香港視察研修旅行
発足後初の研修で香港へ 香港金久や四洲集団を訪問
日本漬物産業同友会(宮前有一郎会長)は2018(平成30)年10月30日~11月2日、香港視察研修旅行を実施した。同会の前身である日本漬物輸入事業協同組合はその名の通り、原料輸入や新たな産地開拓を主な事業としていたが、時代とともに組合の役割と求められる内容が変化したこともあって昨年9月に解散。しかし、宮前会長と遠藤栄一副会長を中心に、国内外の原料対策や輸出などをテーマとする日漬輸の後継団体として今年5月に発足。今回の香港研修は発足後初の海外研修で、業界にとっても今後への期待が膨らむ内容となった。
株式会社東京にいたか屋(中川英雄社長、東京都中央区日本橋)のグループ企業である香港金久有限公司の事務所、工場、売場をはじめ、香港・食品製造販売大手の四洲集団有限公司、JETRO香港などの訪問、視察を行い、香港の食品事情について情報を収集。現地の小売店では菓子や飲料、酒、加工食品などの日本製品が日本と同じデザインで販売されている他、日本産の青果物が高付加価値商品として目立つように陳列されていた。食料品の支出額が15・9%と日本の約1・7倍の香港では、美味しさや安心・安全の観点から日本製品の人気が高く、日本ブランドが確立されている。日本食レストランも増加傾向で、香港の飲食業界において日本食が重要な存在となっている。また、昨年1年間で香港の訪日観光客は過去最高の223万人に上り、日本で本物の味を食べた経験から香港での日本食にもクオリティを求めるようになってきている。本物の味にこだわるメーカーの商品は香港でも確かなニーズがあるだけに、輸出を視野に入れる企業にとっては有益な研修旅行となった。
株式会社東京にいたか屋(中川英雄社長、東京都中央区日本橋)のグループ企業である香港金久有限公司の事務所、工場、売場をはじめ、香港・食品製造販売大手の四洲集団有限公司、JETRO香港などの訪問、視察を行い、香港の食品事情について情報を収集。現地の小売店では菓子や飲料、酒、加工食品などの日本製品が日本と同じデザインで販売されている他、日本産の青果物が高付加価値商品として目立つように陳列されていた。食料品の支出額が15・9%と日本の約1・7倍の香港では、美味しさや安心・安全の観点から日本製品の人気が高く、日本ブランドが確立されている。日本食レストランも増加傾向で、香港の飲食業界において日本食が重要な存在となっている。また、昨年1年間で香港の訪日観光客は過去最高の223万人に上り、日本で本物の味を食べた経験から香港での日本食にもクオリティを求めるようになってきている。本物の味にこだわるメーカーの商品は香港でも確かなニーズがあるだけに、輸出を視野に入れる企業にとっては有益な研修旅行となった。
香港金久 中川英雄社長挨拶 会社の概要と経緯を説明
「香港金久の売上は自社製造製品が2億5000万円、仕入れが2億5000万円、果物の輸入が10億円、野菜の輸入が3億円、日本食の輸入が3億円。1992年に金久がヤオハンとともに香港に進出したが、2001年に倒産した。当時、我々はアメリカで漬物を販売していた実績があったので、お話しをいただいて後を引き受けることにした。自社製造と輸入の商品をスーパーのテナントで販売したが、売上は1億2000万円程度と伸び悩んでいた。その後、レストランに業務用の商品を卸すようになって売上が2億円を超えるようになった。漬物をコツコツと販売していたのだが、空いているコンテナに何か詰めないか、ということで2003年から果物の輸入を始めた。日本の果物は高くて売れないというイメージを持たれていたので、当時は誰もやっていなかった。2011年の東日本大震災後、日本産のものは全て輸入禁止になってしまったため、売上が落ちた。香港でできる事業をテコ入れして対応した。当時の為替は1ドル75円と円高だったが、その後125円になって果物も値ごろ感を出せたことで売上が回復した。香港では、日本産の製品は美味しくて安心というイメージを持たれている。2014年から売上が伸びてきて、ここ1、2年は日本食の人気が高まってきた。近年は多くの企業が参入し、競争が激しくなっているが日本の漬物を専業で取り扱っているのは弊社だけ。主要なSMにはテナントが入っていて、現在は21店舗を展開している。香港金久の名前は知られており、漬物販売と果物の輸入を主な事業としている」
【2018(平成30)年11月19日第4956号1、10、11面掲載】
原料対策委員会で情報交換 限られた原料を大事に売る
日本漬物産業同友会(宮前有一郎会長)は2018(平成30)年9月4日、東京都中央区銀座のSun‐mi高松7丁目店にて原料対策委員会(梅澤綱祐委員長)を開催した。
委員会は梅澤委員長が司会を務め、浅漬、梅、生姜、らっきょう、塩漬け野菜、沢庵と漬物原料別に近年の作付状況と今後の見通しを中心に情報交換を行った。梅澤委員長は「前身となる日本漬物輸入事業協同組合のこの時期の会合では酢漬を中心に情報交換を行っていたが、本日は全てのジャンルを網羅する形で実施したいと思っている。時間も均等にして業界の課題や問題を共有したい」と開会の言葉を述べた。
委員会は梅澤委員長が司会を務め、浅漬、梅、生姜、らっきょう、塩漬け野菜、沢庵と漬物原料別に近年の作付状況と今後の見通しを中心に情報交換を行った。梅澤委員長は「前身となる日本漬物輸入事業協同組合のこの時期の会合では酢漬を中心に情報交換を行っていたが、本日は全てのジャンルを網羅する形で実施したいと思っている。時間も均等にして業界の課題や問題を共有したい」と開会の言葉を述べた。
【漬物全体の動きと浅漬】昨年11月から白菜の価格が上昇し、各社苦労が多かった。多雨、日照不足が主な原因。5月の連休前は落ち着いたが、6月からまた高くなった。年間で原料を契約しているところは良かったが、市場買いしているところはかなり厳しかった。全般的に売れた割には利益を確保することは難しかった。
その他、野沢菜、高菜、大根、胡瓜、茄子など漬物の主力となる原料が不足気味で、適正価格にして大事に売っていかないと供給することができない。全国的に原料供給の問題を抱えており、以前よりは適正な価格で販売できるようになってきた。今後は青果の価格に合わせた規格にしないと商売として成り立たなくなる。
【梅】6月と7月は酢漬の動きが良かったが、梅干はそれ以上の動きで過去50年と比較してもこんなに売れたことは初めて。7月にテレビで梅干の健康機能性が紹介されたことがきっかけとなり、猛暑が続いたこともあって普段の年の2、3倍は売れた。しかし、製造が追いつかず、出荷調整を余儀なくされている。例年より早く新物を出す流れで、小梅やかりかりにも波がきている。今年の紀州は豊作なので、今後も期待できる。
山梨も豊作となった。昨年まで2年連続の不作だったが、今年はタンクがいっぱいになる量を漬け込めた。1年の流れを見て大事に売っていく方針。
中国産も平年より若干良い作柄。雨不足で小玉傾向。生の価格は、不作だった昨年よりも大幅に下がっている。中国国内では梅の需要が旺盛で、価格次第では日本向けの量が減少していくことが懸念される。
その他、野沢菜、高菜、大根、胡瓜、茄子など漬物の主力となる原料が不足気味で、適正価格にして大事に売っていかないと供給することができない。全国的に原料供給の問題を抱えており、以前よりは適正な価格で販売できるようになってきた。今後は青果の価格に合わせた規格にしないと商売として成り立たなくなる。
【梅】6月と7月は酢漬の動きが良かったが、梅干はそれ以上の動きで過去50年と比較してもこんなに売れたことは初めて。7月にテレビで梅干の健康機能性が紹介されたことがきっかけとなり、猛暑が続いたこともあって普段の年の2、3倍は売れた。しかし、製造が追いつかず、出荷調整を余儀なくされている。例年より早く新物を出す流れで、小梅やかりかりにも波がきている。今年の紀州は豊作なので、今後も期待できる。
山梨も豊作となった。昨年まで2年連続の不作だったが、今年はタンクがいっぱいになる量を漬け込めた。1年の流れを見て大事に売っていく方針。
中国産も平年より若干良い作柄。雨不足で小玉傾向。生の価格は、不作だった昨年よりも大幅に下がっている。中国国内では梅の需要が旺盛で、価格次第では日本向けの量が減少していくことが懸念される。
【生姜】タイは例年通り3月上旬から作付がスタート。生姜価格が3年連続で安かったため作付面積の減少が予想されていたが、2017年度産の生鮮生姜の販売が好調だったこともあり、昨年並みの作付面積となった。量的な問題はないが、日本からのオーダーがないと漬け込まなくなってきている。収穫は7月25日からスタートしたが、がりの期間が短くてハーフが早いため、品質チェックが重要。
中国南部は昨年の生姜価格が安いため作付面積が25%減少した。8月1日から収穫がスタートし、栽培に適した天候が続き作柄は良く、品質も良好。生姜原料価格は昨年並みの見通し。
山東省は2017年度産の生姜価格が高かったため、作付面積が1割増加。6月、7月、8月と豪雨に見舞われ、産地によって水害の影響に差があり、早期収穫を余儀なくされたところもあった。収穫は平年より遅く8月下旬からスタート。今年はスジの入りが早く、がりの期間が短かった。山東省の価格は高値となった昨年並かそれ以上になると予想。他の産地との価格差がなくなってきている。
まだ試行錯誤の状況だが、中国で契約栽培を行っている。加工業者が有利となる契約ではなく、農家が希望する金額を聞いて相談しながら価格を設定して取組んでいる。
【らっきょう】らっきょうの健康機能性がテレビで紹介された昨年11月以降、売れ行きは好調に推移している。作付面積は3~4割減の見通し。大きな理由は中国の環境問題。環境対策に乗り出した政府が工場の排水処理施設などを厳しくチェック。それによって多くの塩蔵工場が稼働できなくなった。農家はらっきょうを作っても下漬メーカーが購入しなくなる、という流れが作付面積の減少につながっている。生価格の上昇に加え、工場の排水施設を増築または改築することによってコストがアップ。原料価格にも反映されると予想される。
国産は産地によって作柄が異なり、宮崎は不作で大玉傾向だった昨年と変わり、今年は平年作で粒も小さめ。鳥取の作柄は悪かった。量販用の原料としてはちょうど良いサイズ。
【塩漬け野菜】四葉胡瓜の産地は生産者の減少に伴い作付面積も減っている。環境対策が強化され、漬け込み工場が閉鎖に追い込まれる傾向にある。7月と8月の大雨で収穫期間が短く、生価格は昨年並みが上昇基調。原料価格も上がる見通し。日本向けの出荷が多いトキワ胡瓜の収穫量も少ない見込みで、環境対策のコストアップを考えると原料価格も上昇する見通し。にんにくの生価格は4、5年前の価格に戻ってきた。投機マネーの流入によりおととしは前年の4~5倍に暴騰したが、昨年は3割下がった。日本への輸出コストが上がっている他、現地でも後継者不足、人手不足が課題となっている。
昨年の国産大根は不作だった地域が多く、農家の負担を軽減していかないと作付面積は減るばかり。国産胡瓜は4月以降、価格が上がったり下がったりと波が大きくなっている。各社ともに昨年の高い原料を持っており、漬け込み意欲は高くない。
【沢庵】九州は4年連続不作で、2年連続2割以上の減となっている。干し沢庵原料はタイトで、新物までつなげるため規格変更が必要な状況。大根を干す作業は重労働なので生産量が増える見込みはない。価格改定も進めているが、限りある原料を大事に売っていく必要がある。
2017年産の新潟は不作ではなかったが、1本物に使用する原料が少なかった。1本物の売れ行きは好調。原料不足のため、ミニサイズの製造をストップし、1本物に注力した。新潟の今年の春大根は微減。今後、作付が増えることはなく、どうやって減少の幅を少なくするかが課題。大根を収穫するハーベスタを導入し、生産者の負担を軽減している。
べったら漬用の大根は日照不足で小さめのものが多い。ここ数年、原料確保は難しくなっており、今の製品価格で原料を生産している農家にどうやって還元していくかが課題。売れ行きは良いので、原料の安定供給が最大のポイント。
【その他】ナフサ価格の高騰により樹脂メーカーが値上げ。この原料値上げに伴って、フィルムメーカーも値上げした。ダンボールも中国が日本の古紙輸入を再開したことで高値となっており、価格も上昇していく見通し。容器関係も原料のナフサ、樹脂の価格が上昇したことで値上げの動きが進んでいる。また、物流コストの上昇も懸念材料。
【宮前会長総括】国内に限らず、海外産地でも毎年10%の単位で原料の収穫量が減っているという話が2、3品目あった。1次加工の業者は一度止めると戻ってこない。このままでは10年後にどうなってしまうのか。本日の話の中には所得が問題ではなく、重労働が問題となっているという報告があり、お金の問題ではなくなってきているということに危機感を覚えた。今後はモチベーションが高い農家に集約する形で、機械化を進めるなどの対応を取っていく必要がある。限られた原料を大事に売っていく、という考えを常に持っておかなければならない。我々の世代は将来のことを考え、このような会を活用して少しでも長く事業を続けられるように頑張っていきたい。
中国南部は昨年の生姜価格が安いため作付面積が25%減少した。8月1日から収穫がスタートし、栽培に適した天候が続き作柄は良く、品質も良好。生姜原料価格は昨年並みの見通し。
山東省は2017年度産の生姜価格が高かったため、作付面積が1割増加。6月、7月、8月と豪雨に見舞われ、産地によって水害の影響に差があり、早期収穫を余儀なくされたところもあった。収穫は平年より遅く8月下旬からスタート。今年はスジの入りが早く、がりの期間が短かった。山東省の価格は高値となった昨年並かそれ以上になると予想。他の産地との価格差がなくなってきている。
まだ試行錯誤の状況だが、中国で契約栽培を行っている。加工業者が有利となる契約ではなく、農家が希望する金額を聞いて相談しながら価格を設定して取組んでいる。
【らっきょう】らっきょうの健康機能性がテレビで紹介された昨年11月以降、売れ行きは好調に推移している。作付面積は3~4割減の見通し。大きな理由は中国の環境問題。環境対策に乗り出した政府が工場の排水処理施設などを厳しくチェック。それによって多くの塩蔵工場が稼働できなくなった。農家はらっきょうを作っても下漬メーカーが購入しなくなる、という流れが作付面積の減少につながっている。生価格の上昇に加え、工場の排水施設を増築または改築することによってコストがアップ。原料価格にも反映されると予想される。
国産は産地によって作柄が異なり、宮崎は不作で大玉傾向だった昨年と変わり、今年は平年作で粒も小さめ。鳥取の作柄は悪かった。量販用の原料としてはちょうど良いサイズ。
【塩漬け野菜】四葉胡瓜の産地は生産者の減少に伴い作付面積も減っている。環境対策が強化され、漬け込み工場が閉鎖に追い込まれる傾向にある。7月と8月の大雨で収穫期間が短く、生価格は昨年並みが上昇基調。原料価格も上がる見通し。日本向けの出荷が多いトキワ胡瓜の収穫量も少ない見込みで、環境対策のコストアップを考えると原料価格も上昇する見通し。にんにくの生価格は4、5年前の価格に戻ってきた。投機マネーの流入によりおととしは前年の4~5倍に暴騰したが、昨年は3割下がった。日本への輸出コストが上がっている他、現地でも後継者不足、人手不足が課題となっている。
昨年の国産大根は不作だった地域が多く、農家の負担を軽減していかないと作付面積は減るばかり。国産胡瓜は4月以降、価格が上がったり下がったりと波が大きくなっている。各社ともに昨年の高い原料を持っており、漬け込み意欲は高くない。
【沢庵】九州は4年連続不作で、2年連続2割以上の減となっている。干し沢庵原料はタイトで、新物までつなげるため規格変更が必要な状況。大根を干す作業は重労働なので生産量が増える見込みはない。価格改定も進めているが、限りある原料を大事に売っていく必要がある。
2017年産の新潟は不作ではなかったが、1本物に使用する原料が少なかった。1本物の売れ行きは好調。原料不足のため、ミニサイズの製造をストップし、1本物に注力した。新潟の今年の春大根は微減。今後、作付が増えることはなく、どうやって減少の幅を少なくするかが課題。大根を収穫するハーベスタを導入し、生産者の負担を軽減している。
べったら漬用の大根は日照不足で小さめのものが多い。ここ数年、原料確保は難しくなっており、今の製品価格で原料を生産している農家にどうやって還元していくかが課題。売れ行きは良いので、原料の安定供給が最大のポイント。
【その他】ナフサ価格の高騰により樹脂メーカーが値上げ。この原料値上げに伴って、フィルムメーカーも値上げした。ダンボールも中国が日本の古紙輸入を再開したことで高値となっており、価格も上昇していく見通し。容器関係も原料のナフサ、樹脂の価格が上昇したことで値上げの動きが進んでいる。また、物流コストの上昇も懸念材料。
【宮前会長総括】国内に限らず、海外産地でも毎年10%の単位で原料の収穫量が減っているという話が2、3品目あった。1次加工の業者は一度止めると戻ってこない。このままでは10年後にどうなってしまうのか。本日の話の中には所得が問題ではなく、重労働が問題となっているという報告があり、お金の問題ではなくなってきているということに危機感を覚えた。今後はモチベーションが高い農家に集約する形で、機械化を進めるなどの対応を取っていく必要がある。限られた原料を大事に売っていく、という考えを常に持っておかなければならない。我々の世代は将来のことを考え、このような会を活用して少しでも長く事業を続けられるように頑張っていきたい。
【2018(平成30)年9月10日第4948号1、2面】