企業紹介
1957年(昭和32年)創業で、漬物を主軸に佃煮、豆腐、納豆、麺など日配のプロとして全国に物流網を持つ山重。おいしさの「開発・開拓・提案」を使命とし、メーカーとともに新たなニーズの創造による新製品開発を行い、メーカー、得意先双方の永続繁栄を目指している。
その手法は単に商品を物流に乗せるだけではなく、メーカーとの共同開発で様々な企画や売場提案を行いながら量販店、外食・中食、ベンダーなど幅広い販売チャネルに供給。開発力と提案力を併せ持つ同社は、業界内外から高く評価され、信頼も厚い。
取引企業は約230社で、取扱いアイテム数は1万品以上。目利きのプロが全国各地に赴き、地域特産品の発掘や掘り起こしに注力。その土地ならではの美味しいもの、季節や産地野菜へのこだわり、消費者の視点から生まれた品々、自然派志向の健康食品など幅広い品揃えで販売促進をバックアップする。
企業情報
会社 | 株式会社 山重 |
代表 | 代表取締役社長 杉山 博 常務取締役 前野 陽右 取締役 北 洋之 |
創業 | 1957年(昭和32年)1月 (設立 1963年(昭和38年)4月 ) |
事業目的 | 漬物及び食品の荷受問屋(一次問屋) |
住所(本社) | 【営業本部】 〒124-0021 東京都葛飾区細田1-22-6 TEL 03-6458-0925(代) FAX 03-6458-0926 【北海道/東北エリア(山形・宮城常駐)】 【物流センター】 〒341-0018 埼玉県三郷市早稲田7-32-5 TEL 048-958-3323(代) FAX 048-958-1662 |
資本金 | 1,200万円 |
売上高 | 40億円(平成29年3月)第54期 |
従業員 | 40名(平成29年4月現在) |
HP |
SMTS特別インタビュー
株式会社山重 代表取締役社長 杉山 博氏
待ったなしの物流問題対応 消費者需要にマッチした商品を提案
株式会社山重(杉山博社長、東京都葛飾区)は、漬物をはじめ日配のプロとして全国に物流網を持つ一次荷受問屋。取引先は全国44都道府県、仕入れ件数は346件と地方の名産品も数多く取り扱っている。同社は単に商品を物流に乗せるだけではなく、メーカーと商品を共同開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給してきた。開発力と提案力を併せ持つ同社は業界内外から高く評価された歴史があり、厚い信頼を寄せられている。業界を取り巻く環境は厳しさを増しているが、杉山社長は改めてメーカーとともに消費者に求められる商品を作っていく姿勢を強調した。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐今期の業績は。
「今期の売上は12月までで前年比増となっており、まだ2月と3月の動きは読めないが、通年で増収、利益は前年並みと予想している。消費者の需要にマッチした商品を提供できたことが結果的に増収につながったと考えている」
‐課題が山積する中、利益の確保について。
「エネルギー価格や物流費の上昇で利益の確保は難しくなってきている。5月から再び電気代が上がる見通しで、これまで以上にコストダウンを図っていく必要がある。2024年物流問題は大きな問題で、運べる量が減って物流費が上がっても商品の価格に簡単には転嫁することはできないため、様々なことを視野に入れて取り組んでいきたいと考えている。当社は三郷に物流センターがあり、全国のメーカーの商品を一括管理して東日本を中心に全国へ供給できる。小分け販売や小回りの効く供給も可能だ。流通が短絡化にあると言われる今日でもメーカーだけではなく、問屋や流通からも山重が間に入ってくれている方がありがたい、と言っていただける企業で在り続けたい」
‐物流費上昇に伴う値上げの動きは。
「1月下旬の時点で値上げの商談はほぼないので、春夏の棚割りで値上げは実施されない。次のタイミングは早くても秋冬向けとなる。漬物についてはこの数年で適正な価格になり、海外原料や海外完成品は2回、3回値上げした商品もあるが、国産や国内加工品も含めて一巡した流れとなっている。だが、その後も原材料や調味資材などのコストが上がり続けており、適正価格にするために2回目の値上げが必要な状況となっているが、競合の動きや消費者離れを招く可能性もあるため、慎重な判断が必要と考えている」
‐今後の値上げの見通しは。
「数度の値上げを経ても売れ行きが落ちていないマクドナルドやパン製品の動きを見ても分かるように、必要なものや生活必需品、食べる価値のあるものは値上げをしても売れ続けるが、漬物は主菜ではなく副菜なので値上げをすると数量の減少につながりやすい。ブランド力のある商品でも値上げ後に数量が大幅に減少した例もあり、積極的に値上げに動いているメーカーは少ない。困難な状況下こそ『消費者が何を求めているのか』という構造を分析することが重要であり、必要とされる理由や食べる動機を消費者に訴求することが大切で、健康のために野菜を摂取するという観点の他、乳酸菌、発酵食品、食物繊維など有用なポイントをアピールしつつ、料理素材としても利用できることをPRし、用途の拡大を目指したいと思っている。若い人はテレビを見ないので、情報を発信するツールも考えなければならないし、売り方についても根本から見直す必要がある」
‐来期の見通しと抱負を。
「昨年5月にコロナが5類に移行し、外食が回復してきていることから業務用にも力を入れていきたいと考えている。また、引き続きドラッグストアが伸びると見ている。薬品や化粧品といった主力商品に加え、食品の構成比も上がっているが、まだまだ伸びる要素はある。量販店の漬物売場は頭打ちで変化が求められている。我々も含めて消費者のニーズをキャッチして売場に落とし込んでいくことが重要で、商品を橋渡しするだけの問屋は必要とされない。日本は他国に比して商品が多品種小ロットが好まれており、ニッチな需要も今後増加すると予想している。消費者の需要が何かを調査し、その情報を関係各位にお伝えすることにより、商品を提供し続ける『新たな問屋』を目指していく」
【2024(令和6)年2月11日第5153号15面】
2月11日号 SMTS特別インタビュー
株式会社山重 代表取締役社長 杉山博氏
原点回帰で新たなスタート
ニーズを創造し需要開拓
株式会社山重(東京都葛飾区)は、漬物をはじめ日配のプロとして全国に物流網を持つ一次荷受問屋。取引先は全国44都道府県、仕入れ件数は346件と地方の名産品も数多く取り扱っている。同社は単に商品を物流に乗せるだけではなく、メーカーと商品を共同開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給。開発力と提案力を併せ持つ同社は業界内外から高く評価され、厚い信頼を寄せられている。杉山博社長に今期の業績及び来期の見通しについて話を聞いた。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐漬物の売れ行きと今期の業績について。
「漬物の売れ行きは全般的に増加要因が見当たらない。巣ごもり需要の反動もあるが、特に浅漬の動きが悪く、売場も縮小傾向にある。コロナ禍で需要が増えたキムチも落ち着いている。消費者の所得が増えない中、燃料費高騰による様々な物価上昇が家計を圧迫し、購買意欲の低下対象商品として漬物が含まれている感がある。弊社は3月決算で未だ確定していないが、厳しい外的要因の中、前年比並みの売上を維持したものの、事務所移転に伴うコストにより減益の見通しだ」
‐昨年10月に事務所を埼玉から東京に移転した。
「弊社は4月から61期となる。漬物業界の構造的問題を打破するためには、創業者が築いた経営理念に改めて向き合うことが大事であると考え、原点回帰の意味を込めて、葛飾の事務所に5年ぶりに戻ってくる形となった。内装も一新し、新たな気持ちで事業を行っていきたいと考えている」
‐漬物売場について。
「消費者は生野菜を食べるが、野菜の加工品は食べない。漬物の歴史を振り返ると、『生野菜を食す』『主食のお供』としての関係がマッチして漬物が広まったが、現代ではこの2つに何か見えない壁のようなものがあると思っている。その壁を打ち崩さない限り、漬物の需要は増えない。この壁を取り崩す提案を行うことこそが当社の使命だと考えており、61期より仕掛ける予定でいる。一方、現状の商品群に目を置くと、新商品が消費者の購買意欲を沸かせる大きな差別化までには至っていないのではないかと考えている。そこで注目されるのが地方の名産品だ。近年では、『山形のだし』や『いぶりがっこ』が地方で発掘されて広域流通につながった。日頃からアンテナを高く張り、そのような商品を見つけて提案するのが問屋の本質であるが、その部分こそが他社にない当社の強みだと思っている」
‐昨年から続く値上げの動きは。
「漬物売場でも値上げの動きは増えているが、肌感では全体の6、7割くらいに留まっている。カテゴリーにもよるが、商品の切り替えや消費者離れを懸念して値上げに踏み切れないメーカーも数多く存在する。弊社は値上げの要請があれば得意先に案内を行うが、まだ様子を見ているところもある。原材料価格が上がり、包装資材や調味料の他、電気代、燃料代、物流費などのコストが上昇する中、価格転嫁しなければ採算が合わなくなる。更に、巣ごもり需要の反動による漬物業界の規模縮小によって体力勝負の様相となっており、特に、価格転嫁をストレートに反映できない中小企業には大きな影響が出てくるだろう」
‐ 一次荷受問屋である御社の役割は。
「我々に求められているのは提案力。メーカーと協力して新たな商品を開発し、ニーズを創造していくことは経営方針でもある。少子高齢化や単身世帯の増加などを考えると、食品業界において伸びていくのは惣菜と冷凍食品。漬物を従来の売場だけで販売していても市場を維持することはできない。それならば、惣菜売場で販売できる惣菜風の漬物を開発したり、関連販売で漬物を置けるような提案を行っていくことが必要だ」
‐新しい事業や取組について。
「まだ詳細は言えないのだが、新しい需要の開拓という意味では幅広い人へのPRが重要で、漬物をより身近に、より便利に利用できる情報を提供していきたいと考えている。価値のある、すなわち『食したい、買いたい』という購買意欲を湧き立たせる漬物ならば、適正価格でも販売が可能であると考えている。間もなく迎える61期から新たな仕掛けを行っていきたいので、ご期待いただきたい」
◇ ◇
‐漬物の売れ行きと今期の業績について。
「漬物の売れ行きは全般的に増加要因が見当たらない。巣ごもり需要の反動もあるが、特に浅漬の動きが悪く、売場も縮小傾向にある。コロナ禍で需要が増えたキムチも落ち着いている。消費者の所得が増えない中、燃料費高騰による様々な物価上昇が家計を圧迫し、購買意欲の低下対象商品として漬物が含まれている感がある。弊社は3月決算で未だ確定していないが、厳しい外的要因の中、前年比並みの売上を維持したものの、事務所移転に伴うコストにより減益の見通しだ」
‐昨年10月に事務所を埼玉から東京に移転した。
「弊社は4月から61期となる。漬物業界の構造的問題を打破するためには、創業者が築いた経営理念に改めて向き合うことが大事であると考え、原点回帰の意味を込めて、葛飾の事務所に5年ぶりに戻ってくる形となった。内装も一新し、新たな気持ちで事業を行っていきたいと考えている」
‐漬物売場について。
「消費者は生野菜を食べるが、野菜の加工品は食べない。漬物の歴史を振り返ると、『生野菜を食す』『主食のお供』としての関係がマッチして漬物が広まったが、現代ではこの2つに何か見えない壁のようなものがあると思っている。その壁を打ち崩さない限り、漬物の需要は増えない。この壁を取り崩す提案を行うことこそが当社の使命だと考えており、61期より仕掛ける予定でいる。一方、現状の商品群に目を置くと、新商品が消費者の購買意欲を沸かせる大きな差別化までには至っていないのではないかと考えている。そこで注目されるのが地方の名産品だ。近年では、『山形のだし』や『いぶりがっこ』が地方で発掘されて広域流通につながった。日頃からアンテナを高く張り、そのような商品を見つけて提案するのが問屋の本質であるが、その部分こそが他社にない当社の強みだと思っている」
‐昨年から続く値上げの動きは。
「漬物売場でも値上げの動きは増えているが、肌感では全体の6、7割くらいに留まっている。カテゴリーにもよるが、商品の切り替えや消費者離れを懸念して値上げに踏み切れないメーカーも数多く存在する。弊社は値上げの要請があれば得意先に案内を行うが、まだ様子を見ているところもある。原材料価格が上がり、包装資材や調味料の他、電気代、燃料代、物流費などのコストが上昇する中、価格転嫁しなければ採算が合わなくなる。更に、巣ごもり需要の反動による漬物業界の規模縮小によって体力勝負の様相となっており、特に、価格転嫁をストレートに反映できない中小企業には大きな影響が出てくるだろう」
‐ 一次荷受問屋である御社の役割は。
「我々に求められているのは提案力。メーカーと協力して新たな商品を開発し、ニーズを創造していくことは経営方針でもある。少子高齢化や単身世帯の増加などを考えると、食品業界において伸びていくのは惣菜と冷凍食品。漬物を従来の売場だけで販売していても市場を維持することはできない。それならば、惣菜売場で販売できる惣菜風の漬物を開発したり、関連販売で漬物を置けるような提案を行っていくことが必要だ」
‐新しい事業や取組について。
「まだ詳細は言えないのだが、新しい需要の開拓という意味では幅広い人へのPRが重要で、漬物をより身近に、より便利に利用できる情報を提供していきたいと考えている。価値のある、すなわち『食したい、買いたい』という購買意欲を湧き立たせる漬物ならば、適正価格でも販売が可能であると考えている。間もなく迎える61期から新たな仕掛けを行っていきたいので、ご期待いただきたい」
【2023(令和5)年2月11日第5119号19面】
紙面アーカイブ
SMTS特別インタビュー 代表取締役社長 杉山 博氏
「漬物とは何か」を探求 新たな「食」の提案
株式会社山重(埼玉県三郷市)は、漬物をはじめ日配のプロとして全国に物流網を持つ一次荷受問屋。同社の特長として、単に商品を物流に乗せるだけではなくメーカーと商品を共同開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給。開発力と提案力を併せ持つ同社は業界内外から高く評価され、信頼も厚い。コロナ下で先行きの見通しが不透明となっている中、新たな需要喚起策として漬物の原点に戻った提案を準備していることを明かした。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐漬物の売れ行き及び業績は。
「漬物の売れ行きは前年比で横ばい。新型コロナウイルスの感染者の増減によって巣ごもり需要も波があったが、中食の需要は以前と比べても高い水準で定着し、それによってスーパー向け商品の動きは高止ましている状況だ。弊社は3月決算でまだ確定しているわけではないが、今のところ売上は前年比増で推移しており、前年はクリアできる見通しだ。利益面は物流費など様々なコストが上がっているので厳しくなっている。大幅な売上増加は昨今の状況では困難であるが、コロナ禍での需要『増』要因を分析し、アフターコロナにおける市場規模の拡大と占有率のアップ、更には新規開拓等により売上増加に結び付けたい。また、単なる売上至上主義ではなく、利益率の改善を最重要課題とし、質の良い利益を産む企業体質にすることが重要なテーマと考えている」
‐予測が難しかった年末年始の動きは。
「年末はコロナの感染者が減少していたこともあり、中食よりも外食が好調で、帰省する人も多く、観光関係も良かった。一昨年とは逆の動きで首都圏は低調、地方は好調だった。それでも、2020年は特需の年だったので、2021年の売上が減少したとしても、2019年比で見ると増加になるため、今年度は特需前の平年よりは若干良かったと思う」
‐漬物の需要を喚起する策は。
「漬物は箸休めや添え物と位置付けられているが、そこから脱してメーンのおかずにならないと需要は伸びない。そもそも、漬物は『野菜』の備蓄方法として始まり、江戸時代に入り多種多様な素材、作り方が研究され、一般庶民に広がった。更に、明治時代に入ると、農家の副業として漬物業が発展、食卓の箸休めや添え物として、主食と切っても切り離せない『お供』としての確固たる地位についた。近年では保存方法の発展と健康ブームにより、調味浅漬の分野の登場等、『お供』の種類も豊富になった。これらの歴史を踏まえると、日本人にとって漬物は『野菜を食す』『主食のお供』の大きな2つの柱があると考え、当社としては、この2つの柱でメーカーへ企画提案をする予定だ。特に『主食のお供』の観点では、漬物と漬物、漬物と新たな素材の組合せ等のアレンジを加える工夫により、新たな主食のお供の提案ができるのではないかと考えている。本来ならば、展示会や店頭での試食で提案したいがコロナ禍であるため、様々な媒体を通じて発信したいと考えている」
‐御社の強みと今後の方針について。
「物流センターは365日稼働していて、全国の商品を供給させていただいている。また、メーカーとともに新商品の共同開発も積極的に行っている。特に地域の特色ある素材を使用した商品は、他の地域では作れない差別化できる商品となる。年末の売場もそうだが、近年は売場の同一化が進んでいる。同じ商品が並ぶと価値での競争ではなく、価格での競争になってしまう。それは流通もメーカーも望んでいないことだ。『漬物なら何でも良いではなく、価値のあるこの漬物だからこそ食したい、買いたい』と思っていただけるようにこれからも提案力に磨きをかけ、差別化が図れる新商品を落とし込んでいきたい。弊社は三方よしの理念で事業活動を行ってきたが、これからも価値ある商品を適正価格で販売することに努めていきたい。若い人も関心を持つサラダや惣菜の感覚に近い商品を開発し、『山重があって良かった』と言っていただけるような売場を作っていきたいと考えている」
(2022年2月11日号19面掲載)
株式会社山重(埼玉県三郷市)は、漬物をはじめ日配のプロとして全国に物流網を持つ一次荷受問屋。同社の特長として、単に商品を物流に乗せるだけではなくメーカーと商品を共同開発して企画・売場提案を行いながら量販店、外食、中食、ベンダーなど様々な販売チャネルに供給。開発力と提案力を併せ持つ同社は業界内外から高く評価され、信頼も厚い。コロナ下で先行きの見通しが不透明となっている中、新たな需要喚起策として漬物の原点に戻った提案を準備していることを明かした。
(千葉友寛)
◇ ◇
‐漬物の売れ行き及び業績は。
「漬物の売れ行きは前年比で横ばい。新型コロナウイルスの感染者の増減によって巣ごもり需要も波があったが、中食の需要は以前と比べても高い水準で定着し、それによってスーパー向け商品の動きは高止ましている状況だ。弊社は3月決算でまだ確定しているわけではないが、今のところ売上は前年比増で推移しており、前年はクリアできる見通しだ。利益面は物流費など様々なコストが上がっているので厳しくなっている。大幅な売上増加は昨今の状況では困難であるが、コロナ禍での需要『増』要因を分析し、アフターコロナにおける市場規模の拡大と占有率のアップ、更には新規開拓等により売上増加に結び付けたい。また、単なる売上至上主義ではなく、利益率の改善を最重要課題とし、質の良い利益を産む企業体質にすることが重要なテーマと考えている」
‐予測が難しかった年末年始の動きは。
「年末はコロナの感染者が減少していたこともあり、中食よりも外食が好調で、帰省する人も多く、観光関係も良かった。一昨年とは逆の動きで首都圏は低調、地方は好調だった。それでも、2020年は特需の年だったので、2021年の売上が減少したとしても、2019年比で見ると増加になるため、今年度は特需前の平年よりは若干良かったと思う」
‐漬物の需要を喚起する策は。
「漬物は箸休めや添え物と位置付けられているが、そこから脱してメーンのおかずにならないと需要は伸びない。そもそも、漬物は『野菜』の備蓄方法として始まり、江戸時代に入り多種多様な素材、作り方が研究され、一般庶民に広がった。更に、明治時代に入ると、農家の副業として漬物業が発展、食卓の箸休めや添え物として、主食と切っても切り離せない『お供』としての確固たる地位についた。近年では保存方法の発展と健康ブームにより、調味浅漬の分野の登場等、『お供』の種類も豊富になった。これらの歴史を踏まえると、日本人にとって漬物は『野菜を食す』『主食のお供』の大きな2つの柱があると考え、当社としては、この2つの柱でメーカーへ企画提案をする予定だ。特に『主食のお供』の観点では、漬物と漬物、漬物と新たな素材の組合せ等のアレンジを加える工夫により、新たな主食のお供の提案ができるのではないかと考えている。本来ならば、展示会や店頭での試食で提案したいがコロナ禍であるため、様々な媒体を通じて発信したいと考えている」
‐御社の強みと今後の方針について。
「物流センターは365日稼働していて、全国の商品を供給させていただいている。また、メーカーとともに新商品の共同開発も積極的に行っている。特に地域の特色ある素材を使用した商品は、他の地域では作れない差別化できる商品となる。年末の売場もそうだが、近年は売場の同一化が進んでいる。同じ商品が並ぶと価値での競争ではなく、価格での競争になってしまう。それは流通もメーカーも望んでいないことだ。『漬物なら何でも良いではなく、価値のあるこの漬物だからこそ食したい、買いたい』と思っていただけるようにこれからも提案力に磨きをかけ、差別化が図れる新商品を落とし込んでいきたい。弊社は三方よしの理念で事業活動を行ってきたが、これからも価値ある商品を適正価格で販売することに努めていきたい。若い人も関心を持つサラダや惣菜の感覚に近い商品を開発し、『山重があって良かった』と言っていただけるような売場を作っていきたいと考えている」
(2022年2月11日号19面掲載)
杉山博新社長インタビュー
新しい需要の創造
原点回帰で商品開発推進
2019年6月27日開催の定時株主総会で山重社長に就任した杉山博氏に今後の抱負や荷受問屋に求められている役割などについて話を聞いた。
◇ ◇
――社長就任の抱負を。
「私は山重に入社して36年、そのうち30年近く管理部門を担当していたので、社長になるキャリアを決めたここ数年、組合への参加、営業担当と一緒に取引先を回ることにより、業界の構造を肌で感じてきました。メーカーや問屋がここ数十年で淘汰されている業界の中で、それなりの覚悟がないと社長はできない。私なりの戦略をしっかり立て、起業家後継社長して、先代が築いた山重を100年企業となるよう、決意と覚悟をもって社長就任を決断した」
――御社の強みは。
「全国のメーカーとつながりがあり、物流網を構築しているので各地の特産品を供給することができる。東日本の販売物流についてはしっかり定着してきたが、東日本以外の物流については様々な経営判断が必要になってくる。弊社で物流センターを持っていることも強みで、日配品のピッキングもできる。また、地域だけではなく、小売店の特徴によってもニーズが異なるため、お客様が求めるものを提供することが問屋の役割であり、我々の使命でもある。そのためには品揃えや情報、経験は大きな武器になる。今後もそのようなところを強化していきたい」
――業界の課題について。
「漬物業界の需要が低迷しているが、低価格競争、生活習慣病等その要因を冷静に分析しないといけない。その分析の基に、新たな需要層に対する商品をメーカーと一緒に開発していきたい。それは弊社が昔からやってきたことで、新しい需要を創造していかなければ会社としても業界としても伸びることができない。また、新しい販路の開拓も必要だ。従来の売場だけではプラスアルファにはならない。新商品を出しても既存品との入れ替えだけでは売上が増えない。売場や業態を含め構造的に従来とは異なるところに提案していく必要がある」
――漬物の魅力について。
「旬の野菜や健康機能性ということもあるが、一番は伝統食品であることで、海外へ発信したい。オリンピックは日本の伝統食品をアピールする絶好の機会になる。日本に来られた海外の方に日本食には漬物は欠かせない存在で、美味しさを知っていただき、大きな流れが生まれればと期待してすると共に、直接海外へ漬物を直接伝統食品として如何にして提供すべきか、戦略を緻密に考えていきたい」
――問屋に求められる役割は。
「時代によって求められる役割も変わってくるが、単に商品を横流しするだけでなく、消費者の漬物に対して如何に考えているか構造的に考察し、弊社が昔からやってきた新商品をメーカーと共同して開発していく、という取組みを改めてやっていきたいと考えている。また、漬物の需要を拡大するためには、試食を提供してまず食べていただくことが重要。漬物の魅力を知っていただくためには対面販売が最も良いやり方だと思うので、今後はそのようなことも考えながら事業を進めていきたい」
(2019年9月23日号掲載)
原点回帰で商品開発推進
2019年6月27日開催の定時株主総会で山重社長に就任した杉山博氏に今後の抱負や荷受問屋に求められている役割などについて話を聞いた。
◇ ◇
――社長就任の抱負を。
「私は山重に入社して36年、そのうち30年近く管理部門を担当していたので、社長になるキャリアを決めたここ数年、組合への参加、営業担当と一緒に取引先を回ることにより、業界の構造を肌で感じてきました。メーカーや問屋がここ数十年で淘汰されている業界の中で、それなりの覚悟がないと社長はできない。私なりの戦略をしっかり立て、起業家後継社長して、先代が築いた山重を100年企業となるよう、決意と覚悟をもって社長就任を決断した」
――御社の強みは。
「全国のメーカーとつながりがあり、物流網を構築しているので各地の特産品を供給することができる。東日本の販売物流についてはしっかり定着してきたが、東日本以外の物流については様々な経営判断が必要になってくる。弊社で物流センターを持っていることも強みで、日配品のピッキングもできる。また、地域だけではなく、小売店の特徴によってもニーズが異なるため、お客様が求めるものを提供することが問屋の役割であり、我々の使命でもある。そのためには品揃えや情報、経験は大きな武器になる。今後もそのようなところを強化していきたい」
――業界の課題について。
「漬物業界の需要が低迷しているが、低価格競争、生活習慣病等その要因を冷静に分析しないといけない。その分析の基に、新たな需要層に対する商品をメーカーと一緒に開発していきたい。それは弊社が昔からやってきたことで、新しい需要を創造していかなければ会社としても業界としても伸びることができない。また、新しい販路の開拓も必要だ。従来の売場だけではプラスアルファにはならない。新商品を出しても既存品との入れ替えだけでは売上が増えない。売場や業態を含め構造的に従来とは異なるところに提案していく必要がある」
――漬物の魅力について。
「旬の野菜や健康機能性ということもあるが、一番は伝統食品であることで、海外へ発信したい。オリンピックは日本の伝統食品をアピールする絶好の機会になる。日本に来られた海外の方に日本食には漬物は欠かせない存在で、美味しさを知っていただき、大きな流れが生まれればと期待してすると共に、直接海外へ漬物を直接伝統食品として如何にして提供すべきか、戦略を緻密に考えていきたい」
――問屋に求められる役割は。
「時代によって求められる役割も変わってくるが、単に商品を横流しするだけでなく、消費者の漬物に対して如何に考えているか構造的に考察し、弊社が昔からやってきた新商品をメーカーと共同して開発していく、という取組みを改めてやっていきたいと考えている。また、漬物の需要を拡大するためには、試食を提供してまず食べていただくことが重要。漬物の魅力を知っていただくためには対面販売が最も良いやり方だと思うので、今後はそのようなことも考えながら事業を進めていきたい」
(2019年9月23日号掲載)