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塩 インタビュー2021

2021年7月21日号 塩特集

日本特殊製法塩協会
会長 鈴木恵氏

塩や和食文化の重要性訴求 新キャラ制作やキッチンカーも
「特殊製法塩」及び「塩特定販売業」の各社が集まる、日本特殊製法塩協会。青い海、天塩、伯方塩業、日本精塩、マルニの5社が発起人となり2015年に設立され、現在37社が加盟している。同協会では、〝塩の正しい知識の発信〟を主な目的として取組んでいる。鈴木恵会長(天塩社長)に現在の取組や今後の方針などについて聞いた。
(藤井大碁)
◇ ◇
ー日本特殊製法塩協会の取組。
「引き続きコロナの影響で、外部での活動はできていないが、前期は協会でHACCP手引書を作成し会員に配布した。会員外の企業からも、参考にしたい希望の声があったため、現在は協会ホームページ上に掲載し、自由に閲覧できるようにしている。また、一昨年の秋に実施したサンマの塩焼きイベントなど協会の活動PRについては感染状況を見極めながら検討していきたいと考えている」

ー天塩ではイメージキャラの作成やキッチンカーの展開など新しい取組を進めている。
「赤穂の天塩のメーカーである赤穂化成が今年50周年を迎えるのを機に、訴求の仕方を一新しようと取組んでいる。その一つが新たなイメージキャラの作成。〝あましおちゃん〟というキャラクターを制作し、様々なところに露出していく。動画にできるところがポイントで、7月からМXテレビなどで動画を放送、今後はユーチューブ上でも配信していく予定だ。主に30代後半から50代の女性に向け、赤穂の天塩のイメージを伝えていきたい。また、〝キッチンカー〟の運営もスタートした。現在は赤穂、東京で各一台を展開し、天塩を使ったおにぎりセットを販売している。機動力があり、どこにでも行けるので、いろいろなイベントに参加し塩の大切さや天塩の魅力をPRしていきたい」

ー前期売上について。
「弊社の5月決算(2020年6月~2021年5月)は前年並で着地した。コロナ禍において、売上が大きく落ちなかったが、2021年度において、新たな施策をもって売上を伸ばすことを検討する。業務用の外食向けが落ち込んだ一方、食品メーカー向けが好調で売上を引っ張ってくれた。コロナ禍で、価格と品質の二極化が進む中、食品メーカーは、より付加価値を付けて差別化しようとする意向があり、品質を追求するメーカーから支持を頂くことができた」

ー市販向け商品の動向。
「外食系が減り、内食系の増加で店舗購買が増える中で、新しい商品を探している。少量しか使わないから良いものをという人もいるし、逆に経済的に安いものをという人もいる。店舗では以前より、付加価値の高い商品が売れていることも確かだ。そうした流れの中において、〝赤穂の天塩〟を選んでもらう機会も増えていると判断している。また、付加価値の高い商品として展開している〝天海の塩シリーズ〟も伸びてはいる」

ー今期(6月以降)ここまでの動き。
「2年間不作だった梅が今年は回復し、小売店でも生梅がしっかりと並び、ここまでは前年比110%前後で推移している。健康意識の高まりもあり、巣ごもりで梅を漬ける人も増えていると推測できる。今年は店舗での生梅の販売もボリューム感があり、手軽に手に入ることも、消費を後押ししている。弊社では現在、インスタグラム上で梅干をテーマにしたキャンペーンを展開している。4月に実施したおにぎりがテーマのキャンペーンには、2000件以上もの応募があり、今回も大きな反響を期待している」

ー今後について。
「今回、コロナの影響で〝免疫力の強化〟に注目が集まり、日ごろの食生活で免疫を上げることがよく言われる。塩は、減塩などの風潮が過剰になっているところがあるが、塩分の摂取は基礎体温との関係もあり、摂取が少ないと基礎体温は下がり免疫力が低下するとも言われる。体調に合わせ適度に塩分を取ることは大事であり、これからの夏場では汗をかくことも多く、熱中症になりやすいことから、塩分補給には十分に配慮するべき。また、和食文化の大切さも伝えていきたい。日本の食文化である味噌や漬物といった塩を活用した発酵食の魅力もキッチンカーや様々なイベントを通して発信していく」
【2021(令和3)年7月21日第5064号11面】



 

日本食塩製造株式会社・日本精塩株式会社
代表取締役 社長 貞永憲作氏

天日塩の付加価値向上へ エシカルやSDGsにフォーカス
昭和24年に設立された日本食塩製造株式会社(貞永憲作社長、神奈川県川崎市)は、製造が難しいとされていた高純度塩の製法を確立したパイオニア的な存在で、医療の他、工業分野において広く認知されている。日本精塩株式会社(貞永憲作社長、神奈川県川崎市)は、昭和44年に特殊製法塩の製造販売を目的として食卓塩や精製塩を製造する日本食塩製造から分離し、設立。日本食塩製造の高級塩製造の技術とノウハウを活用し、業務用と家庭用の両面で良質な商品を販売し続けている。幅広い塩製品を供給している日本食塩製造グループの社長で、全国輸入塩協会会長、日本特殊製法塩協会理事などの要職に就いている貞永社長は、インタビューでエシカルやSDGsの重要性を強調し、天日塩の付加価値を高めていく意向を示した。(千葉友寛)
◇ ◇
ー昨年度の売上実績は。
「日本食塩製造の売上は前年比98%の28億8000万円、販売数量は同89%の8万2000t。日本精塩の売上は同86%の13億4000万円、販売数量は同79%の3万4700t。巣ごもり消費の増加で家庭用製品の需要は増えたが、外食関係の業務用は大きく落ち込んだと分析している。全体的な量は業務用の方が多いため、家庭用製品が売れても全体をカバーするまでには至らない。昨年度は価格改定を行ったこともあり、マイナス幅は抑えられたと考えている。業務用は今年に入っても苦戦が続いており、今年度もこの流れは継続すると見ている」

ー新たな食品表示基準が完全施行となった。
「栄養成分表示が義務化となり、各社でしっかり対応している。食用塩公正取引協議会では加盟企業のフォローを行い、全商品の表示をチェックしている。特に問題はなかったので、表示はしっかりできているものと認識している」

ーエシカルやSDGsの観点から天日塩が注目されている。
「塩の製法は様々だが、天日塩は太陽光と風の自然エネルギーだけで製塩されているもの。弊社の天日塩は100%メキシコの塩田で作られたものだけを使用している。弊社では、天日塩溶解再結晶法のエネルギーには天然ガスを使用し、石炭発電などより二酸化炭素の排出量を大幅に減らしている。近年、エシカルやSDGsの理解が深まっている中で、製造工程で人工的なエネルギーを使用せず二酸化炭素も排出せずに作られる天日塩の付加価値は今後も高まっていくと予想しているが、相対比較ではなく、絶対比較でなければならないと思っている。塩の製法は様々で、それぞれにメリットもある。そのような中で他社との比較ではなく、サステナビリティを念頭に置きつつ、自社製品の品質を向上させる取組みを続けていきたい」

ー4月からHPをリニューアルした。
「弊社のHPでは4月からエシカルやSDGsにフォーカスした内容にリニューアルした。それをきっかけにメキシコ天日塩を最終製品の付加価値として謳いたい、というユーザーからのご要望をいただいた他、エシカルな新商品開発に弊社製品をご検討いただく機会も増えている。自社製品を通してSDGsに貢献したい、というユーザーは確実に増えている。ありがたいことに天日塩を使えばSDGsの取組みにつながる、というような流れができつつある」

ー安全安心の取組。
「弊社では食品製造業界のあらゆる組織に向けた国際基準の食品安全システム規格のFSSC22000認証取得に向けて取組みを進めている。これまではISOの認証を取得して運用してきたが、消費者をはじめ取引先の安全安心の要求が高まっていることやフードディフェンスなどの観点から、国際的にも信頼性の高いFSSC22000の認証取得にチャレンジすることにした。現在は1次審査を通過し、年内の認証取得を目指している。塩業界におけるFSSC22000の取得は恐らく初めてだと思うが、業界においてもこれを機に安全安心の取組みがさらに強化されていることを期待している」
【2021(令和3)年7月21日第5064号12面】






2021年3月21日号 塩特集

日本特殊製法塩協会
会長 鈴木恵氏

塩の正しい知識を発信 HACCP手引書”会員へ配布
「特殊製法塩」及び「塩特定販売業」の各社が集まる、日本特殊製法塩協会。青い海、天塩、伯方塩業、日本精塩、マル二の5社が発起人となり2015年に設立され、現在37社が加盟している。同協会では昨年6月の総会において、鈴木恵氏(天塩社長)が会長に就任した。鈴木会長に今後の方針や塩の動向などについて聞いた。(藤井大碁、取材日は3月1日)
◇ ◇
―協会の役割。
「塩の正しい知識を消費者に発信していくことが協会の主たる目的となる。塩は身体に悪いというイメージが先行してしまっているが、塩をとらなければ身体の機能が働かなくなり健康を害するということは事実だ。高血圧の人が塩をたくさんとるのは良くないが、健康な人が適度な量をとることはとても大切なことで、生活が変われば摂取量も変わる。“塩が悪い”とたった一言で終わらせるのではなく、どういう風に塩をとるべきかを考えてもらえるよう継続的に働きかけていくことが重要だ」
―コロナ下の活動。
「コロナの影響で、外部での活動はできていないが、協会でHACCP導入に関する手引書をつくり会員に配布した。当組合は、中小零細企業も多いので、HACCPの初歩的な運用方法が充実した内容となっている。組合員の皆様には、是非参考にしてほしい。手引書は今後、ある程度運用した上で質疑応答を経て、厚労省のホームページにアップする方向で進めていきたい」
―今後の方針。
「今期活動については、感染状況を見極めながら、実施していく予定だ。機会があれば、何か配布物を作り、配布をしていきたいと考えている。重要なのは塩の大切さを訴えること。塩を摂取することにより、基礎体温が上がり、免疫力の向上にも繋がる、ということをしっかりと訴求していきたい。また、熱中症もそうだが、身体が弱っている時には血中の塩分濃度が下限を下回り、神経伝達ができないという場合が多い。そういう状態にならないように、夏場に向けて塩の摂取量を増やしましょう、というキャンペーンもできる範囲でやっていきたい」
―塩の販売動向。
「昨春のコロナ第一波の際は、業務用だけでなく内食用の塩の動きも良くなかった。現在は巣ごもりによる塩の内食向け需要が安定し、塩の消費量はそんなに落ちていない。緊急事態宣言が発令されているため、引き続き業務用の売上は大きく落ち込んでいるが、トータルでどうにかなっているという状況だ。また昨年は梅の出来栄えが悪かったことも塩の需要減退に大きく影響した。今年の状況はまだこれからだが、巻き返しできるよう力を入れていきた。早いうちに梅雨が明けて暑くなれば、塩の需要も増えていくだろう」
―コロナ禍による変化。
「家庭用では、これまで料理をしなかった人が巣ごもりで料理をするようになり、小容量で値ごろ感のある使い勝手が良い物は伸びているものもある。逆に言うと大容量の1キロサイズなどは、どこのメーカーも厳しいのではないか。今後も大容量は減っていく傾向にあるだろう。都市部と地方で求められる容量に差があるので、うまく対応していく必要がある」
【2021(令和3)年3月21日第5052号11面】
 
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