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全国漬物検査協会 2015~2018

平成30年度通常総会を開催

西村会長
 漬物の登録認定機関及びJAS格付のための依頼検査機関等である一般社団法人全国漬物検査協会(西村信作会長)は2018(平成30)年7月27日、東京ガーデンパレスにて平成30年度通常総会を開催。各議案を審議し、今年度の方針を決定した。漬物業界が抱える問題や課題が山積する中、改めて全日本漬物協同組合連合会(野﨑伸一会長)との連携を強化していくことを確認した。HACCPの制度化やJAS法の改正、外国人技能実習制度など、漬物業界を技術的な部分で側面から支援する全漬検の重要性は増すばかりで、業界の先導役として漬物の未来を切り拓いていく。
 平成32年4月より義務化となる栄養成分表示、平成33年1月から6月までに義務化される見通しのHACCP手法による衛生管理、昨年11月に改正された外国人技能実習制度…。漬物業界にも大きく関係する法令は時代とともに変化し、迅速な対応が求められている。対応できなければ事業を継続することができない。業界を取り巻く環境は厳しさを増している。最終的には各企業で法令に沿って対応しなければならないが、それをサポートする機関がある。それが全漬検だ。
 法律に精通しつつ技術を持つ専門家を抱え、全漬連を技術的な側面からカバーして漬物業界を安全・安心に導いている。9月2日に5回目の試験を実施する全漬連の漬物製造管理士技能評価制度や3月に作成した「漬物製造におけるHACCPの考え方を取り入れた安全・安心なものづくり」(小規模事業者向け衛生管理の手引書)にも大きく係わった。
大羽副会長
中田副会長
秋本常務理事
梅澤常務理事
前田顧問
 
全漬連・野﨑会長
赤﨑氏
竹澤氏

全漬連と連携を強化 JAS格付数量は3・7%増

全漬検総会の会場
講師派遣要請に対応
 団体会員等からの講師派遣・会員などの企業等からの問合せ・相談については、数多くの依頼、要請に対応。また、昨今の消費者の食品の安全・安心、さらには表示の信頼性等のニーズがますます高まる中で、漬物業界もこれらに的確に対応するために、会員企業や会員以外企業等などから、表示等(57%)、添加物等(8%)、法令等(35%)に関する問い合わせがあり、年間187件(会員63%、会員以外の漬物企業24%、その他13%)について、その対応を迅速、的確に行った。
 全漬検への問合せや質問は今後さらに増加すると見られ、その重要性は高まるばかりだ。全漬検ではJASマークの意義と認知度を向上させるため「JASマークは安全・安心の認証マーク」と表現してPRしているが、「全漬検は安全・安心の認証機関」であることが改めてクローズアップされている。
 総会は佐藤惠専務理事の司会進行で中田吉昭副会長の開会挨拶に続いて西村会長が挨拶を行い、「本会は全漬連事務局と同じ事務室で各々の業務を行っているが、全漬連が取り組んでいる外国人技能実習制度などの諸事業に技術面の積極的な協力や連携を行い、漬物業界の発展に寄与していきたい」と全漬連との連携強化を強調。今後も漬物業界発展のために尽力していく決意を表明した。
 来賓紹介の後、議案審議に移り、西村会長が議長を務めて議事を進行した。第1号議案ではJAS工場のJAS格付けのために行う本会への検査依頼に係るJAS格付数量は、前年度に比べて3・7%増と大きく増加。これは一昨年末に新規認証した白菜キムチJAS工場の本格稼働の寄与によるもの。一方、調味梅干し類を除き、しょうゆ漬け類などでは、天候不順による厳しい原料不足・原料高を避けられず、それらのJAS格付数量は前年のほぼ1割減となった。
 依頼検査関係業務の概要については、JAS格付のための依頼検査実績は1891件、2万584tで前年度の実1936件、1万9848tに対し、数量は大きく増加したが、目標数量の2万900tを316t下回った。その内容は天候不順・低温により秋・冬野菜の原料野菜が大きく不足して、しょうゆ漬け類7・3%、かす漬け類4・8%、みそ漬け類10・6%、酢漬け類6・6%減少した。なお、キムチ8・7%と大きく増加した。
 これは一昨年に認定した新規JAS工場の本格稼働が寄与したため。一方、猛暑対策や健康食志向により調味梅干は、前年度の11%増には及ばないが5・5%増となった。依頼検査規程に基づく検査は28件で、その内訳は衛生検査15件、栄養成分の検査12件、添加物の検査1件だった。前年度検査実績42件に対し14件減少した。
 平成28年度末(平成29年5月)現在における会員数はJAS工場会員83、一般会員42、団体会員24の計149だったが、本年度においては脱退会員3(JAS会員1、一般会員2)の異動があり、平成29年度末(平成30年5月31日)現在の会員数は、JAS工場会員82、一般会員40、団体会員24の計146会員となった。
 第2号議案の平成30年度借入金最高限度額承認の件、第3号議案の平成30年度会費及び徴収方法承認の件、第4号議案の役員報酬の最高限度額決定の件は原案通り承認、可決された。
 報告事項として、食品衛生法の一部改正法の概要、食品表示基準における製造所等及び製造所等の表示方法について、新しい栄養成分表示を行う際の留意点について説明。営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設については、要許可業種、要届出業種ともに拡大の方向となっていることが示唆された。
 続いて全漬連の野﨑会長が来賓挨拶に立ち、「全漬検様には漬物製造におけるHACCPの考え方を取り入れた手引書の作成にご尽力をいただき、感謝している。外国人技能実習制度についても外国人向けの試験を実施しなければならないので、今後も全漬検様の協力をいただきながら各事業を確立していきたい」と協力を求めた。
 最後に秋本大典常務理事が挨拶を行い、「全漬連と全漬検の事務所が一緒になり、協力して取組ができていることは業界にとっても大きなプラス。全国的には大雨の後に台風が到来するということで被災地の状況や野菜の生育が心配だが、みんなで集まって情報と意見を交換し、課題解決に向けて協力していきたい」と述べ、閉会となった。
 総会後、別室にて懇親会が開催され、開会の挨拶を行った大羽恭史副会長は「栄養成分表示、外国人技能実習制度など法律やその内容が変わってきており、問題は山積みとなっている。全漬検は漬物製造管理士技能評価制度においても技術面で貢献している。全漬検の取組みが業界の発展につながっている」と業界への貢献度の高さを強調した。
 続いて消費者庁食品表示企画課長の赤﨑暢彦氏と一般社団法人日本農林規格協会事務局長の竹澤忠文氏が来賓挨拶を行い、前田安彦顧問による乾杯発声で開宴。しばし歓談の後、梅澤敏晴常務理事による閉会挨拶で終了となった。
【記事一部抜粋、2018(平成30)年7月30日第4943号1、2面】
 
 

農産物漬物の関係規定集(抜粋)

※↑タイトルをクリックして開く、または右クリック「対象をファイルに保存」でダウンロードできます。
 
食品表示基準 (平成27年3月20日内閣府令第10号)における
農産物漬物の関係規定集(抜粋)
 
 この規定集は、厖大な「食品表示基準」の中から、農産物漬物の表示を行うための規定等を抜粋したもので、その構成を示し、関連する別表は該当する規定の後に配置して分かり易くした。
 農産物漬物に関連がなく省略した規定等については、食品表示基準の本文を確認されたい。
 
 消費者庁HP(http://www.caa.go.jp/)→食品表示→食品表示基準(内閣府令、PDF)
 

全国漬物検査協会 専務理事 佐藤惠氏 インタビュー

佐藤専務理事
HACCPもJASにお任せ
 JASとHACCPは同手順 格安で導入を指導

 食品の製造工程におけるHACCP(危害分析と重要管理点監視)システム導入の動きが本格化してきた。全国漬物検査協会(=JAS、西村信作会長)の佐藤惠専務理事にHACCPについて聞いた。全漬検ではHACCPに関する相談も受けている。
◇    ◇
 ―これまでの動きを
 厚生労働省は、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関するガイドライン」を平成16年2月に制定されました。これは、営業施設の衛生管理上の措置を条例で定める場合の管理運営基準準則について、CODEX委員会が示している食品衛生の一般原則を参考に全面的に見直し新たな指針として都道府県等に通知したものです。このガイドラインが昨年5月に改正されました。
 ―HACCPについては
 この改正されたガイドラインの中で、HACCPがCODEX委員会によりガイドラインとして示されてから世界各国では90年代後半から義務化を行い、国際標準として広く普及が進んでいます。日本では過去に食中毒の多かった食品業種を対象として、食品衛生法を平成10年に改正して日本版HACCPと称された「総合衛生管理製造過程」を創設しましたが、任意制度で対象が限定され、厳格かつ複雑なやり方などのため、その普及は限られたものでした。HACCPを導入して食品製造の衛生管理を強化することにより食中毒の発生等の防止につながるなど、食品の安全性の向上が期待されることからHACCPによる製造工程管理の普及を加速させる必要があります。また、食品の輸出にあたり、他国からのHACCPによる衛生管理が求められる場合もあることから、「従来の基準」に加え、新たに「HACCPを用いて衛生管理を行う場合の基準」を規定して、各都道府県等は関係事業者を指導するとともに、関係条例を改正して、この改正ガイドラインを義務化できるようにと通知しています。
 ―どこまで進んでいる
 HACCPに関する条例改正の進捗状況は今年の1月31日の段階で、条例改正ずみが9自治体。94自治体が議会に諮る準備を進めていました。告示・規則等で対応する4自治体と合わせて合計107自治体がHACCPに関する条例を改正する、しようとしています。先ずHACCPをやっていることを任意で届け出させて、保健所などの衛生監視員が見て指導するという形を進めていくと思います。
 ―漬物業界では
 HACCPとは、7原則12手順で進めていきますが、すでに、漬物業界では全日本漬物協同組合連合会(=全漬連)が平成13年のキムチを原因とするO‐157食中毒事件を受けて、14年に「HACCP手法を取り入れた浅漬及びキムチの製造・衛生管理マニュアル」を作成。さらに平成24年8月の札幌市での白菜浅漬けによるO-157集団食中毒事件を受けて、急遽26年3月にマニュアルを改訂しました。今年1月には公益社団法人日本食品衛生協会から全漬連に「食品製造におけるHACCPによる衛生管理の普及のための調査及び手引き作成事業」における「農産物漬物版」への協力要請があったようです。
 ―JASについて
 JASは品質を重要視した製造管理を行いますが、ベースになる安全は当たり前のこととしています。JAS認定工場制度では主に安全を担保する衛生管理はきちんとしよう、ということにしていました。漬物のJAS認定工場では食品事故や食品表示の問題などが起きたことはありません。
 ―JASとHACCPの違いは
 JASの認定工場における品質管理の実際(QC工程表等)と、HACCPにおける衛生管理上の危害分析、重要管理点、改善措置を行うことはほとんど同じ手順になります。つまり、JAS認定を受ければ、HACCPをやっていると言ってもいいのです。我々も、漬物のJAS認定工場の品質管理をチェックするだけでなく、漬物企業におけるHACCPに関するアドバイスも行うことができます。
 ―費用は
 本会の漬物のJAS認定工場の審査には、基本料金33万円にプラス審査員の旅費、税金の費用が必要になります。今後、全漬検にHACCPの指導を依頼する場合は、まだ正式には決めていませんが、基本料金10万円ぐらいにプラス旅費、税金になると思われます。最近、HACCPを認証します、というような認証機関が増えてきましたが、そういう団体や企業に頼めば百万円単位での費用がかかるとも言われていますので、全漬検はかなり、格安になるでしょう。
 
※2015(平成27)年4月27日第4801号1面掲載
  一般社団法人全国漬物検査協会(農水省HP)

全漬検 人材育成で講演会開く 発酵、塩、食品SM学ぶ

西村会長
大羽副会長
第6回営業マン、若手技術者のための講演会
 一般社団法人全国漬物検査協会(西村信作会長)は2015(平成27)年11月19日、東京都江東区の古石場文化センターにて「第6回営業マン、若手技術者のための講演会」を開催した。
 同講演会は漬物業界を担う人材育成を目的に漬物の知識や魅力を知り、今後の営業担当者のセールス、若手技術者の製造などに役立ち、求められるような知見を学ぶために実施されている。
 開会の挨拶に立った西村会長は昨今の経済状況に触れた上で、「私ども全漬検は漬物業界の体力強化のために、漬物に携わる個人の職務能力の向上に役立つような基本的な知識を学ぶ機会を設けたいとの提案があり、この講演会を実施することとなり今回で6回目となります」と説明した。
 食に関わる問題として有名ホテル・レストランのメニューや肥料成分の偽装表示、北海道における浅漬の食中毒事件を挙げ、「行政当局も衛生管理の指導強化に取り組んでいるところですが、一層自らも衛生管理に力を入れるようにして頂きたく存じます。漬物には原料原産地表示が特別に課されており、他の食品表示との不公平感は否定できませんが、嘘や誇大表示を行わないこと、安全な漬物を作ることが今までよりも大事になってきております」とし、「お忙しい中、来て下さった皆様にとってこの講演会が役立つことがあれば幸いでございます。会社に持ち帰るとともに、日々の業務に生かしていただきたいと思います」と有効活用を呼びかけた。
 続いて大羽恭史副会長(技術委員会委員長)は原料価格の高騰について「何とか野菜の価格を商品の販売価格に結び付けたいところですが、なかなか難しく、各社大変苦しんでおります。ただ10月になってやっと価格が安定してきたということで、これからしっかりと利益を出していって頂きたい」と好転したと指摘。また、米の値上げについて「今年は豊作ということですが、飼料米という動物の餌にする米を2年前から政府が奨励しておりまして、それでも農家の方が作ってくれないので、また大幅に補助金を増やしたことが要因のようです。家畜が人間よりも高い米を食べるというおかしな状況になっております。しかし、幸いなことに飼料米を作ることは誇りにかけてもやりたくないという農家の方もいらっしゃいます。世の中、TPPもあり変わっていきますが、我々も心ある農家と志をもって商売に励みたいと思います」とした。
 講演会は東京家政大学教授の宮尾茂雄氏、公益財団法人塩事業センター元海水総合研究所所長・元東海大学非常勤講師の橋本壽夫氏、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会プランニングマネージャーの籾山朋輝氏の3氏が講演。参加者一同、知見を広げた。
 

3氏の講演内容

宮尾茂雄氏 「発酵はじめ健康機能を全面に」

宮尾氏
 「漬物の魅力と健康力」の演題で講演。はじめに漬物の魅力について、歴史、和食との関連性、塩の役割を解説。漬物は飛鳥時代の木簡における記述をはじめその歴史は古く、江戸時代には現在の漬物の多くが揃い、商売として成立。技術・物流の進歩により近代化・工業化し、現在に至るとした。和食の基本である一汁三菜について香の物が必須であり、現在の欧米化が進む食事に対し、糖分や脂質を減らす必要があり、漬物の消費も多かった1980年代の食事が理想である。塩の役割については浸透圧作用、酵素作用、発酵作用から漬物の旨さを引き出す大きな役割を果たしているとした。
 漬物の健康力においては、漬物は食物繊維、ミネラル、ビタミン、乳酸菌、機能性成分を豊富に含み、食物繊維は生活習慣病、特に心筋梗塞を抑制する。生の野菜に比べ、食物繊維が豊富に摂れるとした。また、漬物は塩分を排出するカリウムを豊富に含み、漬物に含まれる植物性乳酸菌は動物性に比べ、より酸抵抗性が強く、腸内生残率が高いことを紹介。加えて、漬物の発酵の程度の概念を提唱し、発酵とは連続的なものであり、その段階に応じて微発酵、温和発酵(マイルド)、軽度発酵(ライト)というように表記し、健康イメージの強い発酵を全面に出すべきと述べた。
 最後に今後のPR活動の推進について言及。健康機能をアピールするとともに、若年層や主婦層に向けて「若い人に受けるようなデザインなど手に取らせる工夫が必要です。また、子供の頃から馴染ませることも大切で、地域活動や工場見学など漬物に親しみを持つような活動に取り組んで頂きたい」と結んだ。
 

橋本壽夫氏 「一律的な減塩政策の危険性」

橋本氏
 「食品加工に不可欠な塩がはたして悪者か?」の演題で講演を行い、国際的に進められている減塩政策が正しい保健政策であるかを検証した。
 はじめに甘味や旨みの強化など対比効果や酸味や苦みに対する抑制効果、漬物における浸透圧など食品加工における塩の役割や、塩の種類と品質、生命維持に不可欠な塩の人体における働きを説明。続いて、塩が悪者とされた背景について、食塩と高血圧に関する研究の流れを解説し、結果「塩の摂取量が高血圧症の原因との仮説は未だに証明されていない」とした。
 また、減塩の効果と危険性について言及し、減塩の効果を示すのは塩感受性の人だけで、全体では30%程度であり、心筋梗塞を起こす危険性が高まる、下痢、高熱、出血に対する抵抗力が下がる等その危険性を示した。
 最後に減塩を巡る論争を紹介。一律に減塩させる保健政策は次第に劣勢になってきてきたが減塩推進派、減塩を心掛ける適塩推進派、反減塩派、現状の摂取量を適正とする現状肯定派の他、野菜(カリウム)や酪農製品(カルシウム)といった高血圧予防食(DASH食)を多く食べ、減塩しない食生活で血圧を下げるなど多くの減塩に対する考え方があり「塩は必ずしも悪者ではない。ほとんどの人々にとって塩は良い物であり、一部の人にとっては悪者となる。その簡単で絶対的な見分法はまだ見つかっていない」と見解を示した。
 
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