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編集後記2021

【編集後記】12月21日号

いぶり大根を守るために
秋田県の名産品である「いぶり大根」の製造にピンチが訪れている。閑散期の農家が小屋などの空きスペースを利用して作ってきた歴史を持つが、今年6月に施行された改正食品衛生法の「漬物製造業の営業許可制度の創設」により、営業許可の条件として専用の製造場所を設置する規定が追加されたためだ。
食中毒の予防が、1番の目的。令和6年5月31日まで経過措置があるものの、工場設置に設備投資を行うのは大きな負担であり、製造者は高齢の小規模農家が多いため廃業の声が聞こえるという。農家の資金捻出と後継者の育成が課題だ。短期的な資金面は売上に貢献すること、寄付を募ることで支援できるかもしれない。横手市は設備投資の補助金支給を検討している。だが後継者育成は依然として目途が立たず厳しい状況だ。
(高澤尚揮)
【2021(令和3)年12月21日第5079号3面】


【編集後記】12月11日号

刻み漬の真価
刻み漬を食材として使用した調味料や惣菜が増えている。
直近で取材した秋田県の「いぶりがっこ」、長野県の「野沢菜」ともに、業務用においてもこのジャンルは確かな伸びを見せている。いぶりがっこはタルタルソースやポテトサラダの具材、野沢菜はおにぎりやおやきの具材としても、人気を集めている。
奈良漬を刻みクリームチーズに、沢庵を刻み納豆に、しば漬やらっきょうを刻みタルタルソースに、カリカリ梅を刻みパスタに。刻み漬の使用法は無限大で、料理に強い食感と奥深い味わいを付与してくれる。
様々な刻み漬を組合わせることで、赤、黄、緑、紫、茶色など、鮮やかな色合いをコーディネートすることも可能だ。
刻み漬を使用した料理にはまだまだ進化の余地が残されている。カットの仕方により、食感や味わいに違いが生まれるからだ。
例えば、ネギトロに沢庵を合わせる場合、ダイスカットと千切りでは、同じ食材とは思えないほど印象が変わる。“トロたく”はトロたくでも、その味わいは様々だ。こうした使用法の拡大により刻み漬の真価がさらに発揮されることを期待したい。
(藤井大碁)
【2021(令和3)年12月11日第5078号9面】


【編集後記】12月1日号

リサイクルの実態
ゴミの分別で大きな問題となっているのがペットボトルの「飲み残し」だ。SDGsの周知が進んだことによりリサイクルや環境負荷などへの関心は高まっているのだが、あまり認識されていない実態もある。
ペットボトルは回収されても「飲み残し」や品質上の問題で焼却や埋め立ての対象となり、実際には回収されたペットボトルの約9割がリサイクルされていないのが実情だ。
ペットボトルをリサイクルするためには、内部を綺麗に洗って乾燥させた上で資源ゴミとして出す必要があるのだが、それを実践している人は少ない。
ペットボトルの捨て方については、多くの人がこれまでの捨て方を「正しい」と認識しており、それを改善することは容易なことではない。「正しい」情報を一般消費者に伝えるための効果的な取組はほぼ行われていない。
「正しい」情報の発信は、政府が掲げる2050年カーボンニュートラルに向けた第一歩になる。そのことを視野に入れて今後も取材活動を行っていきたい。
(千葉友寛)
【2021(令和3)年12月1日第5077号5面】


【編集後記】11月21日号

工事中の嚴島神社
本特集の取材のため、11月上旬、広島へ出張した。9日に宮島の嚴島神社で執り行われた漬物献上祭の様子も取材した(11月11日号に掲載)。
当日、嚴島神社のシンボル的存在である海上の大鳥居は保存修理工事のためシートで覆われており、少し眺めるだけで写真も撮らずに立ち去ってしまった。
ところが、20日の日本経済新聞の「光に映える夜の寺社ランキング」を見ると、嚴島神社がトップを飾っていた。シートに覆われたままライトアップした姿を「今だけの景観」、「海上に浮かぶ神殿のように見えて神秘的」などと評するコメントが掲載されていた。
通り一遍の美しさだけを求めて秘められた美しさに気づかず、修理中という貴重な姿をないがしろにしてしまったことを深く反省した。また、どんな状況でもそれを逆手に取り、参拝客を楽しませてくれるその姿勢に感心した。
コロナ下の不自由な中でも、オンラインサービスを活用して新しい趣味を見つけ楽しむ人は大勢いること、それにより成功を収めた企業があることに、通じるものを感じた。
(小林悟空)
【2021(令和3)年11月21日第5076号5面】

【編集後記】11月1日号

近松由来のそば・豆腐
大阪は文楽の発祥地として知られ、源流である人形浄瑠璃の脚本家、近松門左衛門にゆかりの場所が近辺に多くある。今回は、近松ゆかりのグルメを2品ご紹介する。
1軒目は大阪曽根崎「瓢亭」の「夕霧そば」。白いそば粉に徳島・高知の柚子表皮を混ぜた柚子切りそばで、上品かつ爽やかな風味が人気の理由だ。名前の由来は、白いそばの美しさを近松の作品に登場する絶世の美女「夕霧太夫」になぞらえているという。
2軒目は、兵庫尼崎「宮島庵」の木綿豆腐「近松豆腐」。尼崎は近松の墓があり、晩年愛した街である。同店では青森産のオオスズという品種の有機栽培大豆を使用し、にがりは伊豆大島産の天然にがりを取り寄せている。
こだわりが強く、有機豆腐製造小売店として全国初の「有機JAS」認証を2001年に取得している。そのまま食べてもわかるほど大豆が甘いのが特徴だ。
大阪近辺でぜひ足を運んでほしいそば・豆腐屋だ。
(高澤尚揮)
【2021(令和3)年11月1日第5074号5面】

【編集後記】10月26日号

博多3点セットの復調を
TBS系の人気番組「坂上&指原のつぶれない店」(日曜夜7時~)で17日、“芸能人が知らない駅ナカSP”が放送。その中で女性客の比率が80%以上という「だし茶漬け えん」が取り上げられた。
同店は、オフィス街の駅ナカ中心に24店舗を展開。そばやラーメンなど男性向けの駅ナカ店が多い中で、一人でも入りやすいオシャレな雰囲気や、迷わず選べる10種のメニュー、料理の提供時間が速くサクッと食べられるなど、「女性向けのファストフード店」として支持されている。
定番メニューには「釜揚げしらすと南高梅」、「山形だしと湯葉ちりめん」、「冷汁<宮崎郷土料理>」、など、本紙関連の食材が多く取り入れられている。
その人気メニューのひとつに「炙り明太子と高菜だし茶漬け」がある。博多の食品業界では明太子と高菜、それに博多ラーメンを「博多お土産3点セット」と称し、空港や駅では主力商品。それらが採用されているのは、博多出身の記者としては嬉しい限りだ。
コロナにより、外食業務用やお土産需要減で大きく影響を受けた「博多お土産3点セット」も、感染者数減少で回復の兆しが見える。一日も早い復調を望む。
(菰田隆行)
【2021(令和3)年10月26日第5073号13面】


【編集後記】10月11日号

新聞記事で販促を
7月に、ある奈良漬屋さんが新店舗をオープンしたと伺い、取材で訪問した。
紺地の暖簾と錦にどちらも社名が白字で入れられ、洗練された和風の外観がスタイリッシュだった。入店し、店内を見渡すと嬉しい驚きがあった。本紙の過去記事を拡大してフリップにし、レジ前に掲示されていたのだ。POPや切り抜き記事が販促に利用されているのは度々見かけるが、これほどのサイズはそうお目に掛かれない。ご活用いただき、ありがとうございます。
新聞の切り抜きが置かれている場所として私がすぐに思い浮かぶのは、道の駅と書店だ。道の駅では地元紙掲載の紹介記事が、書店では全国紙の書評欄を参考に棚作りをし、切り抜きが横に添えられる。
本紙も小売店様で他県名産品のフェアをされる際、ぜひ特集などを参考にしていただき、できれば「withおいしい新聞 食料新聞社Ⓡ」と記載していただけると励みになります。ご一報お待ちしております。
平素より業界の皆様に本紙を活用していただき、感謝申し上げます。今後ともお役に立てますよう精進して参ります。
(高澤尚揮)
【2021(令和3)年10月11日第5072号5面】


【編集後記】10月1日号

細胞を動かす歌
今号1面でもご紹介しているように、サザンオールスターズ桑田佳祐氏のニューアルバムのタイトルは「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼きfeat.梅干し」だ。アルバムに収められた6曲を桑田氏が考える「究極の献立」になぞらえている。さっそくレコード店に走り、数十年ぶりにCDを購入し歌詞カード片手に聴いた。音楽をじっくり聴くのは本当に久しぶりだが、桑田氏の歌声がスーッと入ってくる。CDに付けられた歌詞カードの紙の手触り、独特な匂いもなんだか懐かしくてウルッと来てしまった。
その後も昔良く聴いていたサザンのCDを引っ張り出し聴いていたが、音楽に溶け込んでいた当時の記憶が蘇ってきた。楽しかったこと、悲しかったこと、夜な夜な思い出に耽った。
「究極の献立」とは日本人の身体に染み込んだもので、サザンの歌もそうなのだ。食べると、曲が流れると、身体のなかの細胞が動く。心地良く安心する。どんなごちそうを食べても、最後は戻りたくなるそんな安定感がある。
漬物、佃煮を始めとした伝統食は長年にわたり日本の食卓を支えてきた。自信を持ってその価値を伝えていきたいと改めて思った。今日の朝食は、アルバムタイトルの6品に佃煮を追加し、感謝を込めて頂きたいと思う。(藤井大碁)
【2021(令和3)年10月1日第5071号5面】

食料新聞 紙面見本(1面)
「ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼きfeat.梅干し」アルバム紹介 HP


【編集後記】9月21日号

浅漬に変動相場制の導入を
野菜が高い。8月の長雨や局地的な集中豪雨、降雨後の高温など、全国的に野菜の生育に適さない環境が続き、生育不良で収穫量が減少、価格の上昇につながっている。
影響が出てくるタイミングは農作物の種類によっても異なる。お盆明けは胡瓜が高騰し、宮崎県では一時的に2万4000円(5㎏)という異常とも言える金額を記録した。現在は白菜やレタスなどの葉物野菜が高騰している。
青果売場は市場の価格によって毎日価格が変わる。だが、野菜を原料として加工する漬物は価格が変わらない。浅漬は収穫直後の野菜をすぐに加工するため、青果相場が上がれば原料価格も上がることになる。
今年は冷凍食品やマヨネーズなどで値上げが実施されるが、漬物業界が長年に亘って価格を改定できない要因は、業界の弱さだと指摘されている。他の売場ではできるが、漬物売場だとできない理由はどこにあるのだろうか。
現在の白菜のように原料価格が3倍も上がれば採算割れするのは当然のことだ。これまではメーカーが我慢するケースが多かったが、赤字経営が続けば商品を供給するメーカーがなくなる可能性もある。値上げの機運が高まっている今年こそ、「変動相場制」の導入を強く訴えていく必要がある。(千葉友寛)
【2021(令和3)年9月21日第5070号9面】
 

【編集後記】9月11日号

「カット野菜がお得です」
近所のスーパーに行くと「野菜高騰中!カット野菜はいつでもお買い得です」という旨のポップが掲げられていた。キャベツ4分の1玉と、千切りキャベツ150gを見比べて、千切りキャベツをカゴに入れた。アジフライも一緒に買って、その日の夕飯にした。
漬物も同じく、野菜が高騰するとよく売れる。一消費者としては大変助かるのだが、メーカーにとっては原料野菜の仕入れ値だけ上がり製品価格には転嫁できていない、つまり利益を削っている状態だと知っているだけに、買いながら少し申し訳ないような気持ちになってしまった。
日本漬物産業同友会原料対策委員会では、昨年から「漬物の〝変動相場制〟導入」について議論が出ている。原料価格が数百%単位で変動する昨今、出て当然の意見に見える。
もちろん加工品の価格決定には市場競争や契約栽培など様々な要素が絡み、経済的問題を抱える消費者にまで負担を強いることは必ずしも正しいとも言いづらい。単純な議論では収まらないだろうが、関わる誰もが笑顔になれる適正価格を探す努力は続いて欲しいものだ。(小林悟空)
【2021(令和3)年9月11日第5069号4面】
 

【編集後記】9月1日号

伸長するネット通販
どこのスーパーで買い物するかを選ぶ時、これから重要な選択要素となりそうなのが、ネットスーパーの宅配サービスだ。
日本有数のスーパー激戦区である三重県北西部で、ネットスーパーシェア95%を誇るスーパーサンシの高倉照和常務は、「小売店にとって今は、50年に一度の地殻変動の時期」と語る。
それは今から約50年前、モータリゼーションの大波が日本にも押し寄せた。客の店へのアクセスが「車」中心になったその時、駅近の立地から、郊外に広い駐車場を用意して店舗を構えるという対応をした企業が現在、全国の大手または地方の雄となっている。
そして、「今はすでにスマホ社会となっており、それなのにネットアクセスを持たないのは、車社会なのに駐車場を持たないのと同じ」と高倉常務は語る。
ネット通販による物販は、この10~15年で2兆円から10兆円規模にまで大きく伸びている。さらに2020年はコロナによりその勢いが急加速した。
アフターコロナを見据え、ネットスーパーを巡る動きは今、大きな変革の時を迎えている。(菰田隆行)
【2021(令和3)年9月1日第5068号6面】
 
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