物=高塩分」というイメージを持たれているが、漬物には野菜由来のカリウムが含まれている。漬物に含まれる塩分(ナトリウム)とカリウム量の実態を把握し、それを発信することで漬物のイメージを良くすることを目的に研究を行った。
 測定する漬物サンプルは消費者購買データを用いて漬物カテゴリー別に売上上位品を選抜。一部自社品を追加して合計473品を収集した。
 漬物100g当たりの塩分量平均は浅漬2・4g、キムチ3・1g、刻み漬3・8g、沢庵3・1g、梅干し8・1g、生姜漬5・8g、楽京漬1・9gだった。
 カリウムは漬物カテゴリーに幅広く含まれており、特にキムチには100g当たり約290mgと多く含まれていた。
 また、漬物を1食分に換算すると、塩分量は一部を除き1g未満であり、味噌汁1杯(1・1g)やお茶漬け1袋(2・2g)と比較しても漬物1食分に含まれる塩分量は多くはない、と言える。
 キムチ、浅漬、沢庵のナトカリ比は惣菜などの食品と比べても高くはなく、キムチや浅漬を食事に取り入れることでカリウムの摂取につながり、食事のナトカリバランスをよくすることができると考えられる。
長氏
[山形県工業技術センター] 微生物を制御し安定製造
 【食品醸造技術部主任専門研究員の長俊広氏】
 テーマ「やまがたオリジナル乳酸菌を使用したザワークラウト開発」
 ザワークラウト製品化の過程で自然発酵によるザワークラウト製造では仕上がりにばらつきが生じるという課題が挙げられた。その解決策として漬け込み工程の微生物制御を行うことによりザワークラウトの安定製造につながると考えた。株式会社本長と共同研究を実施し、山形県産サクランボ由来乳酸菌を活用したザワークラウト開発に取り組んだ。
 乳酸菌の選定、キャベツ抽出液を用いた発酵試験、選抜乳酸菌を活用したザワークラウト試作を実施。製造現場でのザワークラウト試作及び評価は、試作品と市販品2点について各種分析を実施したところ、試作品は市販品と比べて糖濃度、アミノ態窒素が高い傾向だった。
熊谷氏
[遠藤食品] 高塩のイメージ払拭へ
 【研究室課長の熊谷正幸氏】
 テーマ「栄養成分表示 常食量表示の取り組み事例」
 一般の人に伝えたいことは、「(現在の)漬物=低塩 健康」。各自治体のHPには健康な生活を送れるよう食生活に注意する文言が掲載されており、具体例として「漬物は控えましょう」と表記されているケースが多い。兵庫県の自治体では、減塩の仕方の例としてカレーライスに添えられているらっきょう甘酢漬5粒(-0・5g)を食べないことを推奨。食品ロスについては言及されていない。
 自社のイメージ調査では、アンケートで34・5%が「塩分が高い」と回答。一般の人のアンケートでも37・1%が「塩分が高い」と回答。ネガティブなイメージを持たれていることが分かった。
 冷凍食品を見ると、1食や1個当たりの食塩相当量を記載している商品が多数を占めている。商品の常食量は1食当たりのg数などを併記すれば事業者が決定できる。保健所に相談すると担当者は、「100g表記より実際に食べる量の表記の方が親切」と前向きな見解が示された。
 同社が製造するガリや紅生姜のミニパックは平均約5g。一般的な人が食べる量を想定し、ガリにおいては10gに設定した。現在、自社ブランド品全品を対象に表示を切り替えており、ガリの栄養成分表示は(1食:10g当たり)と表示し、食塩相当量は1・9gから0・2gに変更。今後もSNSなどを通じて「漬物は高塩」のイメージを払拭するPRを続ける。
【2025(令和7)年3月21日第5190号10面】
九州農産(宮崎県)
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