企業紹介
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(齋藤正久社長、東京都江東区豊洲)は、昭和9年12月、東京都(当時は東京市)に卸売市場法が公布されたことで漬物の荷受機関を設置することになり、日本橋から築地に市場が移転した同時期に会社が創立。平成19年10月に全国漬物株式会社と統合し、平成18年11月に皆川昭弘氏が7代目社長に就任、平成30年11月に市場の豊洲移転に伴い豊洲に移転した。令和4年4月に齋藤正久氏が8代目社長に就任した。
創業当時の主な取扱い品目は奈良漬、みそ漬、福神漬、しょうが漬、楽京漬、からし漬、べったら漬などで、現在は常時1000アイテム以上を取り扱っている。90年以上に亘って大消費地である東京で卸売の業容を拡大した。同社に商品を販売する荷主共和会の会員は約80社で、全国の名産品や特産品を取扱い、幅広いニーズにきめ細かく対応している。
新体制となり、第93期を迎えた同社の齋藤社長は社員の自主性を育てながら利益を生み出せる体質に進化していく方針を示し、これまで培った確かな経験と知識、業界屈指の高い信頼性と評価をもとに更なる業容拡大を目指している。
企業情報
名称 | 東京中央漬物株式会社 |
代表 | 代表取締役社長 齋藤正久 |
創立 | 昭和9年12月25日 |
営業品目 | 漬物を主体に味噌・惣菜など各種食品を販売。 |
本社 | 〒135-0061 東京都江東区豊洲6-3-3 豊洲市場内 電話 03―5547―4831 FAX 03―5547―4835 |
資本金 | 3,200万円 |
社員数 | 48名 |
HP |
本社 東京都江東区豊洲6-3-3
東京都公認の漬物荷受である東京中央漬物株式会社(齋藤正久社長、東京都江東区豊洲)は9月27日、東京都台東区の東京都立産業貿易センター台東館にて『2024C‐Zジョイフルフェア』を開催した。北海道から九州まで日本各地のメーカーから、荷主共和会加盟企業70社、荷主会以外の企業23社の計93社が出展し、コーナー展示への出品企業を含めると約120社、500アイテム超の商品が一堂に集結。量販店、二次問屋、三次問屋、専門店、外食関連のバイヤーなど約200名が来場した。「物価高に負けず新たな商品価値の発見 ~和食回帰で漬物摂取~」をテーマに、全国の名産漬物をはじめ漬物専業卸の展示会ならではの隠れた逸品やこだわりの商品、季節の限定商品、年末年始に向けたイチオシ商品、新商品など多数の商品を展示。中央漬物コーナーでは昨年に続いて、パプリカ等を原料とした同社PB商品「彩菜さらだ漬(米甘酢ドレッシング)」を展示した。バイヤーへの商品提案はもちろん、メーカー同士でもお互いの取組や商品の情報交換が積極的に行われた。
新型コロナウイルスの流行が収束し、国内旅行及びインバウンド観光客の人流が回復。コロナ禍では不振だった観光土産、外食需要が活気を取り戻している。
しかし、漬物業界の足元に目を向けると、原油高と円安によるエネルギー価格の高騰や人件費の上昇などで物価高が続き、消費者が抱く「生活防衛意識」の高まりは、食卓の副食材である漬物の買い控えという現象を招いて、厳しい現状が続いている。
また、ここ数年続く天候不順や記録的な猛暑等で、漬物の原料調達への対応がこれまで以上に難しい環境となっているのも、業界リスクの大きな要因の一つとして挙げられる。
今回の展示会では商品の発掘や新たな販路開拓をポイントに、従来からの荷主に加えて新規のメーカーや資材業者が初出展。各カテゴリーを代表するメーカーが、自慢の逸品や差別化を図る高付加価値商品を取り揃えた。
コーナー展示では、昨年も好評だった年末年始商材、高付加価値商材コーナーに加え、健康的な食材の「健康意識コーナー」、個食対応商品を集めた「個食コーナー」を設置。いずれのコーナーも終始来場者の目を集め、ニーズの高さを物語っていた。
社長就任から3回目の展示会となった齋藤社長は、昨年改革した展示会の内容をさらに進化させた。開催時期の9月変更や、カテゴリー別ではない五十音順のブース配列に加え、配置によってブース訪問者数に差が出ないよう、一方通行の順路設定も実施した。
こうした改革は全て出展メーカーの意向を汲んだものであり、齋藤社長が担当者からの意見を吸い上げて実行した成果の表れ。現場担当者が会場でテキパキと接客する姿勢が印象的で、3年目を迎えた齋藤社長の東京中央漬物はさらに進化していく。
齋藤社長は展示会の傾向と対応について「得意先からは、出展メーカーや商品をもっと掘り下げてほしい、という要望もある。漬物は日配商材なので、配送体制も含めて取り扱いが可能な商品なら積極的に対応していきたい。最近では、売上が回復してきた外食産業から、全国の商材を取り扱える当社の利点に注目していただき、オファーが増えている。また、通販ルートからのニーズなど、新規の取組も増えてきているので、今後も積極的に対応していきたい」と語った。
上半期の漬物カテゴリー別動向では「キムチと沢庵は売上が伸びている。沢庵が売れている理由は、これまで主流だった一本物・ハーフ物からカップ物へとシフトしてきており、個食ニーズに対応した商品も含めて、選択肢の広がりが売上増につながっていると思う。ただ、沢庵の原料大根は高菜漬と同様に原料不足が続いており、販促は控える傾向にある。今年の原料手当てはこれからなので、原料が十分に確保できれば、さらに売上増が期待できる」とした。
続けて、「キムチは、昨年過去一番の売上だったが、業務用で焼肉店などにも販路があり、今年の上半期は昨年を超える勢いがある。生姜製品も動きは良かった。紀州産が大凶作となった梅干しは、中国産原料の商材で対応できているため、バランスは悪くない。米不足の影響としては、“釜めしの素”が売れなかった」と説明した。
量販店との取引については、「新店舗を積極的に出店している直取引のスーパーは、売上増となっている。ディスカウント商材中心の店舗もあるが、品揃えは豊富なので対応できる体制はある。ドラッグ店の直取引はなく問屋卸しだが、体に良いものというニーズから梅干しは良く動いている」と話した。
昨年お披露目した同社PBの『彩菜さらだ漬』については「大変好評だったため、スタンドパックの大容量商品も企画したが、パプリカ原料の高騰で断念せざるを得なかった。そこで容器をカップタイプに変更し、今後は国産原料を使用できる6~9月の限定商材として販売していく。また、パプリカだけでなく四季ごとに違う食材で対応する商品の規格もあり、中漬オンリーワン商材として強みを発揮していきたい」と語った。
菊地部長は、メーカー各社の製品値上げの状況について「一般食品はNB商品が値上げすれば、他社も追随できる。一方、漬物は大手メーカーが少ないことも要因の一つだが、軸となる商品の値上げが進んでいないのが現状だ。量販店では“値上げは受け入れられない”という雰囲気ではないので、単純にはいかないかもしれないが、ニーズに合わせた付加価値を付けるなどの対応で、価格を引き上げる必要性は感じている」と話している。
同社の前期決算は、売上37億1855万円で、前期比2・9%増、売上総利益は3億4267万円で、同0・2%減となった。
今年上半期の状況について齋藤社長は、「得意先で、利益の合わない取引先は販売を取りやめたところもある。7月までの売上は、ほぼ前年並みの98%で推移している」と説明した。
全国各地の魅力ある商品を取り揃える専業問屋として、100社規模の展示会を開催できるのは、東京中央漬物のストロングポイントだ。
課題やリスクが山積する漬物業界の中で、漬物の可能性を広げる役割を担う同社の存在感は、以前にも増して大きくなっている。
【2024(令和6)年10月1日第5175号1、3面】
9月1日号 トップに聞く
東京中央漬物株式会社 代表取締役社長 齋藤 正久氏
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(東京都江東区豊洲)の齋藤正久社長にインタビュー。9月27日に東京都台東区の東京都立産業貿易センター台東館で開催する『2024 C‐Z ジョイフルフェア』について話を聞いた。今回の出展社数は荷主会企業が63社、荷主会以外の企業が30社で計93社が出展。得意先からの要望やニーズに応えるための対応で、「物価高に負けず新たな商品価値の発見~和食回帰で漬物摂取~」をテーマに、年末向け商品を中心に幅広く提案する。(千葉友寛)
◇ ◇
‐昨年に続いて展示会を9月に開催する。
「多くの展示会は6月か7月に開催され、当社も以前は7月に開催していたが、コロナもあって目先を変えてみよう、ということで昨年初めて9月に展示会を開催した。9月は夏場よりも少し涼しくなるし、会場も浜松町より浅草の方が来やすいということもあり、以前よりも多くの得意先にお越しいただくことができた。商品提案は秋冬ではなく、年末向けが中心となるが、業界内の情報交換の場としても利用していただいている」
‐荷主会以外の企業の出展が増えている。
「これも昨年からのことだが、以前は荷主会企業中心の出展だったが、消費者のニーズが多岐に渡っていて、得意先の要望も幅広くなっており、それらにしっかりと応えるために荷主会以外の企業に出展をお願いするケースが増えている。荷主会以外の企業においてはまだ成果が出ていないところや発展途上のところもあるが、何かのきっかけで取引が拡大する可能性があると思っている。当社は全国の名産品を供給することが大きな役目なので、得意先に関心を持っていただけるような商品を提案していきたい」
‐展示会のテーマは。
「物価高が続き、この秋も多くの食品が値上げになる。消費者は自分が好きなものや必要なものしか買わなくなっており、その線引きがこれまで以上にシビアになっている。ただ、コロナが収束し、売場で試食の提供が可能となっているため、試食で美味しいものに出会えれば価格に関係なく購入していただけると思う。一度気に入った商品は多少の値上げがあっても買い続ける人が多い。いかに出会う場を提供するか、ということが大きな課題で、若い人は売場に来ないので試食を提供する機会もない。それならばSNSで情報を発信するなど、これまでとやり方を変える必要もある」
‐ニーズの変化。
「都市部を中心に世帯人数が減少していることもあり、食べ切りサイズや食卓に並べるのに手間がかからない個食、簡便性のニーズが高まっている。展示会では今年も全国名産コーナーを設置せず、個食コーナーを初めて設置する他、来年の展示会では漬物を素材としたレシピ提案を行いたいと考えている。そのまま食べるだけでは漬物の需要は増えない。特に若い方に向けては、料理素材としてメニュー提案を行うことで裾野が広がると思っている。また、新進さんのように『福神漬の日(7月29日)』に合わせてイベントを開催したり、やまうさんのように『吉祥寺カレーフェス』に福神漬を協賛するなど、仕掛けていくことが重要。当社はここ2年、通販や業務関係の得意先が増えている。特に業務用はコロナが収束して需要が増加しているのでもっと伸びると見ているし、当社も力を入れている。展示会の会場ではこのような情報交換をさせていただきたいと思っているので、多くの方にご来場していただきたい」
【2024(令和6)年9月1日第5172号1面】
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(齋藤正久社長、東京都江東区豊洲)の取引先で組織される東京中央漬物荷主共和会は14日と15日、兵庫県での研修旅行を実施。全国から45名が参加した。
コロナの影響で2019年6月以来、5年ぶりの研修旅行となった今回の研修では、キユーピーグループ初のCO2ネットゼロ工場として2016年10月19日に生産を開始したキユーピー株式会社(髙宮満社長、東京都渋谷区)の神戸工場を視察。ドレッシングとマヨネーズの製造ラインを見学した他、試食も行った。
2日目の15日は観光組とゴルフ組に分かれ、観光組は姫路城や北野異人館街を観光。ゴルフ組は六甲カントリー倶楽部でプレーを楽しんだ。齋藤社長は社長就任後初となる研修旅行を交流、勉強、教育の場と位置付け、有意義な時間を共有。「顔と顔を合わせて話すことが大事。研修旅行は1年に1回くらいのペースでやっていきたいと考えている。また、参加者も1社一人という制限を設けず、情報交換や勉強のために若手社員の方にも参加していただきたい」と来年は規模を拡大する意向を明かした。
14日の昼に新神戸駅に集合した一行は、南京町中華街で昼食を取った後、キユーピー神戸工場へ移動。同工場ではキユーピーの歴史や神戸工場の紹介、各製品を紹介する動画鑑賞、工場見学、ドレッシングやマヨネーズの試食を行った。
キユーピーは1919年に食品工業株式会社として設立。1925年に日本初となるキユーピーマヨネーズの製造販売を行い、1957年にキユーピー株式会社に社名変更。1958年からドレッシングの製造販売をスタートした。
キユーピー神戸工場はキユーピーグループ初のCO2ネットゼロ工場として2016年10月19日に生産を開始。敷地面積は6万4042平方メートル、従業員数は約170名、生産量は約8万1000t(年間)。神戸工場では1日約67tのドレッシングと同約295tのマヨネーズを製造。
1960年代はサラダのメニューの幅が広がり、70年代になるとしょうゆベースのドレッシングの登場でサラダに合わせる食材の幅が広がった。80年代はドレッシングとサラダが家庭の食卓に登場する回数が増加し、90年代になるとサラダは食卓の脇役から主役になる存在に変わった。
2000年代になると深煎りごまドレッシング、シーザーサラダ、コブサラダなどレストランや新しいサラダメニューの提案が広がった。洗わずそのまま食べられるパッケージサラダがサラダを手軽に楽しめる存在にし、同社はドレッシングを通して新たなメニューと食文化の提案で食卓を豊かにすることに努めてきた。
マヨネーズの原料となる植物油、香辛料、酢は「良い商品は良い原料からしか生まれない」をコンセプトに厳しい基準を設けて一つ一つにこだわった原料を使用。味だけではなく、「もっとおいしく、もっと使いやすく」をテーマに容器の形状も進化した。
24時間稼働で機械化された工場の見学を行い、充填、包装、箱詰めのラインを視察。多くの参加者から「人が全くいない」という声が漏れた。ドレッシングとマヨネーズの試食では、レタスとパプリカのサラダに好きなドレッシングやマヨネーズをかけて食べることができ、新商品や植物生まれのドレッシング、低カロリーの商品の味を確かめた。
齋藤社長は「キユーピーさんの製造ラインはオートメーション化されていて、人がいなくても製品ができていた。漬物の工場は原料の処理、漬け込み、出荷まで人手がかかる。日本は働く人が減っているので、全ての工程を機械化することは難しいと思うが、できる部分は機械化を進める必要がある」と感想を述べた。
また、販売面についても「レシピの紙をいっぱいもらってきた。中には思いつかない食べ方も多くあった。キユーピーさんはマヨネーズやドレッシングを調味料や炒め物の油代わりに使うなど、用途や使い方の情報を公開し、広く消費者に伝えて食べ方提案をしている。ただ製品を作っているだけではなく、その先を見て進んでいる」と語った。
キユーピー神戸工場を後にした一行は、宿泊先である有馬温泉兵衛向陽閣に到着。同ホテルは有馬温泉をこよなく愛した太閤秀吉により、兵衛という名をいただいた、という逸話がある創業700年の老舗旅館。有馬温泉は日本三古湯として、道後、白浜とともに古来より愛されてきた。日本書紀に記されていることから、1300年前から人々を癒してきた。名湯「金泉」は、その鉄分と塩分の多さから無色透明で湧き出た後、空気に触れて赤褐色へと変化する。太古のロマン漂う湯けむりの中、有馬の名湯を堪能した。
歓談の時間が続いた後、株式会社太陽漬物の野左根健会長が中締めの挨拶に立ち、「宮崎県の4月の日照時間は50年に1度と言われるほど記録的に短かった。その他、円安、農家の高齢化などの課題もあるが、工場で働く人もいない。厳しい環境であることは間違いないが、アントニオ猪木さんの『元気があれば何でもできる』という言葉を思い出して元気を出して頑張っていきたい」と万歳三唱の音頭を取って閉会となった。
翌15日は観光組と、皆川昭弘会長引率のゴルフ組に分かれて行動。観光組は姫路城、灘菊酒造、北野異人館街を観光し、ゴルフ組は六甲カントリー倶楽部でプレー。ルールはダブルぺリア方式で競技した結果、大沢純一氏(ヤマサン食品)が、NET73・8で優勝した。
上位入賞者は次の通り(敬称略)。
▼優勝 大沢純一=NET73・8
▼準優勝 青木克人(吉沢食品工業)=NET74・2
▼3位 山本賢司(山本食品工業)=NET74・6
▼ベストグロス賞 森田徹(岩下食品)=グロス85
【2024(令和6)年5月21日第5163号2面】
社長インタビュー
◇ ◇
‐年末年始の売れ行きは。
「12月は昨年と同じくらいで推移したが、1月は少し下がって前年比99%となった。勢いが落ちたというよりは昨年の1月から3月が良かったという印象で、99%くらいが本来の数字だと思っている。昨年は値上げもあったが、値上げによって消費者の商品に対する目が厳しくなり、必要なものしか買わないようになってきている。少し前のことだが、自宅の近くにスーパーがオープンした。オープン直後は特別価格で販売していたこともあってすごい賑わいを見せていたが、少し時間が経つとあれだけいた人が全くいなくなった。買い物に対する意識はシビアになってきており、スーパーも新店を出しているところは売上が増えていると思うが、新店が出なくなるとより厳しい状況になっていくと感じている」
‐値上げの動きは。
「昨年の11月上旬から見ると、2月から5月にかけて値上げの打診があったのは64社。その半分以上が業務用の商品だった。コロナの5類移行後、業務用関係が回復し、動きが良くなっていることも影響している。値上げの理由については4月からの物流費の上昇に伴うものもわずかながらあるが、全体のコストから見ると大きな割合にはならないため、多くのメーカーが吸収する動きとなっている。春夏は様子を見て秋冬のタイミングで検討するところが多くなる、と見ている。一昨年から昨年にかけて値上げを行った後もコストは上がり続けている。漬物もカテゴリーによっては3回、4回の値上げを行っているものもあるが、大体の品目は一巡していて二巡目をいつ行うか、というところがポイントだ」
‐6月から漬物製造業が許可制になる。
「得意先の要望もあり、1月中旬から製造許可取得に関するアンケートを行っている。アンケートの回収率はまだ6割程度だが、その内の8割はすでに許可を取得しているか申請中ということだった。残りの2割はこれから対応する、ということだったが、小規模事業者については事業を継続しないところも出てくると見ている。後継者が不在、人手不足、設備投資といった問題に加え、持続可能な商売ができているのか、ということもある。利益を確保しなければ設備投資をすることもできず、製造許可が下りない可能性もある。地方の特産品は小規模事業者が製造しているケースが多く、製造許可が取得できなければ特産品の減少につながり、その地域における食文化が継承されなくなる可能性もある。当社は日本の伝統的な漬物を後世に残したいと思っており、そのような商品を取り扱えなくなれば当社の魅力もなくなってしまう。地方で眠っている商品を掘り起こし、流通に乗せていくことは当社の責務でもある。事業の継続や製造許可取得で悩んでいる事業者の方は是非、声をかけてほしい」
‐インバウンド需要は。
「浅草や築地には多くの外国人観光客が訪れており、インバウンド需要は活況となっている。2月1日には当社が所在する豊洲に新しい商業施設『千客万来』がオープンし、国内外の観光客で連日賑わっている。この3カ所は、日本の文化を発信する重要な拠点だと感じている。日本の食は海外の人からも高く評価されていて、外国人も列を作って並んでいる。土産店よりも飲食店の方が動きが良く、そこに付け合わせや試食など、漬物を入れられないかと思案している。ピンチもあるが、チャンスもある。自分たちの強みを再認識し、商機を逃さないように取り組んでいくことが重要だ」
【2024(令和6)年3月1日第5155号4面】
総会は守随純一常務取締役の司会進行で、齋藤社長が挨拶に立ち、2023年秋の褒章・叙勲で東海漬物株式会社の大羽恭史会長が旭日双光章、前田食品工業有限会社の前田節明会長が黄綬褒章を受章したことを報告し、祝辞を述べた上で、「今期は円安や様々な値上げによって物価の高騰が続き、日本経済全体が新たな時代の変化に対応すべく、日々奔走している。世界では戦争や異常気象による様々な被害が出ており、日本でも漁獲や作物の収穫不良、人手不足など、様々な変化や問題が起きている。その変化に対応するためには当社の力だけではなく、荷主の皆様の力なくして解決することはできない。皆様の知恵をいただき、新しい時代の変化にともに歩みたいと思っている」と協力を仰いだ。
業績や今後については、「コロナが5類に移行し、インバウンド需要が高まっている。様々なイベントや催しが開催されることで以前の活気が戻り、景気もゆるやかに回復している。当社の今期の上半期の売上は昨対106%まで回復している。10月単月に至っては昨対110%と好調で、今期は久方ぶりに良い結果が残せると考えている。これもひとえに荷主の皆様、得意先の皆様、関係各社の皆様のおかげだと思っている。本日は4年ぶりに総会を開催することができ、全国の荷主の皆様と触れ合う機会を作ることができたので、新しい時代に向けて語り合っていただきたい」と結束を強く求めた。
続いて産地情報交換会(4面掲載)に移り、白石昌之統括営業部長が司会を務めて進行。出席者の中から代表者が各カテゴリー別に原料や商品の売れ行きを報告した。
総会後、別室にて懇親会が開催され、皆川昭弘会長が挨拶を行い、「産地情報交換会では今後の商売に向けて参考になる話をしていただき、感謝している。総会は4年ぶりの開催ということで、久しぶりに会う方もいると思う。時間の許す限り歓談していただき、英気を養っていただきたい」と述べた。
続いて株式会社太陽漬物の野左根健会長による乾杯発声で開宴。全国の有力企業のトップが顔を合わせながら情報交換を行い、交流を深めた。
有意義な時間を過ごした後、前田節明会長が中締めの挨拶を行い、「本日は色々な情報をいただき、感謝している。今年も残すところあと1カ月。12月は業界の多くの企業が忙しくなると思うので、引き続き頑張っていただきたい」と一本締めの音頭を取り、閉会となった。
<浅漬>気候変動のリスク高まる
浅漬の動きは芳しくない。この1年のPOSデータを見ると、漬物は98・7%とほぼ前年並みとなっているが、浅漬は96・6%ということで元気がない部類。しかし、その下がっている分はキムチが伸びており、浅漬とキムチを足すと同じくらいの数字になる。本漬は値上げや規格変更があったのでその影響が出ていると思うが、浅漬は大きな変更等がなく単純に売れていないということ。
前年と比較すると3月、9月、10月は売れているのだが、端境期なので前年をクリアしてもあまり良い状況ではない。原料産地の作付面積は年々減っている。
ただ、この5年の市場の相場を見ると大きな変化はないのだが、ここ1、2年は上昇傾向にある。その要因は肥料、薬品、資材、重油などの上昇、人件費や運賃などの固定費の増加が挙げられる。国産原料にも色々な影響が出始めている。
白菜は猛暑や残暑の影響で定植が遅れたため今月上旬まで逼迫していたが、その後は定植したものが一気に出てくるので、作付面積が増えたこともあり今月下旬から2月上旬まで大豊作となる見通し。
気候変動のリスクが高まっており、秋口の大根やかぶは不作となった。主産地は北海道や青森だが、猛暑の影響で収量が減少し、歩留まりも悪かった。産地の緯度は上げられないので長野の高地など標高を上げるしかない。時間はかかるが、サステナブルな生産や農家のことを考えると自分たちで栽培することを検討する必要がある。
得意先から要求される季節を先取りした商品の供給には限界がある。来年4月は物流問題があり、全ての産業にかかってくる。サステナブルな商売を続けていくためには適正価格での販売が必要だ。
<生姜>適正価格化に待ったなし
海外生姜は産地が3つあり、全ての産地で生鮮生姜の価格が高くなっている。
作柄は悪くないが、塩蔵の漬け込み量は半分となっており、注文しないと漬け込んでくれない。タイは干ばつで3月下旬の植え付け時期に雨が降らず、5月まで植え付けしていた。サイズは小ぶりとなったが、品質は悪くない。
中国の南部と山東省は豊作だったが、生鮮の価格が高かったので漬け込まれなかった。
生姜は寿司のガリや焼きそばの紅生姜などに使用され、無料で提供されていることが多い。スーパーでは価格が決まっていて、なかなか適正価格にすることができない。だが、今年は適正価格で販売できなければ生き残ることができない。
寿司のガリも無料から有料化に変えていく必要がある。来年はさらに高くなる可能性がある。受注での漬け込み、諸経費の上昇などを考えると、適正価格化は待ったなしの状況だ。
<キムチ>売上好調で構成比も上昇
キムチは5月のコロナ5類移行以降、売上は好調に推移している。冬物の白菜についても天候に恵まれて順調にいくと見ているが、逆に早く獲れ過ぎて、春から夏に向けて冷蔵で保存する白菜の方は心配もある。
白菜の価格については石油などが上がっていることもあり、前年比では若干高めに推移すると予想している。
販売については9月のPOSを見ると、漬物の中におけるキムチの構成比は全国が前年比107%、構成比は29・6%。エリア別に見ると、首都圏は構成比30・2%、前年比109%。近畿は構成比29・8%、前年比109%。中京は構成比29・2%、前年比104%。当社はキムチのウエートが半分くらいあるので、キムチが売れるかどうかということは重要。これからの販促については、多くのメーカーが現在も増量をしている。当社では「こくうまキムチ」を減量したが、数量は前年をクリアしており順調。ただ、「きゅうりのキューちゃん」は値上げをしたところ、数量ベースでは非常に苦戦している。
今後については1月、2月は白菜がある、ということで一度減量はしたものの、増量で対応し、しっかりと売上を作りたいと考えている。
<佃煮・煮豆>三つの方法で価格改定
おせちはダウントレンドだったのだが、コロナで需要が高まって伸びた。この3年は毎年5%くらい上昇し、スーパーでも売れていた。しかし、今年は裏年になるので苦戦している。
昨年、ジャパネットたかたが2万円のお重を32万段販売し、64億円の売上を記録した。大手スーパーはその影響を受けたが、今年はそのジャパネットたかたも前年割れとなっており、主要なスーパーの予約状況も8割くらいで苦戦している。
今年は原材料やコストが上がっているため、三つの方法に分けて価格改定を行った。売場を取られたところもあるが、品質を落としてまでやりたくない、という気持ちが強かった。一つ目は内容量を減らして価格を維持。売れ筋商品の内容量を360gから60g減らした。二つ目は価格のアップで、2割上げた商品もある。三つ目は内容量を減らして売価も上げる。この結果は来年出ることになる。
年末年始は海外への旅行者が少なく、国内旅行が多くなると見られている。そのため、地方のスーパーは少し強気に準備している。その反面、首都圏は数量ベースで前年95%の発注となっており、10%の値上げで同じ数字になればいい、ということで年末商戦に力が入っていない印象だ。
惣菜は燃料や電気代が上がっているため、コストが上がっている。おせちも合わせると春と秋に値上げを実施したので大変な1年だった。
海外ではおにぎりが人気で、アメリカでは1個500円で販売されている。ある店では3時間待ちになっている。佃煮や漬物はおにぎりの具材として適しているので、そのようなことを切り口に明るい1年を迎えたい。
<梅干し>夏の好調で需要が下げ止まり
コロナ禍の3年間、梅干しの売れ行きは芳しくなく、毎年のように4、5%下がっていたが、今年に入ってようやく下げ止まった。今夏は猛暑が続いたので良く売れた。8月は前年比で約108%、9月も110%近い数字だった。10月も暑い日が多く、まずまずの売れ行きだった。
紀州梅は令和3年、4年の作柄が良く、今年は収穫直前の台風による強風で傷が入ったり落下があった。作柄としては平年作だったが、秀品率が低下してB、C級が多くなっている。サイズは2L、3Lが中心で、量販店向けの商品としてはちょうど良いサイズとなっている。
中国産については昨年産が不作で値上げを実施したのだが、今年も6割作と不作となっており、原料相場も上がっている。さらに円安が進行しているため、厳しい状況が続いている。中国産は昨年、価格改定や規格変更を行ったので、厳しい環境となっている。
コロナ禍で減少傾向にあった梅干しだが、今年は下げ止まって売れ行きが元に戻りつつある。今後さらに拡販できるよう、ご協力をお願いしたい。
<沢庵・高菜>塩押し順調で高菜は増反
南九州では主に塩押し大根、干し大根、高菜を生産している。現在は塩押しの中盤戦で、12月から干しが始まり2月まで行われ、3月になると高菜がスタートする。この半年間で1年分の原料を集めることになる。
南九州では大根の対抗作物として焼酎用の芋がある。5年前、焼酎がウイスキーに負けて芋は減反となっていた。ただ、ここ数年はさつまいも特有の基腐病が蔓延したこと、中国や海外でさつまいもブームが発生したことで増反が進んでいる。芋は大根と異なり、少人数でも生産できるので増えている。また、宮崎では冷凍用のほうれん草が出てきており、大根にとっては厳しい状況となっている。
ここ3年は台風や長雨などの影響で播種が遅れた。播種が10月20日に終わった年もある。そのため、平均重量が下がり、長さも3分の2ということが続いた。2023年産はそのようなことが全くなく、9月2日から10月2日に播種が終わり、その後の天候も暖かい日が続いたことで11月27日現在で計画の35%入っている。ここ2年の同じ時期と比較すると昨年は11%、一昨年は23%ということを考えると、順調にきている。
大根は肌が綺麗で、長くて立派な大根が入ってきている。集荷状況が良いこともあり、2023年産の原料については12月10日から20日の間に全て新物に切り替わる予定。
干しはまだ一本も入っていないが、昨年産の原料は今年1月28日の寒波で全て凍ってしまうという被害が出た。それによって農家の意欲が薄れている。今年は天候が安定して良品が入ってくることを祈っている。現在、播種までは計画通り進んでいる。
高菜についても今年1月の寒波の影響で7割作となった。当社は半年以上、常温発酵させているのですぐに欠品とはならないが、厳しいことには変わりがない。今年の漬け込みは増反で動いている。
<楽京>中国産、国産ともに安定供給
中国産は昨年と比べて原料価格、漬け込み量、輸出価格の全てがほぼ同じだが、円安が大きな負担となっている。漬け込み量は計4万3000tで昨年より少ないものの安定した数量となっている。江西省では生の楽京を炒めて食べる、という需要があり料理の素材として使われている。
中国産は一昨年が不作となったこともあり、昨年は量目調整と価格改定を実施した。価格改定で若干動きが鈍ったが、そこまでの落ち込みにはなっていない。今年は暑い日が続いたので好調な売れ行きとなっている。また、コロナ禍では中国から製品を輸入するにあたり、コンテナの入荷が不安定となったこともある。
国産は一昨年の作柄が悪く、在庫をつなぐことが大変だった。昨年、量目調整を行ったが、国産はヘビーユーザーがついているので数量は減っていない。今年の作柄は宮崎と栃木が平年作、鳥取が豊作となっており、商品を安定供給することができる状況。
国産楽京の生産には人手が必要で、技能実習生を利用する農家もあったが、コロナで帰国した後、日本に入国できなくなり、一部産地では収穫しきれないこともあった。原料の確保はより重要で、仕入れ先、販売先を含めて共存共栄できる姿が望ましい。
【2023(令和5)年12月1日第5147号1・4面】
東京都公認の漬物荷受である東京中央漬物株式会社(齋藤正久社長、東京都江東区豊洲)は9月29日、東京都台東区の東京都立産業貿易センター台東館にて『2023C‐Zジョイフルフェア』を開催。展示会には昨年を21社上回る102社が出展し、約200名の量販店、二次問屋、三次問屋、専門店、外食関連のバイヤーが来場した。中央漬物コーナーでは同社において3品目のPB商品となるパプリカを原料とした「彩菜さらだ漬(米甘酢ドレッシング)」を展示し、注目を集めた。「激変する社会に対応する食生活」をテーマに、全国の名産漬物をはじめ、漬物専業卸の展示会ならではの隠れた逸品やこだわりの商品、季節の限定商品、年末年始に向けたイチオシ商品、新商品など多数の商品を展示。様々なニーズに対応できるメーカーが一堂に会し、積極的な商品提案が行われた。
定番商品がこれまでと同様に売れ続ける、ということは不透明で、消費者に支持され続けるための提案や取組を行う必要がある。展示会では、商品の発掘や新たな販路開拓をポイントに初出展も含めて100社を超えるメーカーが各カテゴリーを代表する自慢の逸品や新商品、差別化を図る高付加価値商品を取り揃え、多くの選択肢を提供。新しいことにチャレンジする姿勢を示した。
昨年4月の社長就任から2回目の展示会となった齋藤社長は、展示会の内容を改革。開催時期を例年の7月から9月に変更し、提案商品も秋冬から年末年始向けを中心とした。
また、バイヤーからの要望もあり目玉だった全国名産コーナーをなくして高価格付加価値コーナーを設置するなど、会場の風景やコンセプトにも変化を加えた。
さらに、競合するメーカーが近くにいると商談がやりにくい場合があるため、カテゴリー別ではなく、あいうえお順にブースを配置。出展メーカーの意向を汲んだレイアウトにした。
齋藤社長は「展示会についてはマンネリになりがちなので、いつもと同じことをやらないように工夫した。新しいことにチャレンジして良ければそれを続けるし、課題や問題があれば改善する。得意先にも新しいことに取り組んでいる、というイメージを持ってもらいたかった。また、スーパーから高付加価値商品の提案に関する要望があり、高価格付加価値コーナーを設置した」と狙いを説明した。
現状と今後については、「コロナやインフルエンザの感染が拡大している他、物価高が止まらない。夏の猛暑で赤かぶや大根の原料がなく、メーカーも人手不足となっている。来年は物流問題もあり、大変な時代を迎えている」と課題を指摘した。
その一方で「人流が戻り、外食が伸びている。また、在宅も定着しているので小売店も伸び代があると思っている。現在のニーズは、健康機軸、物価高対応、簡便・時短。特に簡便性の要求は強く、梅干しは種抜き、新生姜や沢庵はスライス、高菜は刻みが伸びている」と今後の可能性について言及した。
会場では年末年始コーナーで季節商材が紹介された他、簡便性に対応した刻み商品やカップのスライス及びカットタイプの商品、賞味期限を延長して食品ロス削減に貢献する商品、健康志向に対応した発酵食品や減塩商品、少人数世帯向けや食べ切りの少量タイプなど、漬物業界の最新トレンドが発信される内容となった。
展示会の中盤に行われた記者会見に出席した菊地正芳量販部部長は、「他の食品業界では大豆ミートや冷凍食品の取り扱いが増えている。そこの部分は漬物業界も課題になる。漬物でも素材として使用しているメーカーもあるので、展示会でそれらの商品を見て参考にしていただきたい」と新しい素材や分野を追求する必要性を訴えた。
同社の前期決算は前年比0・7%減の36億1200万円で、売上総利益は同1%増の3億2680万円。今期の売上は4月から8月までで、前年比106・1%増と好調に推移。特にキムチ、梅干し、沢庵、生姜の動きが目立っており、7月の生姜は前年比30%増となった。
苦戦が続く浅漬について齋藤社長は、「茄子や胡瓜など、旬のものは伸びている。しかし、今年は猛暑の影響で原料確保が難しく、今後の見通しも厳しい」と原料面の不安を覗かせた。また、来年の動きについても「来年は値上げの動きがあると思っている。円安の影響や物流問題もあるので、当社の動きに合った物流会社との取引も検討する必要がある」と価格改定と物流についての見解を示した。
最後に「引き出しが多い会社だと思っていただければありがたい。重要なことは得意先に商品案内や提案をどれだけ行うことができるか。地方にはまだ知られていないメーカーで、魅力ある商品を作っているところもある。そのようなところを紹介ができるのが我々の強み」とストロングポイントときめ細かいニーズに対応していく方針を改めて強調した。
コロナ感染の再拡大、円安、物価高、異常気象、原料供給、人手不足、物流問題など、課題が山積する漬物業界にあって、東京中央漬物の存在感は以前にも増して高まっている。
【2023(令和5)年10月1日第5141号1,2面】
東京中央漬物 9月29日にジョイフルフェア 産業貿易センター台東館で開催
展示会は北海道から九州まで、日本全国の有力企業約100社が出展し、全国の名産漬物をはじめ、漬物専業卸の展示会ならではの隠れた逸品やこだわりの商品、季節の限定商品、年末年始に向けたイチオシ商品、新商品、昔から地元で人気の商品などを多数展示する。
同社の展示会は出展企業同士のコミュニケーションの場、各社の商品動向や営業戦略の貴重な情報源としても利活用されており、毎回、専門性の高い展示会として好評を博している。
【開催概要】
◆開催日時:2023年9月29日(金曜日・午前11時~16時)
◆会場:東京都立産業貿易センター台東館4F展示室(東京都台東区花川戸2‐6‐5)
TEL03‐3844‐6190
2022『C―Z ジョイフルフェア』
荷主共和会
全国より有力企業60社以上が出席し、各カテゴリーの漬物、原料産地等の情報交換を行い、業界全体の近況と動向を確認。原料状況の他、原料価格、人件費、物流費等のコストアップなど、様々な問題や課題を抱える中、全国の有力企業が垣根を越えて情報交換を行い、課題を共有することで解決策を模索し、結束を強める場となっている。2019年11月14日には豊洲移転後、2回目となる総会を開催。浅漬、キムチ、梅、楽京、生姜、沢庵、高菜、野沢菜、惣菜などカテゴリー別の情報発表が行われ、今後の方向性が示された。
荷主共和会総会 2023年11月28日に開催
今年も恒例の産地情報交換会と懇親会を実施し、情報を共有しながら交流を深める。開催時間は情報交換会が15時~16時、懇親会が16時~17時。
【2023(令和5)年10月11日第5142号1面】
齋藤社長インタビュー
上半期売上は前期比99・6%
将来的に冷凍食品取扱いも視野に
東京都公認の漬物荷受機関である東京中央漬物株式会社(東京都江東区豊洲)の齋藤正久社長にインタビュー。23年3月期上半期の業績や2023年の展望などについて話を聞いた。人口減や少子高齢化で漬物の需要減少が見込まれる中、漬物以外の品目にも目を向ける必要性を指摘。現在は惣菜を強化しているが、将来的には冷凍食品も視野に入れる意向を示した。
(千葉友寛)
◇ ◇
―23年3月期上半期の売上は。
「上半期の売上は0・4%減で、10月を含めると99・7%と昨対に近い数字に戻ってきている。主力の量販向けはやや低調だが、業務用が回復傾向でカバーしている。漬物業界もコロナの影響で倒産、廃業といった話も出てきているが、良い企業は関係なく業績を伸ばしている。皆川会長からもよく言われているのだが、いつまでもコロナのせいにはできない。少しずつではあるが、新規のお得意先様も増えており、12月も倉庫を目一杯使っている」
―御社の強みは。
「全国の漬物を一手に引き受けて、供給することができる。主要な取引先は約300社で、取扱い数は1000品を超え、小ロットでも対応している。弊社の強みは引き出しの多さと経験、それと知識。全国にパイプがあり、ある商品が原料不足で供給が難しい時も全力で類似品を探す。それが無理なら供給可能な代替品を提案する。漬物のことは弊社に任せていただきたい、と思っている」
―今後の見通し。
「漬物の市場は年々縮小している。少子高齢化が進む中、漬物だけを取り扱っていても売上は落ちていくだけだ。漬物以外の品目にも目を向けていく必要がある。近年、当社では売れ行きが好調な惣菜に近い商材に力を入れており、アイテム数を増やしている。量販店の惣菜売場は商品が充実しており、人の往来も多い。人が来る売場に商品を置くことが重要で、そのような商品の取り扱いも少しずつ増えている。また、コロナ禍で伸びた市場として冷凍食品があるが、今後は取り扱わなければならない状況になることも予想される。将来的にメーカーが冷凍食品を製造するようになれば、当社もそれに対応できるように取り組んでいく必要がある」
―品目別で好調な漬物は。
「新生姜は好調で、8月まで112%だった。9月は値上げの影響で少し後退したが、その後もプラスで推移している。沢庵は上半期108%で、10月も良かった。一部の国産製品で値上げが実施されたが、本楽的には来春からになる。量販店では微減の浅漬だが、業務用の需要が回復して全体としてはプラスとなった。キムチは巣ごもり需要が増加したことで昨年まで好調だったが、その反動で数%のマイナスとなっている。梅干しは梅雨明けが早くて猛暑となったこともあって、7月は106%となったが、8月は80%台まで落ちた。9月は110%と持ち直したが、上半期は96~98%となった。これからの動きに期待したい」
―値上げについて。
「漬物業界は他の食品よりも遅れていたが、秋冬から本格化し、来春までに大半の商品が量目調整または価格改定を実施する見通しだ。メーカーから当社に申請が届いている商品については順次商談を行っていて、案内があったところについては7割方値上げが実施できている。得意先によっては時間がかかったり、1年に1回しか改定できない、といったケースもあるが、全体的にはスムーズに商談することができている。ただ、このような状況でも値上げの案内が届いていないメーカーもある。様々なコストが上昇している状況で、すでに企業努力で吸収できるレベルではなくなっている。もともと薄利でやっているケースが多いと思うので、赤字での製造を余儀なくされているケースもあるだろう。状況としては適正価格で販売できなければ会社の存続が危ぶまれるところまできており、まだアクションを起こしていない企業の状況を懸念している」
―2023年の展望は。
「政府は、コロナの感染者が増えても以前のように規制を厳しくすることはないだろう。そうなれば、円安効果もあるのでインバウンド需要が期待でき、観光関連、飲食関係が良くなっていく。コロナの影響で巣ごもり需要が増加し、量販店は好調となって観光や飲食関係は低迷することとなったが、それが元に戻っている流れだ。利益を確保することは年々難しくなっているが、業務用の方が利益を取りやすい。企業としては利益率を高められるように何をすれば良いのか、どこの取引をメインにしていくのか定めていく必要がある」
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