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日本漬物産業同友会 2024

<日本漬物産業同友会> 北海道研修旅行を実施 「山頭火」畠中会長が講演

遠藤会長
山本旅行委員長
畠中会長
前野氏
畠中会長の講演会出席者
北海道経済連合会事務所にて
サッポロビール北海道工場を見学
 日本漬物産業同友会(遠藤栄一会長)は10月29日と30日、北海道研修旅行を実施。18名が参加した。札幌において「らーめん山頭火」の創業者である畠中仁会長の講演をはじめ、北海道農政部による「北海道の野菜をめぐる情勢」の講演及び情報交換、サッポロビール北海道工場の見学など、盛り沢山の内容で見識を深めた。漬物業界は課題や問題が山積しているが、研修旅行を通じて会員の結束を強めるとともに、今回の研修で学んだ知見を各企業の事業に反映させることが期待された。
 29日に新千歳空港で合流した一行はバスで札幌市内に移動し、畠中会長の講演がより深く理解できるように「らーめん山頭火・札幌北1条チカホ店」で昼食。参加者はただらーめんを食べるだけではなく、最後の一滴まで美味しく飲める豚骨白湯スープの味や、らーめんに添えられた小梅の意味を考えながら麺を口に運んだ。
 講演会は山本正憲旅行委員長の司会進行で畠中会長の紹介役である株式会社海苔の田畑の田畑剛社長が紹介された後、遠藤会長が挨拶に立ち、「本日はこのような機会をいただき感謝している。畠中会長様は1988年に旭川で『らーめん山頭火』を創業され、現在では海外にも出店されている。同友会のメンバーは2代目、3代目が多いので、創業者の方のお話を聞くことができることは私たちにとって大変意義深い」と語った。
 「らーめん山頭火」は、1988年3月10日に旭川で創業。1995年にフランチャイズ(FC)事業の本格展開を計画。翌年、北海道を皮切りに関東・東北でFC展開を進める。2003年、香港に海外1号店(FC)を出店。その後、アメリカ、シンガポール、香港、カナダ、マレーシア、台湾、フィリピン、タイに出店。現在の店舗数は国内14店、海外42店。
 畠中会長はもの作りの考え方について、「社会が変わるのと同じように、環境が変わってそれに合わせないと長く続かない。私が大事にしているのは環境。味は大事だが、環境が一番大事。味はデータで確認することもできるが、最後に決定するのは数人の人が食べて確認するベロメーター。数字ではない。私が作ったらーめんは、お客さんのために作ったと言っているが、本当は自分が好きなように作った」と語った。
 また、自身の経歴や社員との関係性、FC事業の考え方、事業継承、人生観について語り、人を育てることについては、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」と山本五十六の名言を紹介し、「会社は人を育てないといけない。薄利多売の商売をしていて、それで良いのか。種を植えなければ木は育たない。足りないものは互いに補えば良い。人に任せられることができれば、こんな良いことはない」と持論を展開した。
 講演後、北海道経済連合会事務所に移動して北海道農政部生産振興局農産振興課課長補佐の前野宏之氏が「北海道の野菜をめぐる情勢」のテーマで講演。北海道の野菜の作付面積は昭和50年代半ば以降、転作野菜の増加や畑作地帯での作付意欲の高まりから増加傾向にあったが、労働力の確保難、市況の低迷などから減少に転じた。
 平成18年以降、畑作地帯での野菜の導入などから再び増加に転じたが、平成27年以降は漸減傾向で推移。野菜の産出額は2228億円(令和4年)で全国1位。野菜における家計消費用の国産割合はほぼ100%だが、加工業務用では7割程度となっており、輸入の割合が3割となっている。
 農業経営体数は年々減少し、令和5年2月では3万2300経営体。経営の改善・発展に取り組む認定農業者は、令和5年3月で2万7499経営体と減少傾向にある。そのような中、令和4年の新規就農者総数は過去最少の410人。
 近年のトピックスについて前野氏は、「北海道の平均気温が2、3度上がっているので、他県の企業から生産拠点を北海道に移したい、という連絡が今年だけで6、7件届いている。また、スマート農業の技術は以前より向上しているが、まだまだ人の手の方が早いので実用できるまでの機械化は進んでいない。路地物は多少進んでいるが、ハウス物は遅れている。広い土地で栽培する作物は得意だが、少量で高付加価値のものは不得意。北海道で新しい作物を生産しようとしても難しいと思う」との見解を示した。
 30日はホテルを9時10分に出発し、恵庭市のサッポロビール北海道工場を見学。1876年9月に「開拓使麦酒醸造所」が完成し、サッポロビールの歴史はここから始まった。道内限定の麦芽100%ビール「サッポロクラシック」は、道産素材にこだわり北海道産ホップと道産大麦麦芽「きたのほし」を一部使用。こだわりの醸造方法であるホッホクルツ製法で仕込むことで素材のうまみと爽快な飲み心地を実現した。省人化された工場を見学した一行は、北海道の大地で生まれた「サッポロクラシック」を味わいながら工場を後にした。
 その後、馬と触れ合える様々なアクティビティやイベントが楽しめる体験型公園テーマパーク「ノーザンホースパーク」を見学し、新千歳空港に移動。遠藤会長は「畠中会長は過去30回の講演依頼を断っているそうなので、貴重な機会となった。人間らしく楽しく生きている方の話を聞くことができて勉強になった。今回は2日間の研修旅行だったが、中身が濃くて親睦も深めることができた。このような研修を行うことで心の貯金箱に貯金が増えていく。是非、来年の研修会も多くの方に参加していただきたい」と総括し、研修旅行を終えた。
 【研修旅行参加者(敬称略・順不同)】遠藤栄一、遠山昌子、宮前有一郎、浅田康裕、梅澤綱祐、籠島正雄、山本正憲、菅野嘉弘、齋藤正久、佐藤克成、大久保欣也、菅野嘉彬、辰巳智和子、辰巳雅世子、喬文興、報道3名
【2024(令和6)年11月11日第5179号2面】

<全漬連・日漬同友会> 原料対策委員会を共催 円安で輸入原料は高値安定

遠藤会長
宮前委員長
真野専務
日漬同友会と全漬連が共催した原料対策委員会
 日本漬物産業同友会(遠藤栄一会長)は9月25日、東京都中央区のホテルモントレ銀座にて原料対策委員会(宮前有一郎委員長)を全日本漬物協同組合連合会(中園雅治会長)の原料、品質安定化委員会(宮前有一郎委員長)と共催。全国から37名が出席し、各品目の市況や原料に関する総合的な情報交換を行った。
 日本は食料を海外に依存しているが、漬物の原料も輸入の割合が多く、為替の影響が企業の収益に大きく左右する。生姜にスポットを当てると、昨年は不作の影響などで原料価格が上昇し、円安とのダブルパンチで値上げを余儀なくされた。今年の作柄は平年作から豊作型の見通しで、原料価格は前年よりもやや下がると見られるが、ここ5年、10年の価格を見ても高止まりしている状況だ。
 さらに、為替も昨年よりは円高基調にあるものの4、5年前の1ドル107円、108円と比較すると大幅な円安となっており、円ベースの原料価格はここ10年で2番目の高値となる。原料価格が多少下がることになっても、容易に製品価格を下げることはできない状況となっている。
 また、包装資材、副資材、人件費、物流費などが上昇し続けており、企業の収益を圧迫している。日漬同友会並びに全漬連では、流通や小売店に対して現状を説明し、理解を求めていく方針が示された。
 委員会は遠山昌子副会長の司会進行で遠藤会長が開会の挨拶に立ち、「輸入原料はまだまだ円安なので厳しい状況が続いている。足の引っ張り合いではなく、付加価値を付けてブランディングを行いながら、適正価格で販売できる環境を作ることが重要」と語った。
 また、漬物と塩分の問題について、「漬物の栄養成分は50gの商品でも100gで計算した数字を表示しているが、1回食べる量の表示にすれば食塩相当量は低い数字になる。漬物は塩分が高いと思われているが、実際はそうではない。塩分についても適切な表示を目指していきたいと考えている。本日は色々な情報を持ち帰って各社の経営に生かしていただきたい」と持論を述べ、各社の発展を祈念した。
 全漬連の真野康彦専務理事は、「日本漬物産業同友会と委員会を共催させていただくことにより、全漬連のみの原料、品質安定化委員会では網羅しきれなかった情報などが得られる。本日の委員会の内容をもとに、今後の事業の具体的な取組を検討していきたい」と述べた。
(東京本社・千葉友寛)

【漬物市況】
 昨年の夏は梅干し、生姜、キムチが売れた。今年も5月から8月まで暑い日が続き、キムチや生姜の売れ行きが良かった。その他は大きな変化はないが、米不足の影響で釜めしの素の動きが悪い。7月と8月は「梅干ゼリー」や「山形のだし」の動きが良かった。間もなく9月が終わるが、売上は前年並みで推移している。
【外食・業務用】
 春以降、外食の需要は堅調だったが、夏は暑すぎたことで外出機会が減ってしまった。その他、地震や週末に雨が多かったことなどが影響し、8月と9月は思ったほど伸びなかった。
 為替の影響が大きく、価格改定を細かく進めているため金額は伸びているが、数量は減少している。
 寿司の付け合わせとなるがりは、ある回転寿司チェーンで生姜の代わりに大根を使用するケースもあり、価格改定を進めると本来あるべき需要がなくなる可能性も出てくる。中食の寿司についてもミニパックを容器の中に入れるのか、ほしい人が取るようにするのかで数量が変わってくる。日本の食文化をどのように継承していくのか考える必要がある。
【梅】
 群馬は開花が平年より12日早く、前年より14日早かった。その後、気温が低くなってミツバチが活動せず、授粉に適した日は2日しかなかった。そのため、結実した数が少なかった。市場価格は昨年の150%となり、JAはぐくみ管轄の作柄は、加工用が3割減、小梅は半分となった。各産地とも不作のため、引っ張られた可能性もある。
 青森のカリカリは3割作で、市場価格は例年の5倍となるキロ500円。価格改定は避けられない状況となっており、中国産に切り替える必要がある。
 今年の和歌山は災害級の凶作と言われる程、史上最悪の作柄となった。暖冬の影響で交配が進まず、球数は平年の4割に留まった。その後、産地全体に降雹があり、被害が拡大した。さらに、越冬したカメムシによる虫害も発生するなど、悪い条件が全て重なった。
 塩漬に使用される塩の出荷量は4680tで平年(1万500t)の半分以下だが、全部使われずに1割程度残った。そのため、漬け込まれている量は平年の3割しかないと想定している。昨年の在庫と合わせても平年の4割しかない。各社では秋から大幅な価格改定を実施するが、紀州産の原料がないので中国産の商品でカバーするしかない状況。
 昨夏も暑かったので売れ行きは良かったが、今年の夏は昨年比で105%前後で推移した。原料の等級の比率はA級が全体の1割、A級とB級を合わせると3割、C級と外で7割。今年は秀品率も低いので、格外品を棚に並べることについて理解を求めていきたい。小規模事業者においては、来春くらいに原料がなくなるところが出てくることを懸念している。
 中国のカリカリは昨年が最高値となった。今年は少し落ち着いたが、円安の影響もありキロ700円と高値となっている。
 梅干ゼリーは好調で昨年の1・5倍売れる勢い。
【生姜】
 タイは昨年の生鮮用の価格が高値となったため、農家の生産意欲が強く作付面積が3割増加。生姜に適した天候が続いて豊作型となり、大きいサイズで品質の良い生姜が漬け込まれている。
 また、スパイスなどに使用する中東勢の買い付けの時期がずれたこともあり、価格の競争が発生しなかった。原料価格のオファーはまだ出ていないが、昨年よりも下がると見ている。
 中国南部も作付が1割増えた。集中豪雨の影響が心配されたが、生姜の畑には影響がなかった。
 山東省も生鮮用の価格が高かったため、作付面積が増加。一部で豪雨の被害もあったが、全体的には大きな影響はなかった。原料価格は下がる見込みだが、人件費などその他の経費は上昇している。
 がりや紅生姜のミニパックの出荷については、大きな増減はない。
 昨年、小売用商品の値上げを実施したが、影響は想定より軽微だった。値上げした分、数量は減ったが売上は維持できている。量販店や漬物売場ではなく、水産向けの提案を強化している。
 コロナ禍において、生姜は免疫力を高めたり漢方薬に使用されることなどから、需要が増加して生鮮用の価格が高止まりしている。業務用はユーザーの理解もあり、価格改定が浸透している。
 為替の影響が大きく、8月末のレート(1ドル146・44円)で計算すると、1ケース(45㎏)の価格はタイと山東省が1万983円、中国南部が9665円と1万円ベースとなっている。ここ2年は価格改定を実施してきたが、値上げ幅を抑えているので追い付いていない状況だ。原料価格は、ドルベースでは少し下がる見通しだが、円ベースではここ10年の平均価格よりも高値となっている。
【楽京】
 今年の中国産の作柄は干ばつと雨の繰り返しで不作となり、昨年の3割減となった。昨年と一昨年の作柄は悪くなかったが、為替の影響が大きいため価格改定を実施した。しかし、採算が合う程は上げられず適正価格までには至っていない。
 今年は収量が少なく、生の価格はやや上昇している。昨年よりは円高基調とはいえ、5年前よりはまだまだ円安水準であることや様々なコストが上がり続けていることを考えると、原料価格が少し下がっただけでは安く販売できるということではない。今後も適正価格化に向けて動いていく必要がある。
 国産は宮崎と栃木の作柄が前年の110%。昨年は国産が少なく一部で販売制限もあったが、今年は安定供給が可能。ただ、生産者の高齢化が進んでおり、原料があるからどんどん売っていくのではなく、適正価格で販売しながら今後の原料の安定確保についてもしっかり考えていく必要がある。
【塩漬け野菜】
 輸入原料はサーチャージの影響も大きい。1コンテナ当たり、1万円、2万円といった金額で上がっているが、その分はなかなか転嫁できない。また、中国は高温や集中豪雨など両極端で、産地を移動するという話も出てきている。
 楽京や胡瓜は大きな変動がないが、にんにくは未だに投機が入って増減がある。その他、中国側も日本側の様子を見て買わなくなることを警戒し、価格は上昇するが無理なところまでは上がっていない。
 新潟の昨年の大根の作柄は猛暑と雨不足、シンクイムシの影響で7割作となった。今年は猛暑日が少なく、適度な雨もあったので発芽率が高く、順調に生育している。9月21日と22日の雨も産地に大きな影響はなく、現時点では豊作型と見ている。
 北海道の北の方は今のところ順調。夏は高温障害が出て青首が不足した。青森は柔腐が出て不足感があった。線状降水帯の影響で作付は例年より1週間遅れている。茨城も鹿島や鉾田で雨が少なく、作付が遅れている。また、茨城の産地に適した種がなく、違う種での生産となることが懸念される。九州も雨が多く作付が遅れている。今年は全国的に大根の出始めが遅れると見ている。
 現在は青森から原料が入ってきているが、間もなく端境期になるので10月に使用する原料が100%集まっていない。静岡で大根を生産しているが、台風や長雨の影響で種を蒔くことができなかった。原料はほぼ契約だが、市場買いになると赤字になる。
 量販店の中で漬物の値入率はかなり高い。値入率がもう少し下がれば売価も下げられる。我々の負担は大きくなるばかりなので、漬物振興議員連盟に要望書を提出して流通業界に理解を求めていきたい。
 中国のにんにくは天候の影響もあったが、大きな被害はない。春は大きな投機が入らなかったが、海上運賃が下がらず人件費や国内の運賃は上昇している。原料価格のオファーは間もなく届くが、生の価格が上がっているので原料価格も上がる見通し。
 一昨年とその前に値上げを実施したが、今年は包材やその他のものの価格が2桁アップしており、値上げが追い付かない。今後も価格改定を検討する必要がある。
 中国の四葉、ときわの作付面積は昨年並みで作柄は平年作。茄子の生育も順調。
 国産の胡瓜は全国的に集まりが悪くなっている。福島は猛暑と豪雨の影響で収量が落ちている。
 国産大根は北の方が悪く、青森も産地が弱くなってきている。
 じゃがいもの加工品は順調で昨年の114%となっている。
 しその実は例年の半分か3分の1しか収穫できず、秋田のふきも熊の影響で山にも畑にも入れない。山椒の実や山ごぼうも農家の高齢化で年々厳しい状況となっている。
 中国のカントリーリスクを考える必要があり、インド、インドネシア、ベトナムにおいて、産地や工場レベルの調査を行っている。
【土産関係】
 仙台の飲食店やホテル関係はインバウンド需要もあり、緩やかに持ち直してきている。全国的に見るとインバウンド需要は過去最高となっているが、仙台はアジアの国際便しか発着がないため、外国人観光客が多くはない。インバウンドの対応に遅れており、英語表記のパッケージや接客のマニュアルを作成している。
 津田かぶや青しまね瓜の売上は毎年1・2倍増えており、今年はさらに伸びる見込み。販路が広がっていて、新しい客も増えている。
【総括・梅澤綱祐会計理事】
 近年は天候のリスクも高まっており、どの原料に影響が出るか分からない。今年は豊作で良かった、ということではなく、日頃から準備をしておくことが重要で、我々は限りある原料を大事に販売していかなければならない。本日は全漬連の真野専務も出席され、業界の共通課題を認識することができて良かったと思っている。
【2024(令和6)年10月1日第5175号1、2面】

<日漬同友会>遠藤栄一会長が再選 宮尾氏「ナトカリ比」で講演

遠藤会長
日漬同友会の役員
大曽根新理事
日漬同友会の総会
宮尾氏
 日本漬物産業同友会(遠藤栄一会長)は5月31日、東京都中央区のホテルモントレ銀座にて令和6年度定時総会を開催。全国から約30名が参集し、来賓として全日本漬物協同組合連合会の中園雅治会長も出席した。
 役員改選では遠藤会長をはじめ全理事並びに監事が再選。役割分担では、宮前有一郎会計理事と梅澤綱祐原料対策委員長がそれぞれの役を交代する形で就任。新たに丸イ食品株式会社社長の大曽根史典氏が理事に就任した。また、有限会社阿部商事(阿部豊社長、群馬県桐生市)が新加入し、組合員数は40社となった。
 遠山昌子副会長の司会進行で開会の挨拶に立った遠藤会長は、同友会の発足から7年目を迎え、これまでの活動を振り返った上で、「輸入原料を扱っている企業は円安の影響が大きく、厳しい状況が続いているが、だからこそ集まって情報を共有することが大事。事業を継続するためには適正価格にすることが重要。そのためには付加価値を付けてPRし続ける必要がある。本会はざっくばらんに話し合うことができる会なので、交換した情報を持ち帰って各社の事業に生かしていただきたい」と積極的な姿勢を求めた。
 総会は遠藤会長が議長を務めて議事を進行。第1号議案の令和5年度事業報告、第2号議案の令和5年度決算・監査報告、第3号議案の令和6年度事業・予算案、第4号議案の役員改選は全て原案通り承認、可決された。事業計画では9月25日に原料対策委員会を開催し、10月末に一泊二日で北海道への研修旅行を実施することが決定した。
 役員改選では宮前有一郎会計理事が原料対策委員長、梅澤綱祐原料対策委員長が会計理事に就任し、それぞれの役を交代する形となった。また、新理事に大曽根氏が就任した。
 総会後、東京家政大学大学院客員教授で一般社団法人全国漬物検査協会会長の宮尾茂雄氏が「漬物はナトリウムとカリウムのバランスが決め手」の演題で講演を行った。
 漬物の食塩濃度は技術の進歩で低塩化が進んでいる。主な加工食品の常食量に含まれる塩分量を見ると、漬物はほとんどの品目が1g未満となっており、決して高いとは言えない。一般的に使用されている栄養成分表は100g中の塩分なので、実態と合っていない。
 内閣府食品安全委員会が2016年に京都で塩と健康に関する講演を行い、そのまとめとして食塩摂取(現状)と健康障害の直接的因果関係は明確ではない、十分な(カリウム)の摂取‥カリウムは野菜や果物に多く含まれる、などの考察がある。
 カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して尿中への排出を促進するため、血圧を下げる効果がある。日本人は若い人ほどカリウムの摂取量が少ない。昆布のつくだ煮の他、きゅうり、かぶの葉、かぶのぬか漬などはカリウムを多く含み、生の野菜よりぬか漬にした方がカリウムが多い野菜もある。
 平均寿命が全国でも上位の長野県は塩分の摂取量も多いが、野菜の摂取量も多い。塩分(ナトリウム)を摂取してもカリウムを多く摂取していればナトリウムは体外に排出されることから、ナトリウムとカリウムのバランスが国際的にも重視されるようになっている。
 ナトリウムとカリウムのバランスを指標としたものが尿ナトカリ比。尿ナトカリ比が高いと血圧が高くなる傾向が報告され、尿ナトカリ比が低ければ低いほど高血圧のリスクが小さくなる。
 漬物は種類が多いことからナトカリ比にも大きな違いがあり、ジャンルの特性を踏まえてPRすることが必要。ナトカリ比が低いのは浅漬、キムチ、沢庵、ぬかみそ漬など。
 宮尾氏は「ナトカリ比の計算は難しく、一般消費者に浸透するか分からない。だが、分かりやすく野菜はカリウムを多く含んでいてナトリウムを体外に排出する、というくらいの概念が浸透すれば良いと思っている」とまとめた。
 総会後、懇親感が開催され、近況報告や情報交換を行い、有意義な時間を過ごした。
 【新役員】(敬称略)
 ▼会長:遠藤栄一▼副会長:遠山昌子▼会計理事:梅澤綱祐▼理事:宮前有一郎(原料対策委員長)、山本正憲(旅行委員長)、浅田康弘、籠島正雄、大曽根史典▼監事:菅野嘉弘
【2024(令和6)年6月1日第5164号2面】
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