通常総会を開催 役員改選を実施
デリカテッセン・トレードショー2019 特別インタビュー
全国スーパーマーケット協会 シニアディレクター 籾山 朋輝氏
王道は地域特産品への意識
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‐DTS出展状況や今年の傾向について。
「出展社数は昨年11月1日現在で75社・団体で236小間。昨年より出展社数は減ったものの惣菜ベンターの出展など、展示会のコンセプトに沿った出展社が増えてきている。お弁当・お惣菜大賞から始まったこの展示商談会もDTSという名前になってから今年で6回目を迎えることになり定着してきた。惣菜市場の拡大とあいまってDTS発の情報も確実に反応は増えている。お弁当・お惣菜大賞は美味しさ、見た目、価格といった面でレベルは上がり続けている。地域特産品を意識した商品は優秀賞をとりやすく王道ではある。しかし、今年の傾向としては安くて良質な原料の使用と美味しさの実現が鍵となった。売れ筋を製造できるベンダーさんの商品の受賞も増えてきている」
「売上構成比のメインである生鮮3品は売上減少が見られるが、それに対し惣菜は伸び続けている。生鮮3品をやらないお店も都心部を中心に出てきた。渋谷にある東急ストアさんのプレッセ シブヤ デリマーケットは売場面積の7~8割がデリカで残りはグロッサリーという形。こだわりの商品も多く合わせ買いで売上増を見込んでおり、居心地の良いイートインも完備している。名古屋でバローグループの中部フーズさんが展開しているデリカキッチンも質の高いお弁当や出来立ての提供などを行う。惣菜店をスピンアウトさせ商業施設にテナントとして出店していくというこうしたパターンはこれからも広がっていくだろう。ニーズだけでなく、お弁当・お惣菜大賞を見てもわかる通りクオリティーの高い洗練された商品がどんどん出てきている」
「人手不足の中でインストア加工をどの程度に抑えるのかというオペレーション上の非常に難しい課題があるのは確かだ。当然インストアでやった方がおいしくて見た目の良い商品ができるが、センター加工との綱引き・落し所を考えながら各社が苦心して商品開発をなさっていることを感じる。だからこそベンダーさんの力を借りながらいかに独自性を出していけるか、ということも必要になってくる。お弁当・お惣菜大賞の受賞商品を見ても加工のインストア比率が高い方がやはり独自性、価格とのバランスで優位性がある印象を受けるが全社揃って同じ土俵で戦えるわけではないのが現状である。開発力のあるベンダーさんの確保はSMにとって大切なこと。今回出展する利恵産業さんも力のある老舗の惣菜ベンダーのうちの一社である」
「売場を越えた連携は引き続き課題ではあるが、そこを進展させている企業は大分増えてきた。たとえば阪急オアシスさんは生鮮3品の棚にデリカ商品を開発し置いている。いわゆる魚屋の寿司、肉屋の肉惣菜という形だ。その見せ方はSMの強みであり他業態にはできない動きである。さらに、食物販とダイニングをボーダレスに融合させた新業態・キッチン&マーケットをルクア大阪で出店したのも新しい動きだ。部門間連携という意味ではサミットさんが進んでいる。肉売場で売っている肉を使用し惣菜を製造する。業務用は業務用の物を使うということではなく売場にある商材で惣菜を造ることを見せれば、生鮮・日配・グローサリーの商品を食卓で使用したいという訴求を新たに増やすことに繋がってくる。こうしたグローサラント的な考え方は生鮮3品を持つSMの最大の強みであり差別化を可能とする。しかしながら先ほど述べた通り人手不足という難しい課題をクリアしていかなければならない」
「デリカスタディの強化は今年度の主催者企画として力を入れた部分。勉強会を年4回行ったが来年度も同じ形になるだろう。年度初めの5月は食市場トレンドを大きく捉え、7月は具体的な業態の話へと進んでいく。10月からは実践的な商品開発の話となり、まもなく行われる1月開催では人手不足・人材育成をテーマとしていく。軽減税率に関してはイートインでは10%が適用され数字上では障害になってくるが即食性のニーズは勢いがあるので売上にさほど影響があるとは思っていない。SMにおいてもバイオーダー(注文)により作り立て・出来立て商品の用意やベイシアさんが始めたスマホアプリで惣菜を事前注文できるサービスなど、価格以外の部分で付加価値を高めていく取組を逆に注目している」
協会創立60周年記念大会
9月19日には東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪にて「第6回全国大会・東京大会」~協会創立60周年記念大会~が開催され、正会員・賛助会員企業の代表者を中心に2000名以上が来場、協会の新たな船出を祝った。
今回の全国大会のテーマは「60年を経て夢を成功に‐さらなる未来へ‐」。式典のオープニングでは、幅60メートルにも及ぶ超大型スクリーンに〝夢〟の一文字が映し出された。
「夢なき者に成功なし」。吉田松陰のこの言葉は、松下村塾で学ぶ高杉晋作らの志を高め、幕末の明治維新を成功に導いた。同じように60年前、日本にスーパーマーケットという新しい店舗スタイルを普及させようという強い理念を胸に、意見を交換し教え学び合うことからスタートした協会発足当時のメンバーの夢は時代を経て現実となった。
新時代に向け、スーパーマーケットはどこへ向かい何を実現していくのか。会場では、製・配・販の流通小売業界関係者が未来への夢を熱く語り合った。
また今後について、「シンギュラリティ(技術的特異点)により、世の中がものすごいスピードで変わっていくと言われているが、最終的にはどれだけ技術が進歩しようとも、人間が中心となる〝人心の時代〟。AIなどの技術を利他主義で人のため、お客様のために使いながら新しい優れた人間的な生き方をしていきたいと会員一同願い努力している。今後ともご支援を頂きたい」と結んだ。
来賓祝辞では、株式会社シジシージャパン代表取締役CGCグループ代表の堀内淳弘氏、農林水産省農林水産事務次官の末松広行氏、経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ商務・サービス審議官の藤木俊光氏が挨拶。その後、安倍晋三内閣総理大臣からのビデオメッセージ、セブン&アイ・ホールディングス伊藤雅俊名誉会長、小池百合子東京都知事の祝電が披露された。
「全国スーパーマーケット協会」に 創立60周年迎え名称変更
同協会は1958年3月26日、前身のひとつである「日本セルフ・サービス協会」として創立以来、今年で60周年を迎えた。これを機に、決意を新たに「生まれ変わる」意味を込めて名称変更を行い、スーパーマーケット業界の発展、社会的信頼の向上に寄与すべく活動していく。
また、9月19日には創立60周年と、団体名称変更を記念し「第6回全国大会・東京大会~協会創立60周年記念大会」を開催する。
【変更後名称】一般社団法人全国スーパーマーケット協会(英文名‥National Supermarket Association of Japan/略称:「NSAJ」)
デリカデッセントレードショー2018 特別インタビュー
新日本スーパーマーケット協会 シニアディレクター 籾山 朋輝氏
グローサラント的考えに
「出展申込書受領数は昨年とほぼ同数の251小間、参加社数88社でそのうち新規は18社。昨年の参加は76社だったので今年もおかげさまで社数を伸ばした。SMTSの出展者がこちらに参加する形だけでなくデリカに特化した商材をお持ちの事業者様も増えてきているのが一つの流れだ。主催者企画はこれまでの物を定着させることに注力しており、『お弁当・お惣菜大賞』の実食ができるコーナー(=フードコート)も例年通り開催し商品数40品目でさらに幅を広げていくことを目指している。受賞商品に関しては漏れなく展示を行ない『惣菜デリ最前線』を発刊した。小売業の販売現場のトレンドだけでなく、お弁当・お惣菜大賞の選出商品ガイドブックとしての役割も兼ねた充実した内容となっている」
‐今年のお弁当・お惣菜大賞受賞者ついて。
「常連企業をはじめ、この企画を活用して頂き各企業が切磋琢磨する形で商品開発レベルが上っていると感じている。具体的には価格に対するクオリティーが格段に上がってきており、受賞企業の方達は商品開発のサイクルに本企画を埋め込みモチベーションを上げているという。受賞後のブランド価値は少なくとも2~3カ月続き、その効果は売上げにも直結し好循環となっている。マスコミにも取り上げられており、社会的認知度もさらに上げていきたい」
「昨年の10月に続き1月25日に第2回の発表が行われたが今年度初の試みだ。デリカのクオリティーを上げていくことを目的とした継続的な勉強会でDTS2018デリカスタディでは2回開催のみであったが、年4回ペースを目指しており、次回は5月下旬を予定している。『お弁当・お惣菜大賞』受賞の商品開発事例や受賞後の社内外を含めた効果を共有して頂く。実食も行う中で商品特徴の掘り下げを行い、メーカー、ベンダー側からの新商品情報や新しい提案をして頂きながら小売業の取組み事例なども勉強するという双方向性のある売場レベル向上のための場を作っていきたい」
「売上げ構成比率は〝生鮮4品〟と言っても差し支えないくらいで10%を超えてきている。20%を超える企業もあるが、メニュー提案の悩みやそのメニューがどれだけの工数で出来上がるのかといった実践的な情報を各社欲している。成功している店舗のメニュー開発も共有していきたい。また、人材不足は依然として課題で棚入れもバックヤードも全て外国人という店舗を持つ企業もある。その中で日本人向けの商品開発をしていかなくてはいけないのが現状だ。利幅が取れおいしいのはもちろん、見栄えも良く季節感のあるメニュー提案をしていかなくてはならない。ただし、工数をかけて手作り感のある商品ほどオリジナリティを出せて売上げも良い筈だが、規格化された商品をベンダー頼みにする企業も多い訳で多様性のある売場形成を持つにはどうしたら良いかという具体的なソリューションを当協会から提供していきたいし、それに見合った講師陣を招聘し、デリカスタディを活性化させていきたい」
「部門の壁を取っ払ったのがサミットさんの特長だ。魚なら、魚を仕入れるにあたり惣菜チームは独自で行うという傾向があったが、きちんと魚売場の商材を使用しデリカを開発する方向にシフトした。結果、格段に味は良くなった。部門間で壁があるSMは多く、横の繋がりを持ち商品開発できている所はまだまだ少ない。そういう点でサミットさんはブレイクスルー。各売場の1級品を使用し惣菜メニュー開発をしているので品質は対価格でとても高い。今回サミットさんの『総菜選挙』が売場部門で最優秀賞を受賞したが、いかに売るかという形でも次元が違う提案となった。こうした取組みを具体的にデリカスタディで聴講するだけでも勉強になるわけで、この勉強会が情報の流れを作っていく可能性があると考えている」
「店内で扱う食材をその場で調理しレストランの様に質の高い食事を提供していくグローサラントの考え方は、ほぼ飲食業なので課題はまだまだ多いと感じている。部門間の壁を取っ払うことに難儀している組織体がグローサラントに一足飛びに行くとは考えにくい。ただ、出来たて感や即食性のニーズは間違いなく高くなっており、SMやCVSの新店ではイートインが標準装備になる所が多い。だからこそ、惣菜売場の質の向上が求められている。その点をDTS出展者さんも意識して情報提供して頂けていると思う。我々の方もヘルスコンシャスというテーマを引き続き掲げており、和惣菜に関して言えば味付けなど製造工程に対するこだわりや地域特産を使用する傾向があり品質も高くなっている。グローサラント的な、オリジナリティを持った本格的な商品が売場でも意識されているのではないか」
「地域特産品を出していくという流れは『お弁当・お惣菜大賞2018』でも色濃く出た。たとえば中部フーズさんの『飛騨産赤かぶ梅酢仕立ておにぎり』は、シンプルだが地域産品を使用し税別62円と、この価格でこのクオリティーか!と驚かされた中での最優秀賞受賞であった。静鉄ストアさんの『桜海老たっぷり天丼』もレベルが高い。それだけでなく2次審査までを見ても優秀な商品がたくさん見受けられた。そうした商品は地場産の商材をたくさん使用している。産地を明確にして鮮度感と価格面でバランスの取れた商品を製造している企業が増えてきており評価も高い。地産地消のニーズは高く、新鮮な物をおいしく食べたいという消費者のニーズがありそこが差別化に繋がっている。正に地域との共生であり、デリカが地域産品を使用するという流れは続いていくだろう。イートインやフードコートを地域のコミュニティの場にしていきたいという意図を持つ店舗が増えてきておりECだけでは完結できない空間創造の機能を小売り側もきちんと意識し、リアル店舗にマッチした鮮度感のある商品開発が求められていると思う。外食メニューを参考にしたり元オーナーシェフが商品開発を進めたりしている企業がデリカを進化させている。グローサラント的な役割こそが実食の機会を増やし、それが日配商品など、既存商品の売場活性化という相乗効果に繋がっていくはずだ」
第6回営業マン、若手技術者のための講演会 新日本スーパーマーケット協会
籾山朋輝プランニングマネージャー
続いて、食品流通全体の流れについて解説。「日本の人口が減少する中でSMはオーバーストアの状況であり、これから減っていくことが予想される。SMの吸収合併も頻繁となり、さらなる効率化を進め、体力を付けなければならなくなっている」とした。また高齢者の増加など商圏が狭くなったことで、小型スーパーはじめSMがCVS化に舵を切りつつある現状を示し「この業態が伸びるかがSMの試金石になる」と述べた。
そのような状況下で通販をはじめEC化率が急速な伸び。「現在の全小売流通高11兆円から2020年には20兆円になるのではと言われている。小売業各社がオムニチャネルの時代の仕組み作りを急いでいる」とし「ネットスーパーで売りやすいような商品や、こだわり商品が検索される可能性もあり、今の営業や商品開発で良いのかを見直す必要がある」と提唱した。
この人に聞く 一般社団法人新日本スーパーマーケット協会
事業本部・事業企画2課 吉沢 敦氏
SMTS ケアフーズゾーン拡大
健康食品の情報発信
第50回スーパーマーケット・トレードショー2016の通常受付が13日にスタートした。記念大会となる今回のSMTSの目玉のひとつで、大幅にゾーンを拡大した「ケアフーズゾーン」を担当する新日本スーパーマーケット協会の吉沢敦氏に話を聞いた。
◇ ◇
――ケアフーズゾーンについて
「4月から機能性表示食品制度が始まり、特定保健用食品(トクホ)や、機能性食品に対する注目度が高まりました。また、少子高齢化に伴う介護食などの高齢者向けの食品も注目を集めています。そこで、健康的なカラダづくりに着目した食品の出展ゾーンとして①機能性食品・飲料、特定保健用食品②介護食、アレルギー対応食品、乳用児食③医薬部外品、サプリメントなどを対象に展開する予定となっています」
――SMや小売店でのケアフーズの売場は
「現状、日本のSMや小売店の店頭では健康食品やアレルギー対応食品の売場は少ない。サプリメントなども、ドラッグストアや通販が中心で、小売店であまり売っていません。米国ではSMの店頭でサプリメントが手に入るように、日本でも今後、そうなっていくのではないか、と考えています。そこで、50回の記念大会ということもあり、積極的に前回から大幅に小間数を増やして展示することになりました」
――日本チェーンドラッグストア協会(=JACDS)が監修する
「昨年からJACDSさんとの交流が本格的に始まりました。前回のSMTSではJACDSの宗像守事務総長に特別講演もしていただいた。その中で『健康食品市場がどんどん、大きくなる。SMでも同様なのでは』というお話でした。実際にはこういうゾーニングにしていったらいい、こういうものを集めたらいい、という話し合いをしています。それぞれの協会に会員がいて、出展いただこう、という話にもなっています」
――他の健康食品の展示会との差別化は
「SMや小売店は、需要が高まっている中、売場をどうしたらいいか、というイメージはあまり持っていないように思います。売場や棚をこんな感じにしていったらいいのでは、という提案もしたい。売場に並んだ時、どういう表現ができるのか、POPやチラシで、こういう表現ができるのでは、という情報発信も、パネル展示も含めてやっていきたいと考えています」
――出展対象は
「健康商材しか扱っていらっしゃらないメーカーさんもいるし、普通の商材もやっているけど機能性の商材も出している、というメーカーさんもいます。どの商品に注力するかで変わりますが、今後拡大するであろう小売業の健康食品市場に向けて、自社商品の販路開拓・拡大や情報発信をお考えの企業様にはぜひ、出展していただきたいと考えています」
――ほぼ満小間になった
「SMTSとしてはすでに多くのお申込みをいただきましたが、拡大予定のケアフーズゾーンとしてはまだ出展を募集しております。当協会の会員だけではなく、一般からも面白かったり、とんがったような商品を扱っているメーカーさんに出展していただきたい、と思っています。地方にも健康への意識が高いメーカーさんも多いし、そういった企業様にも出展していただきたいです」
――「FOOD TABLE in JAPAN」としてオーガニックEXPOも同時開催される
「ケアフーズゾーンとオーガニックEXPOの会場が隣同士になる予定です。オーガニックや有機の商材を探しているバイヤーさんも2つのゾーンを行き来できるので親和性もあるし、出展者さん同士の交流もできるのではないでしょうか。今回のSMTSはこれまで以上に明確に目的ごとにゾーニングしていますので、ケアフーズゾーンを目的に来場していただきたいと思います。健康系の食品に関するセミナーも予定しており、セミナーを聞きにきた人に展示を見ていただけるように連動していきたい」
――高齢化社会で介護食などの注目度も高い
「これまでも介護食の展示会はありましたが、給食用や業務用のメーカーさんが中心に出展されていました。小売業からも、介護食も取り扱っていきましょうという発信ができれば、と思います。SMで取り扱うのなら、作ってみようかな、という流れも出てくるといいですね」
【2015(平成27)年7月27日第4811号10面】