紀州梅産地
近年稀に見る凶作か 着果率50%で価格も高騰
今年の紀州南高梅は近年稀に見る凶作となりそうだ。和歌山県の大手梅干メーカーでは複数の農家からの情報を統合し、半作になると予想している。
昨冬は暖冬で、紀州地方の梅の開花期及び満開期が平年より10日~14日早かった。そのため、ミツバチの活動時期とズレが生じ、受粉しなかったことが着果率の低下を招いた原因と見られている。
JA紀南が3日に発表した調査結果によると、今年の南高の着果率は6・3%(前年比51%)。平年比(10年間)でも57%だった。同日時点の南高の生産予想量は1万6020t(前年比76%、平年比72%)を見込んでいるが、少雨の影響により落果が進んでいるため、今後の気象状況によってはさらに生産量が減少することが想定されている。
田辺中央青果市場では5月25日から南高が入荷。スタートから10日間の平均価格(中値)は、価格が平年の2倍近く高騰した昨年の1・35倍となる532円。収穫は6月いっぱいまで続く見通しだが、原料不安の心理からか引き合いが強く、高値が続いている。
今夏は例年よりも暑くなる予報で、梅の需要が増加することが予想されるだけに、梅の作柄に熱視線が注がれている。
JA紀南が3日に発表した調査結果によると、今年の南高の着果率は6・3%(前年比51%)。平年比(10年間)でも57%だった。同日時点の南高の生産予想量は1万6020t(前年比76%、平年比72%)を見込んでいるが、少雨の影響により落果が進んでいるため、今後の気象状況によってはさらに生産量が減少することが想定されている。
田辺中央青果市場では5月25日から南高が入荷。スタートから10日間の平均価格(中値)は、価格が平年の2倍近く高騰した昨年の1・35倍となる532円。収穫は6月いっぱいまで続く見通しだが、原料不安の心理からか引き合いが強く、高値が続いている。
今夏は例年よりも暑くなる予報で、梅の需要が増加することが予想されるだけに、梅の作柄に熱視線が注がれている。
【2020(令和2)年6月8日第5023号1面】
日本園芸農業協同組合連合会
主要県梅の収穫予想 約6万3千tで99%の見込み
日本園芸農業協同組合連合会(川田洋次郎代表理事会長)では、4月1日時点での主産県における梅の栽培面積と収穫予想量を発表した。
主産16県の栽培面積は、8127ha(前年比98%)、収穫予想量は6万2743t(前年比99%)と見込まれる。全国の収穫予想量は、8万7200t(農林水産統計令和元年産実績8万8100tの99%)と推定される。収穫予想量は、少なかった前年並であり、直近5年平均より10%程少ない不作傾向となっている。
生育状況は、開花はきわめて早く、平年と比べると5~18日早い。主産地等において、開花期間中の悪天候により、訪花昆虫が動かず、着果が大きく減少している。病害虫の発生については、目立った被害は見られない。
主産16県の栽培面積は、8127ha(前年比98%)、収穫予想量は6万2743t(前年比99%)と見込まれる。全国の収穫予想量は、8万7200t(農林水産統計令和元年産実績8万8100tの99%)と推定される。収穫予想量は、少なかった前年並であり、直近5年平均より10%程少ない不作傾向となっている。
生育状況は、開花はきわめて早く、平年と比べると5~18日早い。主産地等において、開花期間中の悪天候により、訪花昆虫が動かず、着果が大きく減少している。病害虫の発生については、目立った被害は見られない。
※1.埼玉県・千葉県・静岡県・三重県・奈良県・和歌山県・愛媛県・福岡県・鹿児島県の栽培面積・収穫予想量は系統の数値である。
※2.宮城県については栽培面積の報告のみ。
※3.うめ計と品種別の合計値は、一部の県で品種区分が不明なため一致しない。
うめ研究所
新品種「星秀」を開発 病気に強く着果も良好
和歌山県果樹試験場うめ研究所(みなべ町)は、梅の新品種「星秀(せいしゅう)」を開発した。「星秀」は「南高(雌)」と「剣先(雄)」の交雑種。黒星病発病果率が低く、自家和合成を有し、低温などによる虫媒受粉がうまくいかない年でも安定した着果を示す上、「南高」と開花時期がほぼ同じであるため受粉樹としても有効である。
同研究所ではウメの主要病害に抵抗性を持つ品種の育成を進めてきた。県の主力品種である「南高」は病気に弱く、特に黒星病は現在のところ薬剤散布なしでは防除が困難な病害のひとつだった。今後気候変動が進行し、降雨日数が多くなると黒星病の発生増加が懸念されていた。
そこで、黒星病に強い抵抗性を有し、かつ果実品質に優れる個体を選抜し、「星秀」として品種登録出願を行った(2019年6月11日出願公表)。
無防除樹における黒星病発病果率は「南高」よりも低く、減農薬栽培における有望品種と言える。ただしかいよう病には「南高」と同程度に弱い。
「星秀」の果実はやや楕円形で、果実重は「南高」よりも小さいが「NK14」よりは大きい。またヤニ果はほとんど発生しない。樹勢に問題はなく、短果枝の着生が多いため、栽培しやすい品種と言える。
なお本品種は国の委託を受けて育成したため、苗木は県内だけでなく全国に流通する。ただし、苗木の販売は和歌山県果樹育苗組合に許諾予定(苗木生産は県内限定)。
そこで、黒星病に強い抵抗性を有し、かつ果実品質に優れる個体を選抜し、「星秀」として品種登録出願を行った(2019年6月11日出願公表)。
無防除樹における黒星病発病果率は「南高」よりも低く、減農薬栽培における有望品種と言える。ただしかいよう病には「南高」と同程度に弱い。
「星秀」の果実はやや楕円形で、果実重は「南高」よりも小さいが「NK14」よりは大きい。またヤニ果はほとんど発生しない。樹勢に問題はなく、短果枝の着生が多いため、栽培しやすい品種と言える。
なお本品種は国の委託を受けて育成したため、苗木は県内だけでなく全国に流通する。ただし、苗木の販売は和歌山県果樹育苗組合に許諾予定(苗木生産は県内限定)。
需要期到来で期待高まる 梅干食べて病気を予防
全国梅生産の約6割を占める和歌山県。主要産地である紀州地方の梅の開花期及び満開期は、平年より10日~14日早かった。
JA紀南の発表(2月19日)でも南高の開花始めが1月27日と平年より12日程度早く、満開期も2月3日と平年より13日程度早かった。また、1月21日の着蕾調査によると、1年枝100節当たりの平均着蕾数は、南高では前年・平年並みとなり、小城・小梅では前年より多く、平年並みとなった。
過去の例を見ると、作柄については咲き始めが遅く、開花期が長い年は豊作型となることが多いとされている。今年はその逆の状況となっているため、作柄については心配の声も上がっている。
昨年は9割作に留まったものの、収穫期が遅かったこともあり、収穫量が少ないと判断した業者が先行して購入したため青梅の価格が上昇。1次加工を行うメーカーが増加するなど、原料流通の変化の影響もあり、青梅の価格は前年の2倍に高騰する状況となった。昨年の梅は花付きも良く、生育も順調に進んでいたが、成熟期に雨が少なく玉太りが進まなかった。そのため、収穫量も伸びず、全国的には不作となった。
農林水産省が昨年11月26日に発表した資料によると、昨年の全国の結果樹面積は1万4500haで前年産に比べ2%減少。収穫量は8万8100t、出荷量は7万7700tで、前年産に比べてともに22%減となった。
全国梅生産の60%以上のシェアを持つ和歌山の収穫量は平年比で約1割減の5万7500tに留まったが、小梅の主要産地である山梨、群馬、長野では収穫直前に広範囲で降雹被害が発生し、平年比60%と大不作となったことも大きく影響した。
昨年の売れ行きは、年明けから春先まで好調に推移していたものの、記録的な冷夏、台風や長雨等の自然災害、10月の消費税増税、値上げ、暖冬など、夏以降はブレーキになる材料が多かったことが影響し、通年では爆発的に売れた2018年比で1~2割減となった。
需要期を迎える春夏に向けて期待が高まっている。東京オリンピック・パラリンピックが開催される今年の夏は暑くなることが予想されており、梅干製品にとっては追い風となる。
また、国内外の共同研究によって梅干の効能を医学的に解明している紀州梅効能研究会(殿畑雅敏会長)によると、梅にはインフルエンザ予防、胃がん予防、糖尿病予防、食中毒予防、動脈硬化の抑制、血液浄化作用、抗酸化活性作用があり、近年の研究では脂肪燃焼作用に関する研究成果も発表している。梅干はインフルエンザウイルスやO‐157などの食中毒菌の増殖を抑制する作用があることが確認されている他、免疫力を高める効果も期待できる。
日本でも新型コロナウイルスの感染者が1000人を超え、更なる感染の拡大が懸念される中、小売店で売れているのは、テレビでも紹介された長芋や納豆、えだ豆の他、乳酸菌が豊富に含まれているキムチやヨーグルトといった免疫力を高める食品。近年は病気になりにくい体を作るための「食」が重要視されている。「梅はその日の難逃れ」。古来より語り継がれている梅の効能が再び脚光を浴びている。
JA紀南の発表(2月19日)でも南高の開花始めが1月27日と平年より12日程度早く、満開期も2月3日と平年より13日程度早かった。また、1月21日の着蕾調査によると、1年枝100節当たりの平均着蕾数は、南高では前年・平年並みとなり、小城・小梅では前年より多く、平年並みとなった。
過去の例を見ると、作柄については咲き始めが遅く、開花期が長い年は豊作型となることが多いとされている。今年はその逆の状況となっているため、作柄については心配の声も上がっている。
昨年は9割作に留まったものの、収穫期が遅かったこともあり、収穫量が少ないと判断した業者が先行して購入したため青梅の価格が上昇。1次加工を行うメーカーが増加するなど、原料流通の変化の影響もあり、青梅の価格は前年の2倍に高騰する状況となった。昨年の梅は花付きも良く、生育も順調に進んでいたが、成熟期に雨が少なく玉太りが進まなかった。そのため、収穫量も伸びず、全国的には不作となった。
農林水産省が昨年11月26日に発表した資料によると、昨年の全国の結果樹面積は1万4500haで前年産に比べ2%減少。収穫量は8万8100t、出荷量は7万7700tで、前年産に比べてともに22%減となった。
全国梅生産の60%以上のシェアを持つ和歌山の収穫量は平年比で約1割減の5万7500tに留まったが、小梅の主要産地である山梨、群馬、長野では収穫直前に広範囲で降雹被害が発生し、平年比60%と大不作となったことも大きく影響した。
昨年の売れ行きは、年明けから春先まで好調に推移していたものの、記録的な冷夏、台風や長雨等の自然災害、10月の消費税増税、値上げ、暖冬など、夏以降はブレーキになる材料が多かったことが影響し、通年では爆発的に売れた2018年比で1~2割減となった。
需要期を迎える春夏に向けて期待が高まっている。東京オリンピック・パラリンピックが開催される今年の夏は暑くなることが予想されており、梅干製品にとっては追い風となる。
また、国内外の共同研究によって梅干の効能を医学的に解明している紀州梅効能研究会(殿畑雅敏会長)によると、梅にはインフルエンザ予防、胃がん予防、糖尿病予防、食中毒予防、動脈硬化の抑制、血液浄化作用、抗酸化活性作用があり、近年の研究では脂肪燃焼作用に関する研究成果も発表している。梅干はインフルエンザウイルスやO‐157などの食中毒菌の増殖を抑制する作用があることが確認されている他、免疫力を高める効果も期待できる。
日本でも新型コロナウイルスの感染者が1000人を超え、更なる感染の拡大が懸念される中、小売店で売れているのは、テレビでも紹介された長芋や納豆、えだ豆の他、乳酸菌が豊富に含まれているキムチやヨーグルトといった免疫力を高める食品。近年は病気になりにくい体を作るための「食」が重要視されている。「梅はその日の難逃れ」。古来より語り継がれている梅の効能が再び脚光を浴びている。
【2020(令和2)年3月9日第5013号1面】